組合運動の基礎 第4回 会社解散をめぐる不当労働行為

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0299号12/01)(2015/02/01)

組合運動の基礎 第4回 会社解散をめぐる不当労働行為

労働組合運動の基礎知識 第4回

会社解散をめぐる不当労働行為について

(親子会社における子会社の解散と親会社の使用者性の問題―吉崎製作所分会の闘いに引き付けて)

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

会社解散=組合つぶし攻撃との闘い

 2012年の暮れに山下ゴム(ホンダの1次下請け)は吉崎製作所を買収し、吉崎製作所の株式を100%所有してその傘下に収めた。その時から社長、副社長、工場長は山下ゴムからの出向である。吉崎製作所の製品は山下ゴムの発注に基づいて生産され(約75%)、半年分の余計な在庫生産も山下ゴムの指示で行われ、その作業は山下ゴムの三重工場から送られてきた山下ゴムの出向社員が二交代制の作業体制で担ってきた。
 山下ゴムと吉崎製作所の関係は誰がどう見ても完全な親子関係である。この親会社が子会社を解散させた場合に子会社の労働組合はいかなる闘いができるのか? ということが今回のテーマである

親会社が実質的に支配している場合は親会社に責任を取らせることができる

 親会社が、子会社の法人格を意のままに道具として実質的・現実的に支配し(支配の要件)、違法不当な目的を達するため(目的の要件)、その手段として子会社を解散したなど、法人格が違法に濫用され、その濫用の程度が顕著かつ明白であると認められる場合には、親会社は子会社従業員に対し包括的雇用責任を負うと判示した裁判例がある。「包括的雇用責任」というのは賃金の支払いだけでなく、雇用責任も含めて全責任を親会社に取らせることができるということだ。吉崎製作所のように、法人とは名ばかりであって、会社が実質的には山下ゴム株主の個人営業のような状態、または、子会社が親会社の営業の一部門にすぎなく、道具のように使われてきた場合は吉崎製作所の法人格が否認されて、親会社の山下ゴムが雇用責任を含めて全責任を負わねばならない。

会社解散の自由? 偽装解散!

 ただしこの場合問題になるのは、「会社解散の自由」という論理であり、事業が真に廃止される「真実解散」の場合は、解散の動機に労働組合を嫌悪してこれとの関係を切断する意図があったとしても解散の効力に影響はないとする考え方とそれに基づく裁判の判決例である。企業主には憲法22条に基づく職業選択の自由があり、その自由は労働組合の存続に影響を及ぼす場合であっても原則として会社解散は制約されないという論理である。
 しかし「真実解散」でない「偽装解散」の場合はどうなるのかということである。偽装解散というのは労働組合を嫌悪して、それを壊滅するために会社解散を行いつつ、同一事業を別の場所・会社で行わせるような場合である。今回のケースの場合、吉崎経営=山下ゴムは「国内では吉崎と同じ生産はもう行わない」と団体交渉の席で述べながら、その裏では、別の会社に吉崎でやっていたプレスの生産を準備している事実が明らかになった。これは紛れもない不当労働行為であり、偽装解散である。