合同・一般労組全国協の新型コロナ感染対策をめぐる取り組み

【1】労働相談

海外帰国者等の就労拒否問題

2~3月上旬にかけて「海外旅行の帰国後に自宅待機」「配偶者が中国人で出勤を拒まれた」等の事例で相談がありました。差別的対応であり大問題です。会社の判断で休業させる以上、会社の責任で賃金の10割補償が道理です。春先は花粉症の症状があると訴えても新型コロナ感染を疑われ自宅待機、自己責任として年次有給休暇さえ認めないケースもありました。
2月下旬に安倍首相が公立小中高校の全国一斉休校を指示し、各企業でもテレワーク(在宅勤務)が始まり、それに関連する相談が増え、請負や派遣の問題が浮き彫りになりました。
都市部では近年、人事や経理、情報システムなど従来は企業内部で行われた業務のアウトソーシング(BPO)が増えて、職場には請負・委託関係が交錯し、派遣労働者も含めて雇用関係が錯綜しています。ある職場で在宅勤務に切り替えても、他企業の労働者も大勢働いているので在宅勤務や休業などをめぐり混乱が生じるのです。
例えばA社と雇用関係にあるBさんが、C社に出勤してC社のシステム管理の仕事をしている場合、C社の社員が在宅勤務でも、C社は直接Bさんに指揮命令ができないため混乱が生じるのです。A社がBさんの在宅勤務を認めない、休業補償をしないケースが生じるのです。いくつか同様の相談が来ました。

休業手当払え!解雇はダメだ!

最近増えているのが、休業手当(補償)を拒否するケース、雇用調整助成金等の手続きを放棄する事例です。緊急事態宣言により、休業や自宅待機、シフトカットなどが未曽有の規模で起きており、休業手当の支払いが問題になっています。子どもの休校により保護者が休まざるをえない場合もあります。このため従来の雇用保険による雇用調整助成金制度の拡充に加え、小学校休校等対応助成金などの新制度もできています。
労働基準法26条は、使用者の責めに帰す休業は賃金の6割以上を休業手当として支払うことを定めています。労働基準法は、労働者保護のための最低基準を定めたものであり、違反すれば労働基準監督署の指導があり、罰則もあります。
ところが厚生労働省は「緊急事態宣言による休業は、企業の責任を超える不可抗力によって休業することに該当するので使用者には休業手当の支払い義務は生じない」という姿勢を示し、これは大論争になっています。
詳しくは述べませんが、数百年に及ぶ階級闘争・労働運動がかちとった労働者の生存権と企業及び国家の雇用責任を回避するような厚生労働省の姿勢は断じて容認できません。判例等の現実的議論としても不可抗力というのは限定的に判断されており、企業の休業手当の支払いは免れません。
その上で、厚生労働省の見解であっても企業が休業手当を出した場合は最大で9割を雇用保険から雇用調整助成金を出すと言っていることは留意しておく必要があります。休校等対応助成金は上限8330円までは全額助成となっています。
しかし、多くの企業が助成金の手続きの煩雑さや企業の自己負担(雇用調整助成金は最大9割分であり、少なくとも1割以上は企業の負担)を厭い、休業手当の支払いを拒否し、解雇や雇い止め、シフトカットや無給の自宅待機等を強いています。
使用者に休業手当を出すよう要求しても「客が来ないから仕事がない」の一点張りで、厚生労働省が設置した窓口に相談しても「助成金制度を使うかどうかは各企業の判断」と門前払いで困り果て労働相談に連絡が来たケースもありました。

【2】職場闘争の取り組み

合同一般労組全国協は、合同労組・ユニオンの全国組織で、昨年の大会で改めて職場闘争の重視、職場で多数派をめざす路線と方針を確立しました。この間の取り組みを紹介します。

濃厚接触の派遣運転手の受け入れに抗議(鈴コン分会)

生コン会社の鈴木コンクリート工業では、感染者が出ている生コン会社で働いていた派遣運転手を、社長の独断で受け入れていたことが発覚。職場の労働者が新型コロナウイルスに感染した場合、工場閉鎖になった場合には全従業員の賃金を100%補償することを申し入れました。さらに緊急の安全衛生委員会の開催、出勤時の検温などを要求しました。

タクシー会社でコロナ解雇の撤回を要求(群馬合同労組)

中央タクシー(本社・長野市)は4月13日、本社従業員以外の全営業所のタクシー労働者の解雇を通告。雇用調整助成金を使うこともなく、整理解雇の4要件も無視し、解雇予告手当も出さないデタラメな不当解雇です。解雇撤回と団体交渉を求める要求書を出し、闘っています。

コンビニで休業をかちとる

コンビニ店舗で感染者が続出しています。しかし違約金が怖くて店を開けざるをえない。「まるでロシアンルーレット」との悲鳴があがっています。コンビニ関連ユニオンと共に公正取引委員会へ申告を行ってきたセブンイレブンの店舗オーナーが〝緊急事態宣言に伴う臨時休業〟に踏み切りました。セブンイレブン本部は営業継続を強要しようとしましたが、「コンビニ関連ユニオンに相談している。メディアにも明らかにする」と突きつけたところ、本部も折れて休業同意書にサイン。

工場勤務、感染対策を要求し緊急交渉(ちば合同労組)

工場勤務の組合員が4月中旬に新型コロナウイルス対策を要求して緊急の団体交渉。業者の出入りも多く、感染リスクがあるにも関わらず会社は何の対策もとらなかったのです。社長に約20項目の感染対策を求める要求書を渡し、昼休みにユニオンの役員と一緒に緊急の団体交渉を行いました。社長は当初は驚いた様子でしたが、交渉の中で「現場から具体的な対策案が出されるのはむしろありがたい。協力して一緒に職場を守っていきたい」と組合案を実行する方向で回答がされました。感染対策が行われ、要求した組合員は「労働組合の力ってすごいですね」と電話をくれました。

公務職場、感染者受け入れをめぐり対策を要求

業務上、感染者と接する機会のある公務職場で感染対策を要求。他の自治体では対応方針を策定していたが、当該自治体では対応が遅く、現場で心配の声が強かったが、方針が不十分なまま対応する事態になった。ユニオンとして感染対策を直ちに要求、緊急の団体交渉の申し入れを何度も行った。労働基準監督署に申告も行い、記者会見も検討。団体交渉は非常時を理由に逃げているが一定の感染対策をさせることができた。委託先現場の感染対策はまだなので感染対策を要求していきたい。

『月刊労働運動』5月号掲載