産別・戦線の闘い 第7回 民間交運―自交総連SKさくら交通労組ストライキの経験

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0335号06/01)(2018/02/01)

産別・戦線の闘い 第7回 民間交運労働者の闘い
―自交総連SKさくら交通労組12・20ストライキの経験―

(写真 ストライキに突入し、会社前でアピールする私)

改憲と戦争の時代に労働組合の一歩を踏み出した

河野 晃興(自交総連SKさくら交通労組委員長)

 私のタクシー職場で初めてストライキ闘争に挑戦しました。

●不当な有休制度に抗議のスト

 職場では、全体の約4分の1に当たる本採用=正社員の労働者は、有給休暇を取ると月例賃金で1日分の賃金が補償されます(=有休補償)が、年末の賞与の時に「精算」が行われ、会社が支払う賃金総額=「賃金原資」である年間実売上の57・61%という金額から支払った賃金総額が差し引かれ、残った金額が年末賞与として支払われます。結局「賃金原資」=賃金総額は有休をとっても欠勤の場合と全く変わりません。会社は個人に対してやると露骨なため、「全体精算」といい、労働組合ごとに全体の賃金原資から有休補償分を差し引き、年末賞与の賃率を出して支給しています。つまり有休を取らない人も有休分が引かれることになります。
 この賃金制度でも、以前は非正規の嘱託労働者より良い条件でしたが、リーマン・ショック前後の大幅賃下げ(61%→57・61%)により定年退職後の嘱託労働者より本採用労働者の方が年間賃率が低くなることが増えました。20万~30万円だった年末賞与が10万円前後の水準になったのです。不当な有休制度が大問題になったのです。

●これでは有休にならない

 多くの労働者にとって「なぜこうなるのかわからない」、賃金規定には一切書いてないのです。会社は唯一、労働組合との団体交渉の場でこのからくりがわかる数字を出します。労働組合が闘う姿勢を持っていない限り、不当な制度でも仕方のない現実として何事もなかったかのように調印が行われることが繰り返されていました。 第3章 ●大会で執行体制スト権確立
 私たちの組合もおかしいと気づきながらどう闘うか方針が明確になりませんでした。「有休でも、ストライキでも同じ」という話から、組合員の中から「だったらストライキやろう」という声が上がり、昨年の大会で、執行部4人の体制を確立し、スト権投票を行ってスト権を確立し、いつでもストライキができる体制を取りました。これが労働組合として自立的に闘う大きなステップとなりました。

●裁判や労働委員会も検討

 裁判等で不当性を判断してもらう選択肢もありました。執行部で相談に行った労基署では、北海道労働委員会に申し立てるのが良いと助言されました。組合で議論し、「私たちの組合に所属していない全自交労組所属の本採用や、非組の本採用はこの事実さえ知らないのでもっと宣伝して知らせるべきだ。労働委員会からやってみよう」という意見でまとまりました。しかし労働委員会では結果は先になり、全体には自らの行動で伝わると考えました。団体交渉の時、組合が「ストライキ」と言った途端に会社が顔色を変え「ストライキなんてとんでもない」と反応し、「そんなに嫌がるならやってやろうじゃないか」と組合員が言い出し、以来「いつやるの」と私が決断を迫られる場面が何度もありました。

●「ライドシェア」解禁

 現在タクシー労働者は全国に34万人、家族を含め約100万人います。しかし「ライドシェア」と呼ばれる一般車両の旅客輸送=白タクが合法化されようとしています。車で人を運ぶのにプロの運転手は必要ない、一般車を使い、スマホ・アプリで乗りたい人と乗せたい人をマッチングさせるというものです。車も保有せず、労働者の雇用責任も負わず、安全にも責任を取らないアプリ提供会社が4割の手数料を取るボロ儲けのシステムです。「ライドシェア」が世界中に広がり、日本でも安倍政権のバックアップで導入されようとしています。34万人の統一ストライキで迎え撃つべき問題だ、ストライキで発信すべきだと考えたのです。

●労働組合としてどう闘うのか

 われわれが立ち向かう時代は改憲と朝鮮侵略戦争という時代です。韓国ゼネストのような闘いが求められています。たとえ小さくともそれを展望してまず一歩踏み出そうと考えました。

●ストに向かう過程

 ストライキ当該の3人はそれほど抵抗感もなくスト方針で一致できました。ストに向かって、有休制度の詳しい暴露、ライドシェアの問題、改憲・戦争問題をビラにし全労働者に配布しました。古株の人は「前からこれは問題だったんだ」と言い、新しい人は「こんなことがまかり通っているのか」と驚くなど大きな反響がありました。全自交の本採用の中からも質問を受けました。スト前日に「スト突入」というビラを撒き、反応はさらに大きくなりました。ストライキで闘うことで職場の雰囲気は一変しました。そっと近づいて、「ビラに書いてある通りだ。感動した」と声をかけてくる年配の労働者も現れました。ストライキ支持の広範な声の中で闘うことができました。
 また、国鉄闘争全国運動の会議でも、ストライキを討議し、国鉄労働者から貴重なアドバイスをもらうことができました。

●会社の対応も変わる。

 いつもは処分の恫喝くらいしか文書を出さない会社の対応も大きく変わりました。組合の要求書に翌日、早速回答文書を用意してきました。内容は言い訳でゼロ回答でした。ストライキをやられたくなかったのです。

●12・20スト突入

 スト当日、会社の前で「本当にやるのか、すげえな」「頑張れ、応援してるぞ」と労働者が声をかけてくれました。集会が始まると、2階の点呼室の窓からたくさんの労働者が集会を見ていました。会社もビデオ撮影をしているようでした。集会中には、会社の向かいの丘珠空港を使用している自衛隊丘珠駐屯地のホロトラックが通過、会社周辺に自衛隊官舎もあります。その中で集会とストライキが闘われているのは大きなことだと思います。会社にスト通告した後、組合員と一緒に職場でビラまきを貫徹しました。組合員からは「もっと組織拡大して力を大きくしよう」と言われました。

●報告の壁新聞

 後日、ストの報告の壁新聞を写真入りで張り出しました。反応もあり、「やることちゃんとやってるよな」と評価してくれました。ストへの広範な支持により1月に組合員1人拡大を達成しました。組合に対する支持は大きいと実感しています。有給休暇制度改善と共に組織拡大したいと思います。

●タクシー以外への波及効果

 ストライキの報告は合同労組などを通じて広がり、支持と反響を呼んでいます。ゼネストにむけ国鉄集会から春闘へ、さらに闘っていきたいと思います。