労働組合運動の基礎知識第23回 就業規則の不利益変更・賃下げとの闘い(再)
労働組合運動の基礎知識 第23回
就業規則の不利益変更・賃金切り下げとの闘い(再び)
来月分から賃金規定を変えて賃金を一方的に引き下げる、退職金制度を無くす、という労働者に不利益な「就業規則と賃金規定」を会社が勝手に作成し、これを労働者に通告・周知したことをもってこの新たな就業規則と賃金規定で労働者を拘束することができるかというテーマである。
合同・一般労働組合全国協議会小竹運輸グループ労働組合が直面している新たな不当労働行為との闘いである。
就業規則の改定時は必ず過半数で組織されている労組か、従業員代表選挙で選ばれた労働者代表の意見書を添付し労基署に届け出なければならない。しかし、荒川運輸機工(旧小竹運輸)は現在7名の労働者しか残っていないため、4人で組織する小竹運輸グループ労働組合の意見書が必要になる。しかし労基法は10人以下の労働者しかいない場合は就業規則の作成も届け出義務もないとしている。小竹資本はこの労基法の規定を逆手にとって勝手に就業規則と賃金規定を変更して、労働者に説明したからそれで「よし」としたのだ。
筑西労基署に「一方的不利益変更の就業規則は認められない」と小竹運輸グループ労働組合の組合員全員が抗議に行くと、労基署の相談員は監督官と相談したうえで「これは労働契約法の問題であり、労働基準監督署の管轄ではない。新たな賃金規定で働いているのはその規定を認めたからでしょ」とまで言って門前払いにしたのである(8月12日)。そこで小竹労組の三役は8月16日に茨城県労働局監督課に「労働基準法違反申告書」をもって抗議に言った。「こんなことを労基署が見逃すからブラック企業が蔓延し、過労死が起きる。小竹運輸グループは大事故を起こしている。すべて過労による居眠りが原因だ。そんなことでいいのか」(中村委員長)。
すると茨城県労働局の監督官は「筑西の監督官に今連絡をしました。申告書を受理すると言いっているのでもう一度筑西へ今から行っていただけませんか」と低姿勢だ。
労働契約法は就業規則の改定に合理的理由があれば、労働者が合意しなくてもその就業規則に労働者は拘束されるとしている。労働契約法が制定される以前ならこんな問題は起きない。しかし労働契約法が労基法解体に作用する、ぎりぎりの攻防がこういう形で起きているのだ。賃金の一方的切り下げは労働者の同意無くして認められないというのが裁判の判例であり、原則だ。「労働契約において賃金は最も重要な契約要素であることは言うまでもなく、これを従業員の同意を得ることなく、一方的に不利益に変更することはできない。」(チェースマンハッタン銀行事件・東京地裁判6・9・14)。
しかし労働契約法が監督官をして「グレーゾーン」の問題だと言わしめているのである。
労基署、小竹資本と闘いながらこの不当な賃金切り下げ、組合つぶしの攻撃を跳ね返し、小竹労組は9月から中労委の闘いに入る。
小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)