労働組合運動の基礎知識 第59回 休日割増

2019年9月26日

月刊『労働運動』34頁(0354号12/01)(2019/09/01)

労働組合運動の基礎知識 第59回 休日割増



労働組合運動の基礎知識 第59回

休日割増

 就業規則が明示されていない職場で、終業時間は決まっているが、始業の時間がまちまちであり、本来なら早出時間外手当がつかなければならないのに、長い人で8年間も残業代が未払いの職場からの労働相談を受けて組合を結成し、闘いに入った。この職場は日曜祝日関係なく毎日仕事があり、休日はシフト制のために、休日割増が不明瞭である。これも交渉の課題である。今回はこの休日割増について考えてみたい。
 労基法は毎週少なくとも1回の休日を与えなければならないので、週1回の法定休日に労働した場合は最低35%の休日割増賃金を支払わねばならない。ただし、毎週1回でなくても4週間を通して4日以上の休日を設ける場合はそれでも良いので、就業規則で一定の定めをしておくことが必要になる。
 面倒なのは会社側の突発的な受注への対応などで「休日振替」をする場合がある。それと事後の「代休」措置というのもあるので、労基法上の扱いは一様にはいかない。
 事前の「休日振替」というのは、就業規則などに定められている所定休日をあらかじめ他の所定労働日に変更することであり、就業規則とか労働協約で事前に指定する必要がある(労働者の同意を得て)。この場合は変更された労働日に労働しても労基法上の「休日労働」でないため、割増賃金の問題は生じない。
 しかし「代休」は事前に休日になる日を特定せずに、休日労働の後で他の日に任意に休日を与えることを言うので、この場合は労働協約とか就業規則で代休を命じる規定がなければならない。この場合も労働者の同意が必要である。その上で代休を与えても休日労働の割増賃金は支払われなければならない。
 具体例を挙げると、1日8時間労働、土日週休2日制で週40時間、法定休日が日曜日、土曜日が法定外休日となっている職場で、時給が1000円の場合はどうなるか。
 日曜日に出勤した場合は法定休日に労働したので時給は最低でも35%割増の1350円になる。土曜日に出勤した場合は法定外休日のため、割増賃金は支払われない。通常の時給1000円×労働時間の賃金が支払われる。
 土曜日に出勤し金曜日を振り替休日とした場合や日曜に出勤し月曜を振り替え休日とした場合は、いずれも休日が振り替わったに過ぎないので休日出勤手当を受け取ることはできない。 休日振替の手続きをせずに日曜に出勤した後、月曜に代休を与えられた場合は時給1000円分は支給されないが、350円×労働時間数の休日割増は受け取れる。
 このあたりの計算はいささか面倒になる。今回労働相談を受けて闘いに入った分会の場合は、先ず就業規則を明示させねばならない。従業員代表選挙が行われたことはないので、就業規則の届け出そのものが違法状態であり、代表を勝手に決めている場合も同様である。早出残業割増、休日割増などの請求は2年前までさかのぼることができる。闘いはこれからである。

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)