闘う合同一般労組 正社員化と雇い止め撤回を求めて、京成バスでストライキ

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0348号09/01)(2019/03/18)

闘う合同一般労組
正社員化と雇い止め撤回を求めて、京成バスでストライキ!

(写真 ストライキ当日、京成本社前街宣)

「睡眠不足」「人手不足」―路線バス運転手の過酷な労働環境

やむにやまれぬストライキに全国から応援の声

 ちば合同労組は、2月6日早朝5時から京成バスの指名ストライキを行いました。ストライキの直接の目的は、すべての嘱託社員を正社員にすること、そして不当な雇い止めを中止することです。
 今回、何よりも訴えたかったことは、全国のバス運転手、バス関連労働者の過酷な労働実態を改善することです。1週間ほど前にストを告知して以降、全国からものすごい数の応援の声が寄せられました。少し紹介します。

○運転士さんの待遇は、バスの利用者が安全にバスを利用できる条件です。
○以前から、路線、観光、長距離いずれのバスドライバーさんの労働に対しての賃金の低さ、拘束時間の長さは酷いものだと思っていました。特に規制緩和後からは更に。
○大勢の人の命を預かる仕事ですし、運転士さんが体調管理や休息をしっかりとれて、安全に運行して貰える環境作りが一番だと思います
○京成バス利用者は、会社に「不便だ。要求をはやく飲め」とやったほうがよい。まちがっても労組に抗議しちゃダメ。あなたの安全の問題でもあるから。
○ストライキが行われるが、運転士とお客さんの安全を考えると運休になっても仕方ないことやし、他のバス会社に広がる可能性ある。路線バスは鉄道と同じ公共交通機関の仲間やから。
○京成バスさんは全営業所でストライキを起こされた方がよろしいかと思います。

 今回のストライキの過程で、ある京成グループバス会社の運転手から直接聞いた話ですが、早朝4時から勤務し、明くる日の深夜1時まで働くこともあるそうです。路線バス、観光バス、どのバス会社も運転手不足の中で、基準ギリギリ、それ以下の過酷な労働条件で働いています。早朝から深夜まで過労・睡眠不足でハンドルを握って、過酷な勤務に見合わない低賃金の待遇で働いています。
 厚生労働省の「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)では、勤務間インターバル(間隔)は継続8時間以上となっています。京成バスでもダイヤ上は8時間+数分となっています。午後10時ちょっと前に乗務を終えて、翌日の午前6時すぎから乗れば、確かにみかけの計算は8時間のインターバルが確保されます。
 しかし、実際には、バス運転手は、運転が終わった後にも、給油や車内清掃、落とし物の対応などさまざまな付随業務があります。実際にはインターバルが8時間を割り込むのです。その間に帰宅し食事や入浴を済ませ、翌日の出勤までに何時間の睡眠が確保できるでしょうか。早朝乗務のために一刻も早く就寝しなければならないプレッシャーはいかほどでしょうか。
 勤務時間が1日15時間を超える日、あるいは月に260時間を超える場合もあり、さらには法律の上限である4時間連続の乗務も頻繁に行われています。これは京成バスだけの話ではありません。バス運転手にとって過労や睡眠不足がどれほど切実な問題なのか。もっと広く社会に問題提起しなければならないと痛感しています。

安全を守るためにも改善は急務

 バス運転手の健康問題は、同時に、バスの安全と利用者の生命の問題でもあります。死者15人を出した2016年1月の軽井沢スキーバス転落事故、同じく死者7人の2012年4月の関越自動車道高速バス事故など、近年、深刻な事故が頻発しています。小泉政権の規制緩和が転機となり、直接には運転手の過労などの健康問題が事故の原因となっています。京成バスでは、年間400件もの事故が起きているそうです。事故やミスを運転手の責任にしても、事故は減りません。
 京成バスは、労働条件の改善によって運転手不足を解消するのではなく、会社が提唱する「運転士道塾」でのりきろうとしています。武士道精神にならって「運転士に誇りとプロ意識を持たせる」というのです。こんな精神論で睡眠不足や過労がなくなるはずはありません。
 千葉県では、ほとんどの路線バスを京成グループが独占していますが、京成電鉄グループは、1995年にフラワーバスを作って以降、地域ごとに分社化を進め、その後、バス部門そのものを京成電鉄から分離しています。ちばグリーンバス・千葉交通・京成タウンバス・千葉中央バス・京成トランジットバス・成田空港交通・京成バスシステム・千葉海浜交通・千葉内陸バス・船橋新京成バス・東京ベイシティ交通・ちばフラワーバス・ちばシティバス……ものすごい数のグループ会社に分割されました。
 赤字路線や不採算路線は子会社に回して、グループ会社間で競争させるため、グループバス会社の運転手の労働条件はさらに過酷な状況に陥っています。今回のストライキを通して私たちは、分社化による雇用破壊を俎上に載せ、京成バスグループの運転手の労働条件の改善を訴えたいと考えたのです。
 前述のように、今回のストライキには、全国から信じられないほど圧倒的な応援の声を頂きました。もし京成バスの全路線が止まるストライキが決行されれば、確実に全国のバス労働者の職場環境が改善される転機になったと思います。
 県民の多くが通勤や通学で京成バスを利用しています。自分や家族の乗るバスが睡眠時間3、4時間でハンドルを握っていることに危機感を持たない人はいないと思います。「バス運転手の健康とバスの安全を守るためのストライキは必要だ」と多くの人が思っているのです。
 今回の闘いが、ストライキと労働組合を復権させる小さなきっかけになればこんなにうれしいことはありません。多くの労働者にとって、自分の職場を変える選択肢として労働組合が見えていないのが現実です。今回のストライキも「一寸の虫にも五分の魂」とでもいうようなささやかな闘いですが、それでも今回、全国の応援でここまで闘うことができました。
 私たちは、バス運転手の健康と路線バスの安全を守るために闘います。過労と睡眠不足の職場を変えるためにも当該組合員の雇い止めを撤回させるために全力を尽くして闘います。