JR採用差別事件の上告棄却決定を弾劾する!
JR採用差別事件の上告棄却決定を弾劾する!
国鉄分割・民営化で解雇された動労千葉の9人の組合員が、鉄道運輸機構(旧鉄建公団)を相手に闘ってきた裁判で、最高裁は6月30日、動労千葉と鉄道運輸機構の双方の上告を棄却する反動決定を出した。これにより不当労働行為を認定した東京高裁判決が確定したと同時に、新たな攻撃がかけられてきた。動労千葉声明を転載する。
闘いはこれからだ!
(1)
6月30日、最高裁第三小法廷・大谷裁判長は、JR採用差別事件について、組合側、鉄道運輸機構側双方の上告を棄却し、上告審として受理しないとの決定を下した(7月2日送達)。
高裁・難波判決から1年9ヵ月を費やして出された決定に書かれた「理由」はわずか7行。「民訴法の各条項に規定する上告事由に該当しない、受理すべきものとは認められない」。ただそれだけだ。最高裁は真実に追いつめられ、権力者たちにとって不都合な真実から逃げ覆い隠すためにこの決定を下したのだ。
ついに10万筆をこえた解雇撤回を求める署名を提出したばかりであった。最高裁は、国鉄闘争がいよいよ怒りの声と深く結びついて労働運動を甦らせる力になろうとしていることを恐れたのだ。満腔の怒りをこめて棄却決定を弾劾する。われわれは闘いの旗を降ろさない。解雇撤回の日まで闘い続けることを決意する。
(2)
闘いは敵を追いつめ揺るがしている。この棄却決定自身がそれを示している。
最高裁は採用差別が不当労働行為であったことを認めざるをえなかったのだ。上告棄却によって最高裁が確定させた高裁判決は、次のとおり明確に不当労働行為を認定している。
「国鉄は当初、動労千葉所属の組合員をも基本的には採用候補者名簿に記載する方針で名簿の作成を進めていたにもかかわらず、改革労協側の姿勢に触発されるなどして、国鉄分割・民営化に反対する姿勢を示していた労働組合に所属する職員を、このような労働組合に所属していること自体を理由として、差別して不利益に扱う目的、動機(不当労働行為意思)の下に、本件名簿不記載基準を策定し、JR東日本の採用候補者名簿に記載しなかったものと推認するのが相当である」
これは「国鉄改革」の正当性を根底から揺るがす事実認定だ。なぜなら、国鉄分割・民営化は、国鉄改革法により、新会社への国鉄労働者の異動を「新規採用」とすることによって、中曽根の狙いどおり、戦後最大の労働運動解体攻撃となったからだ。
その採用候補者名簿自体が不当労働行為意志の下につくられていたことが明らかになったのだ。そして最高裁もそれを認めざるを得なかったのである。虚構は全部崩れ落ちたのだ。
(3)
ところが、高裁・難波判決は、「JRは雇用契約締結の自由を有しており、採用候補者名簿に記載されることが、直ちに同社に採用されることを意味するものではない」「名簿に記載された者が全員採用されているのは事実だが、名簿作成の前提が変われば全員採用されていたかは明らかではない」「しかし、本件の事実関係の下では、原告らが採用された可能性は相当程度にあったことも否定できない」と言いつのり、解雇撤回・JR復帰を否定して慰謝料の支払いだけを命じた。「判決」の名に値しない詭弁だ。
不当労働行為によって解雇されたのになぜ解雇撤回ではないのか。しかも、われわれは「不採用基準」が、井手、葛西ら当時の国鉄幹部とJR設立委員長が共謀して作られたものであることをつきとめ、揺るがぬ証拠を提出した。しかし、高裁も最高裁も、この重大な事実を完全に無視した。なぜか。「不採用の責任はJRに及ばない」「国鉄とJRに同一性はない」という主張が崩壊するからだ。
さらに最高裁は、「採用」過程で団体交渉権が喪失することや、労基法で禁止されている労働組合運動に関する通信が公然と行なわれること等、改革法23条の違憲性を示す様々な事実についても「違憲を言うが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって上告事由に該当しない」というひと言で切り捨てた。
つまり真実の前にグラグラに揺らぎながら、どんな手段を使っても国鉄改革法体制を護持するというのが今回の棄却決定の正体に他ならない。
(4)
さらに今回の棄却決定は、戦争と改憲に突き進み、そのために連合すら切り崩し、分裂させて再編しようとする安倍政権の新たな労働運動解体攻撃、派遣法改悪や「残業代ゼロ法」制定をもって雇用破壊・総非正規職化への最後の扉を開こうという攻撃、「成長戦略」と称する社会丸ごと民営化を貫徹するために再びJRの大再編を狙う「第二の分割・民営化」攻撃と一体の国鉄闘争解体攻撃だ。
日本における新自由主義攻撃は国鉄分割・民営化から始まった。以降、膨大な労働者が雇用と権利を打ち砕かれて非正規職に突き落とされ、教育、医療、社会保障制度、地方自治など公共サービス部門すべてが激しい攻撃にさらされて貧困と格差が社会に蔓延した。
しかし、30年にわたって闘い続けられてきた国鉄分割・民営化反対闘争、1047名解雇撤回闘争、外注化・非正規職化阻止闘争は、こうした現実への対抗力となり、産別をこえた無数の労働者の結集軸となって大きな役割を果たしてきた。その闘いは労働運動が後退を強いられる状況の中で陣地を守り、連合が産業報国会として完成することを阻止し、JRの職場では外注化・非正規職化を10年単位で遅らせてきたのだ。
そして、新自由主義攻撃が社会の崩壊となって崩れ落ちようという情勢が到来しようとしている。JRの民営化体制も経営破綻や安全崩壊という形をとって全部崩壊しようとしている。こうしてJRの職場では、鉄道業務のすべてを外注化し、転籍を強制し、雇用を全面的に破壊する第二の分割・民営化攻撃が開始されたのだ。
(5)
闘いは何ひとつ終わっていない。闘いの旗を降ろすことはできない。闘いはこれからだ。全国からの暖かい支援・連帯の力によって支えられ、守りぬいてきた国鉄闘争が本当の意味で力をもつのはこれからだ。われわれは、解雇撤回、外注阻止、第二の分割・民営化攻撃粉砕、階級的労働運動の再生に向け、全力を尽くして闘いを強化する。
(日刊動労千葉№7933より転載)