◆新自由主義教育との対決を 小中一貫校・学校統廃合を止めよう

◆新自由主義教育との対決を!

小中一貫校・学校統廃合を止めよう

中田 一夫(動労千葉を支援する会)

●毎年、小中高500校が廃校

全国で毎年1年間で500校の小中高校が廃校になっている。学校統廃合は、戦後一貫して過疎化・少子化を口実にした統廃合、学校選択制と一体の学校統廃合と、それぞれの時代に対応した意図で行われてきた。安倍政権は今、全国で学校統廃合と小中一貫校とを一体で推し進めている。小中一貫校・学校統廃合との闘いを安倍政権の新自由主義との闘いの重要な環と位置づけ、闘いを作り出そう。
この30年近くの小中高廃校数の推移は2000年前後から急に増えその後高止まりし、年間500校が廃校になっている。
2014年からスタートした「地方創生政策」(日本全体が人口減少時代に入って、全市町村の半分896自治体が消滅すると提言)が、学校統廃合を加速させた。「子どものため」を口実にしながら、直接的には教育費の削減のために統廃合を推進してきた。2014年、政府の「骨太の方針」に「学校規模の適正化に向けた学校統廃合の指針」作成が盛り込まれた。
続く2015年、内閣府の経済財政諮問会議が国の各分野の政策を公表したが、その中の「文教政策」の筆頭に「学校規模適正化と学校の業務効率化」をあげている。2018年度までが「改革集中」期間とされ、数値目標として「学校の小規模化の対策に着手している自治体の割合」を2020年度までに100%にすることが掲げられている。まさに財政的理由から統廃合することが国の重点政策として打ち出されている。各県市町村教委が、小中高の学校統廃合を強行する場合の最も重要な理由に必ずこの財政的理由をあげている。
以上の財政的理由を土台に、以下の動向が廃校数を増加させている。
第一は、「平成の大合併」が廃校数を増加させている。合併によって規模や財政が小さい自治体の方が統合されるケースが多い。合併によって消滅した自治体は小中学校がゼロになる地域もある。地域コミュニテイの解体である。この地域は反対運動が巻き起こることが多い。
第二は、東京での学校選択制と統廃合である。2000~2007年の間、東京の多くの自治体(23区中19区)は、それぞれの区内の小中学校のどこでも選択できる学校選択制を導入した。学校選択制は学力の向上を目標に各校を競争させ、同時にそこで働く教育労働者を競争させる。競争原理の導入である。
第三は、高校統廃合である。
高校の「スクラップ&ビルド」である。古いタイプの職業高校を廃校にして、新しいタイプの高校を開設した。
第四に、小中一貫校の増加である。2016年「義務教育学校」法制化である。これがいま新自由主義教育攻撃との重要な対決軸となっている。
第五は、58年ぶりに改悪された「統廃合の手引き」である。

●小中一貫校のねらい

学校統廃合と一体の小中一貫校とは何か。それとの闘いは新自由主義教育との闘いである。
安倍政権の新自由主義教育攻撃は、首相の私的諮問機関である教育再生実行会議の提言という形で提起され、それを中教審が受けて答申として出し、国会審議で法制化されるという手順で推し進められてきた。
2013年に教育再生実行会議第三次提言「これからの大学教育等のあり方について」、2013年同会議第四次提言「高等学校と大学との接続・大学入学者選抜の在り方について」が出された。
続いて2014年7月に第五次提言「今後の学制等の在り方について」が出された。その中で、小中一貫校、中卒後の5年制職業準備機関、そして五歳児義務化などの提言が出された。
この提言の中で財界・政府は「学制改革で最も重視しているのはグローバル人材養成にむけた大学改革」と表明。①大学をグローバル型とローカル型に分離し、前者はエリート養成、後者を職業準備機関に特化、②後期中等教育の多様化、③初等中等教育と続く。そして2014年に中教審答申で「義務教育学校」法制化を打ち出した。
そして2019年5月、教育再生会議は2017年以来2年ぶりに第十一次提言である「新時代に対応した高校教育改革」と「技術の進展に応じた教育の革新」の二本柱を打ち出した。「約七割の生徒が普通科に行っているが、普通科の画一的な学びが生徒の能力や関心をふまえていない。学習意欲に悪影響を及ぼす。各校が教育目標を明確にした上で、選択可能な学習の方向性にもとづいた類型の枠組みを示す」(提言)
戦後教育体制としての6・3・3・4制は、建前として「教育の機会均等原則」を貫く単線型の「学制」である。しかし教育再生会議の「学制改革」は、初等段階から小学校と「義務教育学校」に分かれていく。さらに中卒後5年間の職業準備機関の拡充が提言された。これは従来の高校・大学に進学しない低所得層向けの学校になることが予想される。一部エリートコース以外は限りなく安上がりに、「公設・民営化校」に繋がっていく。
「エリートコース」としては、東京など大都市圏であれば6年制の小学校から中学受験を経て私立中高一貫校、大学へと進むコースが想定される。現在、小中一貫校は、エリートコースとしてではなく、あくまで統廃合の方途として、大学および後期中等教育のエリートづくりのために推進されている。学制改革の核心は、グローバル人材育成のための高等教育改革および5年制の職業準備機関を含む後期中等教育改革である。安倍政権は、単線型の戦後教育を解体し、複線型のエリートコース、非エリートコースの「学制改革」を新自由主義教育攻撃として推し進めようとしているのである。

●学校統廃合反対で闘おう!

2015年学校統廃合に関する「手引き」が「改正」された。
戦後の「手引き」は次のような経緯を辿っている。最初の「手引き」である1956年文部省次官通達「公立小中学校の統合政策について」は、公立小中学校標準学校数を「12~18学級」として、小学校で4㌔以内、中学校で6㌔以内を通学距離圏内とした。1950~60年代を通じて約1万あった自治体(市町村)は3千まで減少した。「12~18学級」という数字は「人口8千人に1中学校が望ましい」とする効率性から算出された数字で、教育学的根拠はない。「小規模校は教育効果が低い」ことを教育委員会は必ず統廃合の根拠にするが、「俗論」に過ぎない。
今回の「手引き」で「改正」されたのは、小学校「6学級」以下、中学校「3学級」以下校を「学校統廃合等により適正規模に近づけることの適否を速やかに検討する」こと、及び通学距離「4㌔・6㌔」は引き続き妥当とされるものの、スクールバスなどの選択も入れ通学時間「おおむね1時間以内」を「一応の目安にする」ことが追加された。
統廃合推進の背景には、財務省の強い「コスト削減」の意向がある。そして文科省は、「新たな時代の教育にとって小規模校は問題がある」と、統廃合の攻撃をますます強めている。「学校統廃合を止めよう! 小中一貫校反対!」を掲げ闘おう。