時代を解く 伊勢志摩サミット 日本で6回目

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0314号09/01)(2016/05/01)

時代を解く 藤村 一行(動労千葉労働学校講師)
伊勢志摩サミット 危機のりきりと破滅への暴走
第42回サミット 日本で6回目

 第1回目は1975年、パリ近郊のランブイエで開かれた。 第2次世界大戦後の戦後世界体制は、1971年「金ドル交換停止」と「74~75年恐慌(石油危機)」、ベトナム敗退(最終撤退は75年)というメルクマールで基本的に崩れた。戦後の世界経済体制においては、ドルだけが金と結びついていた(ブレトンウッズ体制)。金とドルの交換停止とは、理論的には世界経済の基軸通貨ドルがその絶対的力を失ったということ。アメリカの立場は、帝国主義世界の家父長的位置から腕力の強い長男になった。このままでは世界経済は混乱する。それを避けるために、帝国主義各国の首脳が「協調」して世界経済の秩序を維持するために毎年一回会合する。これが「主要国首脳会議」(サミット=頂上)の意味である。実際には、帝国主義各国は自分が生きるためにドルを支え、アメリカはこれまで以上に腕力を振り回して自分の利害を他国に押し付ける世界体制になった。この枠組みで1970年代末以後の世界経済と世界政治が展開されてきた。新自由主義の時代に対応している。
サミットと新自由主義の攻撃
 以来十数年、東欧とソ連のスターリン主義体制が崩壊した。世界は、新自由主義が全面的に席巻する状態となった。新自由主義はアメリカ・スタンダードの暴力的押し付けという面があり、1990年代はアメリカの一極支配とも呼ばれた。
 ソ連・東欧崩壊の直接の結果はドイツ統一とEU登場である。また、東アジアの中国スターリン主義の大国としての台頭がもう一つの結果である。世界政治地図は大きく書き換えられた。2001年反米同時テロに対する報復を掲げた米・ブッシュのアフガニスタンとイラクへの侵略戦争、その中での08年リーマンショックに示される世界大恐慌は、アメリカの世界支配の「終わりの始まり」だった。それは、帝国主義・資本主義が生き延びる世界的枠組みが崩壊し、とって代わるものが展望できない世界の到来を意味する。世界各国の支配階級は、自分だけが生き残るためにあがき、労働者階級への「自己破壊」的ともいえる攻撃に突進している。
安倍政権のサミット戦略を打ち砕こう
 安倍政権が主催者となる今年の帝国主義サミットは、世界を破滅させる暴走に拍車をかけるものとなる。世界経済的には、為替戦争の激化(円高強制)と、主催国日本が財政支出を大々的に増やすことが確認事項となりそうだ。安倍は、アベノミクスの破綻をごまかすためにも積極的に応じようとしているが、破滅への道である。また安倍はオバマの広島訪問を演出して日米同盟の強化・対中国の戦争体制強化をうたいあげようとしている。これは朝鮮半島情勢への恫喝(「核なき世界のために核使用を辞さない」という)である。サミットと参院選をもって、改憲に突っ走り、南中国海から中東までの自衛隊の軍事的出動を解禁する。さらに、TPPを押し立てて、新自由主義的に〈資本の絶対的自由〉を原理として激しく労働者階級に襲いかかってくる。だが、4・14の熊本地震は、日帝が3・11直後の根本的な崩壊状態を抜け出していないことを突き付けた。サミットの派手な演出で参院選に勝利する〈戦略〉など粉々に粉砕しなければならない。