時代を解く10 辺野古基地「和解」勧告受入れの本質

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0313号08/01)(2016/04/01)

時代を解く 10
沖縄辺野古基地建設「和解」勧告受け入れの本質

 3月4日、沖縄県(翁長知事)と国(安倍政権)の双方が「福岡高裁那覇支部」の勧告に従い、「暫定和解案」を受け入れた。沖縄県はともかく、安倍政権が「和解」を受け入れたことに驚きが走った。「和解」の内容は、①両者がそれぞれ行っている提訴を取り下げる。改めて国が翁長知事による「埋め立て承認取り消し」に「是正指示」を出す。県はその是正指示取り消しを「係争委」(国の第三者機関)に要求、結果が不服ならあらためて裁判を起こす。この裁判の最終結果には県も国も従う。②それまでの間、工事はストップし、双方が「円満解決」のために「誠実に協議する」というもの。裁判所の「和解」勧告(1月29日)は、国が知事の権限を停止しようとした「代執行訴訟」においてなされた。このままでは国が敗訴するという警告であった。政府のやり方は「国と地方自治体の対等・協力」という新地方自治法(99年改正)の理念にもとるという判断が土台にあるという。沖縄県がまずこの判断に期待をかけ「和解」を受け入れると態度表明、国も「敗訴のリスク」を認識し、安倍の政治決断で「和解」を受け入れると決めた。

安倍政権の攻撃はエスカレート

 裁判所は、現状では沖縄への国家暴力を正当化する決定を出すのは無理と判断し、「話し合い路線」に沖縄県(翁長)を引き込む土俵を設定したのだ。安倍は、県が「和解」案にすがったことをチャンスと見て、攻撃のギアを入れ替える政治決断をした。翁長は、「辺野古移設には反対」と述べ、安倍は、「辺野古移設が唯一の解決」と表明している(3月4日)。辺野古現場では緊張状態が継続しているが、ひとまず工事は中断している。政府は「和解」案にもとづく「是正指示」を出した(3月7日)。これに県は不服を申し立てた(3月16日)。再び裁判となり年末までに最高裁の最終決定が出るとみられる。

全島ゼネストで攻撃打ち破ろう

 安倍は、伊勢志摩サミット(先進国首脳会議)と7月参院選を乗り切り、沖縄潰し攻撃を戦略的にエスカレートする策動に出た。参議院選に「勝利」すれば情勢は一変、沖縄問題も全面的決着をつけられるという判断である。「労働崩壊」(社会崩壊)とも言える職場生産点の惨状を「隠し」、改憲による戦争国家化、「フクシマ隠し」、TPPと「増税隠し」、さらに労働法制改悪で突っ走る大攻撃と一体の策動である。朝鮮半島の軍事情勢に対して、沖縄基地を最先端に全面的「戦時モード」に突入する中で、「辺野古」裁判での敗北は容認できない。だから裁判をリセットした。
 今大事なのは、この「一時的停戦」が国家権力の悪辣な「仕掛け」であること、そうした力関係と凶暴性を認識すること。そして翁長知事が引き込まれた屈服と闘争解体のコースに対し、労働者階級による全面的な反撃体制を確立するためにこの期間を最大限に使い切ること。
 沖縄闘争は約20年前、最高裁の「最終決定」に屈した「太田知事の裏切り」と本質的に同じ問題に直面している。労働運動を軸に全島ゼネスト体制を構えることが必要だ。今年5・15闘争はその出発点となる闘いだ。
 藤村一行(動労千葉労働学校講師)