コロナ・ウクライナ戦争下、 アメリカをはじめ世界で激増 する労働組合設立運動

写真は22年2月コロンビアの労働組合のインフレ・生活費高騰反対、ドゥケ政権打倒のデモ

 

2022年会計年度前半(21年10月1日~ 22 年3月31日)までのNLRB(全国労働関係委員会)への労組設立投票の申請件数は1174件にのぼり、前年度同期の748件と比べて57%も増加した。また、不当労働行為に対する差止命令の申し立て件数も14%増加した。いずれも数十年来の激増だ。

コロナで100万人殺された

大きな理由は、コロナ禍で階級意識が一変したことだ。3月末時点で、100万人近くがコロナで死亡し、後遺症に苦しむ人はさらに多い。多くの労働者が家族・友人の死に直面し、自分の生き方を考えた。
だが、資本は大規模クラスターが発生した職場でさえPPE(個人防御具)もまともに与えず働き続けさせた。病休制度がなく、発熱しても休めない職場も多かった。政府も「戦争以上の戦争」という犠牲者続出の中で、平然と軍事演習を続行し、巨大クラスターとなった艦船や基地から市中に感染を広げた。医療に必要な予算を大軍拡に費やした。
この時、コロナ医療の最前線に立った医療労働者に労働者・人民が尊敬の念を抱いた。特に、PPEを求めてストライキをした医療労組には、全米の注目が集まり、〈労働組合の力〉が認識された。アマゾンの配送拠点など労働組合が存在しない職場でも、解雇の恫喝に屈せずに安全闘争をしたのは、労組設立運動をしてきた労働者だった。
ギャロップの21年9月の世論調査によると、アメリカ人の68%が「労働組合に賛成」と答えている。1965年の71%以来の高さだ。

20代が組織化の先頭に立つ

同調査によれば、労働組合を支持する比率は若年層が最も高い。18~34歳は、77%に上る。
ニューヨーク・スタテン島のアマゾン配送拠点での労組設立に勝利し、ALU(アマゾン労働組合)の委員長になったクリス・スモールズ氏は30代前半であり、他の組織化運動の活動家たちはほとんど20代前半だ。
アマゾン、スターバックス、マクドナルドなどは従業員の流動性が高く、これまでは労組設立が困難とされてきたが、新たな活動家の新たな発想によって組織化が進められている。
ALUは、現場労働者の創意工夫で生み出された戦略・戦術で勝利している。
スターバックスでは、すでに54の直営店で労組設立投票に勝利し、労組が正式に発足し、250以上の店舗の労働者が労組設立投票を申請している。労働者の最大の要求は、インフレ下の賃上げと並んで、人員不足の解消だ。それが安全問題に直結しているからだ。

全米鉄道ストライキ

2016年の11月全国労働者総決起集会、東京・ソウル国際共同行動に参加したRWU(鉄道労働者連帯)は、今年5月1日の運営委員会で全米鉄道ストライキを呼びかける決定をした。コロナ禍での労働者攻撃、安全破壊、一人乗務の強制などが行われており、労働者の怒りが頂点に達しているばかりでなく、また客体的にも非常に有利な条件があるという。鉄道資本の攻撃対象が全職種に及んだために、職種間・諸労組間の連帯がかつてなく強まっており、また、またサプライチェーンが危機で、ストが最大の効力を持つ時代だということだ。RWUは全米ストのためのオルグを各地で行った。
7 月12日、BLET( 機関士労組)の組合員投票で、99・5%以上の賛成票でスト権が確立された。他の鉄道労組もそれに続いている。
バイデン政権は、大統領非常委員会を招集して、資本と労組の「仲裁」に入った。アメリカ階級闘争は30年代以来の激突期を迎えた。

世界の階級闘争と結合

ウクライナ戦争を機に、全世界で帝国主義への怒りが爆発している。コロナで何百万人も殺した帝国主義が、「人権」「人道」を掲げて経済制裁をするなど、「ふざけるな!」ということだ。
スリランカでは、鉄道労組、医療労組などを先頭にしたゼネストを打ち抜き、1000万人以上が街頭に出てラジャパクサ大統領を国外逃亡に追い込んだ。アメリカ帝国主義を軸にしたIMF(国際通貨基金)、世界銀行の悪辣な債務取り立て策―食糧・燃料の欠乏―に対する労働者人民の怒りの爆発だ。
イタリアやフランスでは、全国的なストライキが行われている。
エクアドルでは6月、インフレ、食糧・燃料欠乏、そして政府の弾圧に対して、労働者の全国ストと街頭での激突、先住民の大決起が行われた。
コロンビアは、1989年からだけでも、4000人もの労組活動家が殺害されてきた国だ。極右親米政権の軍、警察、民間右翼をアメリカが訓練し、「暗殺部隊」を作ってきたのだ。
しかし、そこでも今年6月の大統領選挙で「左派」が選出された。コロンビアの隣国ベネズエラでは、クーデター策動が何度も行われたが、02年以来すべて失敗している。帝国主義労働運
動=AFL―CIO(アメリカ労働総同盟・産業別労働組合会議)本部が推進した御用組合設立・強化も無駄になった。アメリカ帝国主義の制圧力が劇的に低下したのだ。
こうした全世界の労働者・人民の闘いが、米帝と既成指導部の権威を失墜させ、アメリカ・世界の労働者の団結を作りだしている。

『月刊労働運動』2022年8月号掲載