労働組合運動の基礎知識 第5回
労働組合運動の基礎知識 第5回
労働組合運動の基礎知識 第5回
小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)
偽りの求人票は違法―使用者には労働条件明示義務がある
(小竹運輸・ダイエー八王子店をめぐる闘いに引き付けて)
「正社員募集・雇用期限の定めなし」が実は「1年の有期雇用の非正規」
インターネットの求人広告では「正社員募集」「雇用期間に定めなし」と書いてあるのに、現実の労働契約書は1年の有期雇用。末尾には「会社と本人の間で、本契約を更新する旨の書面による合意をしないときは、本契約は、期間の満了によって当然に終了する。この契約は、本人が更新を申し出て、会社が必要と認めるときに更新することができ、会社はその都度、以下の事項に基づき、更新の必要性を判断する」と書かれています。これは小竹運輸グループの会社の一つであるK・ロジテックの行っていることです。
ダイエーにおいては、元々はダイエー八王子店の直接雇用であったクリーンスタッフ(清掃労働者)を、2006年強引に「本州ビルメンテナンス」という下請け会社を導入して解雇してきたことに対して、合同労組八王子を結成して解雇を撤回させました。しかしその時、ダイエーの第4次下請けの「ワークスタッフ」という会社に雇用されることになりました。しかしこの時、クリーンスタッフの労働者=合同労組八王子分会の仲間にはワークスタッフから労働条件の提示がなされることもなく、労働契約も結んでいません。それまでダイエー八王子店から支払われていた給与が、勝手にワークスタッフという第4次下請けの会社から支払われることになったのです。一般的にこういうケースでも必ず新たな会社が労働条件を提示し、新たな雇用契約を本人と直接結ぶのが当たり前であり、本人の同意なく勝手に別会社に身分を移されて、給与が別の新たな会社から振り込まれてくるなどというケースは前代未聞です。したがって、雇用責任はダイエーにあり、ダイエー資本は駅の裏側にあるダイエー西八王子店にクリーンスタッフの仲間の職場を保証すべきです。
使用者は最初に労働条件を明示する義務がある
労働基準法第15条1項で、使用者は労働条件について明示することが義務付けられています。偽りの労働条件を提示した場合は罰則があり、労働契約は直ちに解除できます。しかし、仕事が無くてやむなく不本意な労働契約を結んでしまうことがあるのです。だからネットやハローワークの求人票と具体的な個別の労働条件については食い違うことがあり、トラブルが絶えません。
厚生労働省の調査では2013年に求人票と実際の労働条件が違うとして、ハローワークに寄せられた苦情等は9380件(12年度は7783件)に上っています。多いケースは、小竹グループのような正社員の募集をかけて実は有期雇用の非正規、基本給20万円としていながら実はこの中に200時間分の固定残業代が含まれていたというような場合です。これだと月200時間残業をしても20万円の賃金しか支払われません。残業代ゼロ法の先取りです。
労働組合を甦らせ、こういうブラック状態を打ち破らなければなりません。