7月参議院選で鈴木さんを国会へ インタビュー

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0315号02/01)(2016/06/01)

7月参議院選挙で鈴木たつおさんを国会へ!
鈴木さんインタビュー  職場拠点化と新しい労働者の政党を!

★立候補を決意した理由

―参議院選挙に立候補しようと思われたのはどうしてでしょうか。
鈴木 決意を固めたのは昨年9月19日安保・戦争法強行採決前後です。また労働者派遣法改悪に対しても労働者の怒りを体現する政党が一体どこにあるのかという問題意識です。
 その強行採決の日に、日本共産党志位委員長が「国民連合政府をつくろう。安保条約の是非は当面棚上げする。日本の主権が侵害された場合にはアメリカと共同して防衛戦争をやる」と記者会見した。全国で決起した1千万人の怒りをとんでもない方向に持っていこうとする。これは許せないと感じた。労働者派遣法改悪が政治争点にならないまま成立した。安保法との闘いに決起した1千万労働者、あるいは2千万人に達している非正規労働者の怒りを体現する政党がなくてはならないと痛感した。
 東京選挙区を選んだのは、首都で政治の中心であり、有権者が1200万人、定数が6人で、かつての中選挙区に近い。小選挙区のような票のゆがみが少ないことから適切だと思った。

★改憲と戦争に絶対反対!

―「改憲と戦争に絶対反対」の主旨を。
鈴木 厳密に各政党の言っていることを見ると、今年3月29日から施行された安保・戦争法の廃止は言っているが、「戦争絶対反対」ではない。自民党から民進党、共産党までが「自衛戦争はやる」と言っている。とくに共産党は、「外国のための戦争反対」というスローガンを大真面目に掲げている。しかし、すべての戦争は自衛の名によって始まった。アジア・太平洋戦争も「自存自衛の戦争」と言った。安保・戦争法の最大の軸であった改悪武力攻撃事態法は、国家の存立危機にあっては憲法9条の下でも武力行使は許されるという。だが、その戦争は、1%の資本家のための資源と領土と勢力圏を奪い合う戦争だということをはっきりさせなければならない。
 結局、全国で決起した労働者の気持ちを反映した政党はない。戦後日本の階級闘争を見ても、その軸は戦争絶対反対だった。「改憲と戦争に絶対反対」は、そういう意味を込めています。

★派遣労働廃止・非正規職撤廃!

―「派遣労働廃止・非正規職撤廃」を掲げている主旨をお願いします。
鈴木 大きな二つの政策のうち、「戦争絶対反対」と並ぶ中心スローガンです。戦争と貧困をなくす。その貧困の最大の原因は、派遣労働、非正規職にある。日本の現状を考えると子どもの貧困、高齢者の貧困・破産、すべての人民が低賃金、生活苦に叩き込まれている。非正規職が生まれる法的制度として労働者派遣法があります。国鉄分割・民営化と同じ時期に成立し、改悪を重ねながら今や無制限に近い形で派遣が許される。戦後労働法制で絶対的に否定された「口入れ屋」(人材斡旋業)の復活です。労働者派遣法が「口入れ屋」の復活に水路を作ってしまった。派遣労働者、非正規労働者の賃金は正規労働者の半分だと言われている。青年、高齢者だけでなく壮年の一家の柱までその範疇(はんちゅう)に叩き込まれている。
 新聞記事で、「一家の柱が低賃金で1日2食を強いられている」と出ていた。壮年の40代の労働者のことだ。人間の生存条件が破壊されている。戦争絶対反対と並んぶ大テーマです。
―「派遣法撤廃」を掲げているのは、選挙に出る候補の中ではほとんどいないですね。
鈴木 そうなんです。共産党のパンフレットでは「資本主義の枠内でのルールづくり」のため、政府・厚生労働省と交渉すると言っている。「正規と非正規の均衡待遇」とは、厚生労働省の言い方です。
 最近「同一労働同一賃金」と言われているが、連合を分裂させるためUAゼンセンが掲げているスローガンです。改憲を推進し、非正規労働者を圧倒的に組織している連合内の右派組合です。それを連合に持ち込んで、正規労働者をゼロにしていく。
賃金も労働条件も非正規に合わせる。結局「同一『価値』労働、同一賃金」とは、誰が「価値」を判断するのかという問題、資本だということです。
 資本主義が生き延びるための最後の手段で、社会が壊れていく。
 JRで事故が多発している。国鉄労働者を大量にクビにした後、第2の分割・民営化としての外注化攻撃が来ている。「水平分業」と言いながら仕事をバラバラにし、金儲けのために、鉄道輸送事業を根幹から解体しようとしている。

★新しい労働者の政党を!

―新しい労働者の政党をつくろうという主旨を話して下さい。
鈴木 自民党は資本家の政党だということは論ずる必要はないと思います。参議院選挙をめぐってあらゆる政党が本質を露呈しています。
 公明党は、来年4月からの消費増税10%への引き上げで安倍がぐらついているため、「軽減税率」問題を言えなくなっている。安保・戦争法も党内で異議が噴出して「平和の党」と言わなくなった。
 社民党は、国鉄分割・民営化に屈し、「4党合意」や「4・9政治和解」で命運は尽きた。「労働者の味方」も言わなくなり、「労働組合に振り回されない市民と女性の党だ」と言って凋落(ちょうらく)している。
 民進党は、維新の会と合併したことに現れています。民主党政権時代に原発輸出までやろうとした。消費増税を決めたのも野田政権です。資本家と労働貴族の党であることはハッキリしています。熊本地震で川内原発の稼動をやめろという声が大きくなった時に、原発産業である電力関係者から票を取っている議員がいるので、そういう申し入れはできないと断った。
 最大の問題は共産党です。自衛の戦争ならいい、安保条約は棚上げにする。労働者が工場法以前の状況になっているのを資本主義の枠内で解決できると言い切っている。労働者の味方どころか、結局労働者の決起に襲いかかるとんでもない政党だと考えざるを得ない。
 だから一言で言うと、労働者の利益、労働者の生活を真っ向から考え、労働者の立場から権力に迫っていく政党は皆無という中で、新しい労働者の政党をつくりたいということです。
 先日、韓国の総選挙でパククネ政権のセヌリ党が惨敗する結果になった。民主労総が労働法制改悪反対でパククネ政権と1年あまりゼネストで闘って、労働者の闘いが軸になって多くの農民や漁民、「貧民」から学生まで結集し、パククネ政権打倒の寸前まで来ている。「新しい労働者の政党」というのは、そういう全ての人民の政治的結集体でもある。
 さらに「労働の奪還」ということが労組交流センターでも大きなテーマになっていると思います。本来、労働というのは人間の根源的生命活動ですが、それが今や『共産党宣言』の言葉を借りれば、本当に憎たらしい腹立たしいものになっている。本来の労働を奪還していく。職場で実際に労働を担っている者がその職場で主導権を取っていく、職場支配権の確立だ。「労働者の政党」とは、こうした職場の闘いに根を張ったものでなければならない。
 労働者は単なる1票を入れる存在ではない。この社会を実際に回している主人公が自分たちの政党を生み出すという意味で「新しい労働者の政党」を作りだそうということです。

★労働裁判から選挙戦へ!

―動労千葉や鈴コン、学生や星野再審などの裁判の弁護をしている立場から選挙に出る意義について話して下さい。
鈴木 憲法28条(労働者の団結権、団体交渉権、団体争議権を認めている)をはじめ、労働組合法、労働基準法など、労働者の闘いの成果としてあった戦後労働法制が一気に崩されようとしています。一つの鍵は2008年に施行された労働契約法です。これは労働法学者ですら「労働者と経営者の契約原理を死滅させるものだ」と言っている。しかし、既成の労働運動はこれを問題にしていない。労働契約法による「5年ルール」で2018年に大量解雇が出る。非正規労働者を切り捨てる、国鉄分割・民営化型の一旦全員解雇・選別再雇用に全労働者を叩き込む攻撃です。総非正規職化という以上に「正規労働者ゼロ化」であり、憲法28条を解体するもう一つの改憲攻撃です。私は、動労千葉や鈴コン分会の弁護士ですが、現場で起こっていることを、裁判の場で問題にしている中で気がついた大変な事態です。現場の闘いであると同時に、政治の世界の問題です。
 そして、京都大学の反戦バリケードストライキをはじめ全学連の学生への弾圧を安倍政権が仕掛けている。しかし、完全黙秘・非転向で学生が全部打ち破ってきた。そうした問題をどの政党も光を当てない。「過激派が弾圧されるのは当然」などと言っている。大学の自治や「学問の自由」の伝統が破壊されています。こうしたことを全人民の利害として訴えなくてはいけない。それが政党の役割だと思います。
 私は星野再審闘争の弁護団長もしています。星野文昭さんは41年間、70歳になった今も無実なのに獄中に入れられている。再審闘争で最大の問題は証拠開示問題です。国民の税金で公的に収集した証拠を全然出さない。ゴビンダさんの冤罪事件で闘った人たちが、「無実・無罪の証拠は検察庁の倉庫の中にある」と運動の中から発見した。法制審議会でも再審における証拠開示の問題を全く問題にしない。その現状を打破し、星野さんを取り戻す。僕が立候補しようと思った一つの大きな要因です。

★職場で選挙論議を巻き起こす

―全国労組交流センター会員、とりわけ東京の会員にむけて訴えたいことを話して下さい。
鈴木 職場の団結、労働組合をつくろうと、今まで述べた立場で7月参議院選挙戦を闘おうとしていますが、選挙スローガンや政策について職場で議論を巻き起こしてもらいたい。
 選挙は職場の基礎的団結をつくる一助になると思います。7月参院選は、最大の政治的争点で、改憲が争点だし、貧困問題も大きなテーマです。職場の労働者は大いに考えている。議論が起こり始めている。民進党はどうだ、おおさか維新はどうだと話題になっている。だから、「新しい労働者の政党」について、労組交流センターの活動家たちが職場で議論してもらいたい。
 改憲問題は労働者が戦後一貫して闘ってきた最大のテーマです。7月参議院選挙に職場からの声、職場からの波を起こしてもらいたい。「新しい労働者の政党を」とカラ文句を言っても仕方がない。その実体、実際の流れを職場から起こす、これが選挙戦に私が立候補する最大の意味だし、価値だと思っています。
 職場に根を張った力ある政治勢力として登場する。労働組合の拠点づくりと一体です。
 実は、私が日放労長崎分会の委員長になった過程で、1967年4月東京都知事選の美濃部選挙があり、「ストップ・ザ・佐藤」で闘っていた。その選挙は私が長崎で拠点を作っていくものすごいテコになった。職場の仲間は「鈴木さんたちは一体どういう考えで何をやろうとしているの」と、職場の闘いと一体で政治を考えている。「美濃部を勝たせて佐藤を倒す」と言った。すると「それはすごい!」とみんなが言う。私がやろうとしていることに対するイメージが鮮明になり、6月の分会長選で、私と20代の青年たちが分会を二分して既成執行部を7票差で打ち破った。
 東京に限らず全国で、力ある政治勢力になることが職場の拠点づくりに役立つと思います。全国で一緒に闘って拠点づくりをし、一つの政治勢力として登場していくことが、各地の職場で苦闘している仲間を限りなく励ますと思います。
=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*=*

鈴木たつおさんの主張とプロフィール

○主 張

 改憲と戦争に絶対反対!
 派遣労働廃止、非正規職撤廃!
 新しい労働者の政党をつくろう!

○経 歴

1940年 東京生まれ
1959年 東京都立新宿高校卒業。東京大学理科Ⅰ類入学
1964年 工学部土木工学科都市計画コース卒業
日本放送協会(NHK)に番組制作担当ディレクターとして入局。長崎局に赴任
1967年 日放労(NHK労組)長崎分会委員長
1968年 米原子力空母エンタープライズ佐世保寄港阻止闘争
NHKの東京配転命令に反対する百日間闘争の末、起訴され休職に
1969年 全国反戦青年委員会代表世話人
1982年 15年間の裁判闘争の末にNHKを解雇される
1988年 司法試験合格
1991年 弁護士登録(第二東京弁護士会)

〈現在受任中の主な訴訟事件、弁護団〉

○国鉄千葉動力車労働組合顧問弁護団
○東京西部ユニオン鈴木コンクリート工業分会・地位確認訴訟
○法政大学学生弾圧裁判弁護団
○星野文昭さん再審弁護団

〈運動団体〉

○「憲法と人権の日弁連をめざす会」事務局
○「すべての原発いますぐなくそう!全国会議(な全)」呼びかけ人)
○「国鉄分割・民営化に反対し、1047名の解雇撤回闘争を支援する全国運動(国鉄闘争全国運動)」呼びかけ人

特集0315

Posted by kc-master