あらゆる職場・地域・業種で未組織労働者を組織しよう!

 

未組織労働者の組織化の母体に!

合同・一般労働組合全国協は2月23~24日、全国経験交流会を開催しました。1泊2日の合宿に全国から延べ80人が参加、全国の職場・地域における労働運動実践の経験や教訓などを互いに学びあいました。
今回の経験交流会は総評全国一般にヒントを得たものです。かつて総評は、中小企業・未組織労働者の組織化方針を決定し、約100人のオルガナイザーを全国に配置しました。その際に2泊3日の合宿を開催し、全国のオルガナイザーが集まって戦前の労働運動の経験を学び、寝る間を惜しんで具体的な争議戦術や組織化方法を討論しました。この合宿で自信を深めたオルグは全国に散ってわずか1~2年で全国一般の組織拡大を実現したのです。
全国協は昨年11月の第11回定期大会において、「職場」「地域」「業種」を問わず貪欲に未組織労働者を組織化する母体となることを改めて決意し、全国1000人組織建設を目標とすることを再確認しました。
この方針に基づき「①職場における組織化(職場活動家づくり)」「②地域の組織化(オルガナイザー養成)」「③コンビニや介護などの業種別の組織化戦略の確立」の3つの柱を獲得目標として、全国規模の経験交流会を企画したのです。地域・職場・業種別における失敗や成功の様々な経験、教訓を全国で共有し、励ましあい、創意工夫をこらして新たな一歩を踏み出すことで、全国協1000人組織建設に向けた転機にしようと考えたのです。

職場少数派から多数派への飛躍を

経験交流会は、職場・地域における組織化の経験、業種別の組織化方針などを主要テーマとして、5つの報告を中心に進めました。報告と質疑応答だけでなく、十人前後の小グループに分かれての討論(グループワーク)やテーマ別の討論など、従来の集会や会議とは趣向を変えての交流会となりました。
2日間の経験交流を通して議論した第一のテーマは、職場闘争の復権、職場における団結の形成と組織化の努力についてです。「一人組合員から複数組合員の獲得」「少数派から多数派への飛躍」は、職場闘争と日常活動、そしてオルグによってしか実現しません。少数派から多数派を目指す努力はどのようになされるべきか。
職場闘争の志向は日本労働運動の素晴らしい伝統だと思います。戦後労働運動の歴史は、三池闘争などをはじめ職場闘争をめぐる労資のすさまじい攻防の歴史です。とはいえ、この点において日本労働運動は深刻な後退を強いられている現状にあることもまた事実です。職場闘争の敗北・後退は職場闘争をもって乗り越えるしかありません。
今こそ動労千葉の反合理化・運転保安闘争路線から学ぶ必要があります。医療・介護や保育、教育から交通運輸や製造業に至るあらゆる産別・業種において新自由主義の崩壊的危機がもたらす矛盾に直面しており、労働者・労働組合は、新自由主義的な大攻撃の矢面に立っています。
こういうことに立ち向かって労働組合運動をどう展開するのかということです。

●職場支配権をめぐる攻防
報告では、A労組は介護職場で労働組合を結成した経験を報告、組合説明会や団体交渉の場面と共に「職場の労働者を集団でみること。闘いの担い手はそれぞれの局面で必ず出てくる」「労働者は思いのほか闘いに立ち上がる」などの教訓を語りました。
B労組は、最初の本格的な分会における組合員の全員脱退や、過激派キャンペーンや分会役員個人への攻撃など、さまざまな困難を突破して闘い抜くなかで職場支配権をかちとってきた経験を語り、その中で徐々に地域からの労働相談も増え、組織拡大を実現した教訓を報告しました。
C労組は、自らが働く職場で同僚を丸ごと労働組合に組織してストライキを闘った経験を報告しました。年休もとれない、昇給もない、監視カメラで監視という典型的なブラック企業で働く労働者が地域合同労組と出会い、会社を辞めるのでもなく、我慢して働くのでもなく、労働組合をつくって闘う選択肢を見出した経験が語られました。
D労組は、業種別の組織化の経験を語りました。業界の過酷な労働実態や資本の支配を社会的に暴き出す中で闘いを拡大していった経過を報告しました。資本と非和解的に闘うためには、労働基準法や労働組合法などにも精通する必要もあることなど実践的な教訓が報告されました。
E労組は、職場における仲間づくりについて報告。職場の過半数を組織することを心に秘めて、一人ずつ粘り強くオルグし、資本から秘匿して結成準備会を重ね、ついには闘いに立ち上がった経験が語られました。
動労千葉からも幕張支部における職場代表選の経験が報告され、安全衛生委員会の活用なども含めて実践的に大きな刺激を受け、その後の討論の中心テーマになりました。

業種別・職種別の組織化も課題に

今回の経験交流会では、業種別・職種別の組織化を中心にテーマ別討論を行いました。
全国協は、コンビニ関連ユニオンや鈴木コンクリート工業分会―関西生コン支部などの経験を継承・発展させ、介護や医療、非正規公務員、建設・交通運輸、外国人労働者、郵政、ITなどの業種・職種を対象にして組織化に着手したいと考えています。
医療・介護は、全国的に組合員の数も比較的多く、各地の経験を共有することは重要であると論議になりました。
外国人労働者の組織化についても各地のユニオンの経験が出され、言葉の問題、労働保険・社会保険の手続きなど実践的な教訓が出されました。
非正規公務員についても会計年度任用職員などをテーマに各自治体で闘いをつくりだせば制度を粉砕できるとの展望が示されました。「地域合同労組・ユニオンも非正規公務員の組織化に立とう」という問題提起に新鮮な印象を持った人も多く、「ユニオンでも団体交渉ができるのか」などさまざまに議論になりました。
交通運輸は、各ユニオンの奮闘が報告されると同時に、固定残業代など業界のブラックな実態も具体的に紹介されました。
また労働相談活動について、ユニオン全体の取り組みにするにはどうしたらよいのかなどが問題提起されました。

●全国の闘いを共有化
今回は、十人前後に分かれての小グループ討論(グループワーク)も行いました。全体の討論の場ではなかなか報告や発言しにくい参加者やユニオンの報告や意見も聞きたいと考えたからです。各地の様々な取り組みを共有化できたことは大きな成果でした。
前段の報告を受け、集団的労使関係をどう形成するのかという問題意識で職場代表選への挑戦などをテーマに、基本的には全員から発言をいただくことができました。仲間づくりの悩みは全国共通ですが、思いのほか全国各地のさまざまな職場において奮闘していることを、全国協として十分に共有化できていなかったのではないかと反省しています。とはいえ各地の報告や教訓を共有化することが参加者に大いに刺激になったことは間違いありません。

新型コロナ問題が示すもの

今回の経験交流会の直後、安倍首相が公立小中学校の一斉休校を発表したあたりから新型コロナウイルス問題で内外情勢は急展開しました。公共施設の臨時休業、サプライチェーン途絶による工場稼働縮小や停止など状況が一挙に変化しました。医療機関等の過重労働、雇い止めや失業、休業補償など労働問題が一挙に噴出しました。全国協は直後に「全国でコロナ関連労働相談の取り組みを」との方針を打ち出し、「コロナ労働相談」のチラシを作成して駅頭宣伝などを開始しました。
ペストやコレラなど感染症は有史以来、人類にとって最重要の問題でした。戦後、公衆衛生の大幅な向上や抗生物質やワクチンの開発により多くの感染症が制御できるようになり、1980年にWHOが天然痘根絶を宣言すると、「もはや感染症は人間の生命と社会に深刻な影響を及ぼす力は持たない」と軽視されるようになったのです。巨額の利益を生み出す高度先進医療や医療機器開発に偏重するようになっています。
しかしマラリアや結核などの感染症は今なお世界中で多くの人命を奪っています。21世紀に入ってからSARSやMERSなど新たな感染症の脅威が生じています。日本でも1970年代までは年間1000人を下回っていた季節性インフルエンザによる死者は2010年以後、右肩上がりで増えており3000人を超えています。O157やノロウイルスなどの耐性菌も重大な問題になっています。国際的人口移動の拡大だけが原因ではなく、公衆衛生の後退、非正規雇用や貧困の拡大による受診抑制なども大きな原因になっていることを強調せねばなりません。
近年、介護施設等での結核感染も増えています。直接には高齢化の問題もありますが、介護職場の人手不足などで介護職場が疲弊し、職場の安全衛生が後退していることも背景にありますが、なにより結核行政の後退が大きな原因です。
戦後、結核患者数は大幅に減少しましたが根絶したわけではありません。しかし1990年代に入ってから多くの懸念を無視して、予算や厚生施設数、教育や研究の努力を後退させたのです。1994年に地域保健の基本法である保健所法の改悪で保健所の広域化と統廃合が一挙に進み、1992年に全国852か所あった保健所は現在472か所と実に45%も減少しているのです。
結果として1990年代以降、集団感染の増加や重症化、高齢者などの社会的弱者の発症が目立つようになったのです。
新型コロナウイルス感染で中国を超える死者が出ているイタリアは、いわゆる先進国で日本に次ぐ巨額の財政赤字を抱え、EUが求めた財政緊縮策として医療費削減が強力に推し進められ、医療機関が削減されました。その結果、過去5年で約760もの医療機関が閉鎖され、医師5万6000人、看護師5万人が不足する状況だったそうです。公衆衛生の状況は分かりませんが、同様の事情にあったと思われます。
日本における422の公立病院の統廃合・民営化の攻撃や国民皆保険制度解体など、日本における医療崩壊もまたギリギリのところにあることが明らかになりました。
また米国におけるコロナ問題は、数千万人が健康保険に加入できない問題や貧困問題などの諸矛盾を鋭く露呈させています。
人類の生態系への進出やグローバル化による人口移動の拡大、貧困や格差の拡大、医療や公衆衛生の後退など、現代は人類史上もっとも感染症が拡大しやすい時代だとの指摘もあります。恐慌や戦争、環境破壊などと共に感染症は新自由主義がもたらす巨大な脅威なのです。新自由主義は地下から呼び出した魔物を制御できない――『共産党宣言』1章のダイナミックな展開を想起すべきときです。
安倍政権の生命線ともいえる株価についても下落が続き、数十兆円単位で資金をつぎ込んでいる日本銀行と公的年金積立金は取り返しのつかない損害が生じています。実体経済の活動は大幅に減速し、資本の流れには重大な閉塞状況が生じています。すでにリーマンショックではなく1929年世界大恐慌以来の危機が叫ばれています。ゴールドマンサックスは米GDPマイナス24%の見通しを示し、モルガンスタンレーもマイナス30%と言っています。3・5%の米失業率は30%になるとの分析も出ています。
新型コロナウイルスが新自由主義の危機を生み出したのではなく、数十年にわたる新自由主義の超巨大な危機と矛盾を新型コロナウイルスが露呈させたのです。1929年世界大恐慌―30年代階級闘争の時代が再来したと考える必要があるのかもしれません。
安倍政権は、資本の救済と政治的自己保身、そして改憲を行動指針として、一切の矛盾を労働者階級に転嫁しようとしています。医療・福祉職場や自治体だけでなくあらゆる産業・領域・場面が鋭い階級矛盾と激突の最前線です。私たち労働者は団結し、力を合わせ、議論し、知恵を出しあい、各職場・地域で自分と仲間、家族や地域を守るために闘いを開始しなければなりません。
日本の労働者階級の現状は、大多数の労働者にとって労働組合が存在せず、団結の場、闘争の機会が奪われています。合同・一般労働組合全国協は、今回の経験交流会をその転機に、労働者が存在するならばどこであってもあらゆる職場・地域・業種で未組織労働者を組織し、労働組合をつくる決意です。

白井 徹哉(合同・一般労組全国協議会事務局次長) 『月刊労働運動』」4月号掲載