JR 北海道廃線化の現実 国鉄分割・民営化とは北海道の切り捨てだった!
JR北海道が廃止・バス転換を求めている留萌線(深川―留萌、50・1㌔)について、沿線4市町とJRは、石狩沼田―留萌間を早ければ2023年3月末で廃止し、深川―石狩沼田間は3年程度存続させて廃止する方向で調整中だ。JRが廃止・バス転換を求めた5区間がすべて決着する。
3月26日、北海道庁(以下、道と略)と小樽市、余市町の三者は、2030年度末予定の北海道新幹線札幌延伸に伴い、JRから経営分離される並行在来線の函館線余市―小樽間(19・9㌔、18年の輸送密度=1㌔当たりの1日平均輸送人数は2144人)のバス転換に合意。
翌日には、同区間を含む長万部―小樽間(140・2㌔)の沿線9市町が転換に同意した。並行在来線の廃止はJR信越線横川―軽井沢間に続き2例目、長大路線の廃止は初めてだ。
余市―小樽間の鉄道存続について、道が試算した必要経費は45億円に上る初期投資と年間5億円程度。30年間の累計赤字額は、鉄道の206億円に対してバスは18億円。これが決定の決め手となった。この試算にはフリー切符類による利用が含まれず明らかに過大。時間短縮や道路渋滞緩和などの社会的便益も考慮されていない。より便利になる住民もいるが、多数の同意が得られるとは限らない。代替バスの運行で生じる赤字の自治体の分担比率は未定。何を基準に決めるのかで対立する。
上記の例では、群馬県内の代替バスは、新幹線の開業で利益を得るJR東日本のグループ会社が運行し、その赤字負担は沿線自治体に求めていない。
代替バスのルートや時刻表、運賃も決まっていない。「日帰りで札幌の病院に行けるのか」という不安の声や、「バスは酔うので試験勉強ができない」、「新千歳空港からの客を取り込めな
くなる」という反対の声がある。
7月7日、道は「代替バスの運行本数をJRと同等確保する」と説明をしたが、定員60人のバスではピーク時に乗れない客が出る。小樽市街地では国道5号線が渋滞し、冬の定時運行は望めない。必要な運転手の不足を無人運転のバスで補うとしているが、恐ろしくて乗れたものではない。
4千㌔の鉄路が2千㌔台に
50年前には約4000㌔の鉄路だった。だが、赤字路線が問題になって1980年に「日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法)」が成立、翌年3月に同法施行令が公布されて、
77~79年度の輸送密度4千人未満の路線は「特定地方交通線」として廃線の対象になり、白糠線、広尾線、湧網線、士幌線、羽幌線等が廃線になった。JR発足の87年4月には路線延長が3176・6㌔に減少した。
以降も、標津線、天北線、名寄線等が廃止され、池北線は第3セクターになり、経営難で06年に廃線になった。特定地交線に該当しない函館線上砂川支線も94年、深名線も95年、江差線木古内―江差間も14年に廃止された。500㌔以上が消え、営業キロは2568・7㌔まで縮小。
JRは16年、「単独では維持が困難な線区」10路線13線区(営業キロ数の約半分)を公表。うち石勝線夕張―新夕張間(16・1㌔)、札沼線北海道医療大学―新十津川間(47・6㌔)と日高線鵡川―様似間(116㌔)が廃止され、22年には根室線富良野―新得間(81・7㌔)と留萌線深川―留萌間(50・1㌔)も廃止が決定した。日高線も根室線も被災からの復旧に着手しないで廃線。JR九州の肥薩線のように、国、県、JRの3者が復旧の議論をしているのとは対照的だ。
輸送密度2千人未満を廃線化
国交省の検討会は、輸送密度2千人未満の線区の廃線化を結論としている。道内で4千人以上は札幌周辺だけだ。2千人未満を廃止したら、北海道高速鉄道開発の関連の石北線旭川―名寄間と根室線帯広―釧路間を除き、札幌を起点に小樽、医療大学、旭川、長万部までしか残らない。石勝線・根室線の南千歳―帯広間(輸送密度1902人)をなくせば帯広―釧路間に行けない。
道新幹線は客が戻らず、線路や電気設備の修繕費もかさんで21年度は過去最大の約149億円の赤字。輸送密度も1635人。生活路線ではないから真っ先に廃線化すべき対象だ。
廃線で残る線区の利用が減り、次の廃線化を招く。バス転換しても不採算なら胆振線(84年廃止)の喜茂別―大滝間のように撤退するし(9月末)、札沼線北海道医療大学―新十津川間(
20年廃止)の代替バスは早くも経営難だ。
新幹線を含め全て赤字線区
北海道の場合、経営安定基金の運用益で赤字を補填する仕組みにした国が、ゼロ金利政策を継続、運用益が半減して経営破綻。道内には新幹線を含め黒字の線区は一つもない。赤字が少額でも、輸送密度が低ければ廃止された。沿線住民の生活が切り捨てられ、過疎化が進んだ。国鉄分割・民営化とは、北海道の切り捨てだった。
この35年間で札幌圏を除いて人口が減少し、全体の8割超の152市町村が過疎地域市町村と公示される。面積は九州の2倍だが、人口は約半分で、人口密度は1平方当たり約66人で全国最下位だ。それだけに本来は、網の目のような交通網が必要だったのだ。
動労総連合北海道 『月刊 労働運動』2022年8月号掲載