労働組合運動の基礎知識第60回 労働者代表の法制化の動き

2019年10月25日

月刊『労働運動』34頁(0355号15/01)(2019/10/01)

労働組合運動の基礎知識第60回 労働者代表の法制化の動き

労働者代表の法制化の動き

「働き方改革」の4月1日施行に伴い、労働者代表を「経営者が選んではならない」ことが法律に明記された。厚生労働省のホームページにも「会社の代表者が特定の労働者を指名するなど、使用者の意向によって過半数代表者に選出された場合、その36協定は無効です」「社員親睦会の幹事などを自動的に過半数代表者にした場合、その人は36協定を締結するために選出されたわけではありませんので、協定は無効です」などの指摘がなされ、裁判の判決でも、こういう労働者代表によって締結された36協定が無効であるとの決定が出ている。
他方で、政府の機関や、学者の間で「従業員代表制の立法化」に関する議論が労働契約法の可決・成立(2007年11月29日)と一体で2005年段階から行われてきた。その典型例は「労働者代表法案要綱骨子(案)」(連合第9回中央執行委員会確認/2006.6.15)である。働き方改革の施行、関西生コン弾圧にみられる労働組合絶滅攻撃と軌を一にして、この労働者代表の法制化の動きが、今再び頭をもたげてきた。これは労働基準法の解体と一体であり、労働組合の産業報国会への道である。連合がその先兵となっていることを徹底的に弾劾しなければならない。
不当労働行為に関するいくつもの著作を書いている道幸哲也は、この動きを「労働組合の『自然解体』シナリオ」「『御用組合』的なもの、21世紀版『産業報国会』」と主張している。団交権や争議権など、労働者サイドの要求を実現するためのプレッシャーシステムが整備されていない組織が立法化されるのは、労働組合の結成を阻害するものとなるとも述べている。
大内伸哉は「労働組合以外の労働者代表を立法で制度化する場合、憲法の組合優先主義の下で、それが憲法違反にならないかどうか」という問題点を挙げている。
この法制化の動きを加速させたのは、1998年の労働基準法改正により、企画業務型裁量労働制が導入された(第38条の4)ことによる。その導入要件として設置されたのが「賃金、労働時間その他の当該事業場における労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に対し当該事項について意見を述べることを目的とする委員会(使用者及び当該事業場の労働者を代表するものを構成員とするものに限る)である」。
それまでの労使の委員会は、時短や安全衛生委員会等に限られていたが、企画業務型裁量労働制の労使委員会は、賃金、労働時間その他の労働条件といった幅広い意思決定がなされる常設的な機関である。このことで「従業員代表制の立法化に向けた第一歩」と位置付けられたのである。
連合の「労働者代表法案要綱骨子(案)」は労働者代表委員の「就労義務の免除」「事務所等の貸与」「研修休暇」などを定めている。
更にこの立法化の狙いの恐ろしさは、過半数組合でさえ、労働者代表としての正当性を欠くならば全従業員の信任投票でリコールできるようにすべきとの議論まで行われていることである。

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)