労働組合運動の基礎知識 第6回

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0301号11/01)(2015/04/01)

労働組合運動の基礎知識 第6回

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

団体交渉拒否―不誠実団交に関連して

不誠実であることだけをもって不当労働行為の認定をするのは行政の不当な介入?

 東部ユニオンアイ介護サービス分会の労働委員会の会社側弁護士は石嵜・山中法律事務所であり、小竹運輸グループ労働組合、さいたまユニオン野崎興業分会の会社側弁護士でもある。 アイ介護サービスの雇い止め事件おいて、不誠実団交、支配介入の2点について都労委で救済命令が出され、雇い止めについては棄却されたため、双方が中労委に再審査を申し立て、3月6日の第3回目の調査で結審した。この中労委の「補充意見書」(2014年11月5日付)において石嵜・山中法律事務所の前嶋弁護士がとんでもない主張をしてきた。「労組法の定めを超えて、単に『不誠実』であるということのみをもって不当労働行為の成立を認めるべきでなく、団体交渉を実質的に『拒否』するに等しいほどの不誠実性がある場合に例外的に『団体交渉拒否』の不当労働行為に該当するものと考えるべきである」
 労使交渉は自主交渉が原則であり、労働組合はスト権があるのだからストライキを行使して「自己の主張を貫き通す途がある」。にもかかわらず労働組合が、資本が不誠実であることのみをもって不当労働行為救済申し立てを行い、行政が、不誠実団交であるとして不当労働行為を認定し、救済命令を出すのは「自主交渉原則の否定を意昧する」「労働組合の自主交渉力を減退させる」というのである。さらに「労働組合の交渉力・組織力の弱さは、労働組合自身の問題であり(組繊率が低いがゆえにストライキによる影響力が弱いとしても、それは労働組合自身の力の問題であり)、この点を行政が積極的に補完することを憲法及び労働組合法が求めているものではない」とまで言い切っている。

労働委員会制度そのものを否定する暴論

 この主張は1949年の労組法改正の意義をはじめとして、憲法制定、特に憲法27条、28条と戦後労働法制全般、更に不当労働行為という概念を全く理解しない暴論であり、労働委員会制度そのものを否定する言辞である。
 資本との関係において個々の労働者は極めて弱い立場にある。職場に1人、2人しか労働組合員を組織し得ていない合同労組が地域・産別的に合同して労働組合を結成し、強大な資本と立ち向かうことになるのであり、本件の場合もそうだ。
 不当労働行為の救済制度はそれだけ弱い労働組合を行政が守るという立場にたって制定された。資本の側は、国家が強制して団交権を保証しない限りまともに団交に応じない、労働組合を認めないという立場に立っているがゆえに、国家が強制的に交渉の場を設定する必要が出てくるのである。
 前嶋弁護士の主張は、経団連が工場法以前に戻せ、労働者を無制限に搾取させろという労働法制解体攻撃と一体の新自由主義のイデオロギーそのものであり、断固として粉砕しなければならない。

 この件については合同・一般労働組合全国協議会のホームページで詳細に批判をしているので参照を。