闘いなくして理論なし第23回 ロサンゼルス統一教組がストライキで歴史的勝利

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0348号07/01)(2019/03/18)

理論なくして闘いなし 闘いなくして理論なし第23回
ロサンゼルス統一教組がストライキで歴史的勝利

ロサンゼルス統一教組がストライキで歴史的勝利

(写真 早朝のピケットラインでイースト地区の仲間とアーリーンさん【一番前】)

※徹底した組織化で築いた団結には無限のパワーがある!

小島 江里子(動労千葉国際連帯委員会)

動労千葉国際連帯委員会の小島江里子さんに、米ロサンゼルス統一教組の歴史的ストライキの報告を書いていただきました。

(写真 ストライキ2日目、チャータースクール協会の前で抗議の集会に集まった組合員と支援者たち)

■地域丸ごと獲得した巨大なストライキ

 ストライキ初日の1月14日早朝、3万2000人のUTLA組合員が、900校以上あるすべての公立学校の前でピケットを張った。雨のあまり降らないロサンゼルスではめずらしい豪雨の中で、保護者やコミュニティーの人びとが次々と集まって、組合員と共にピケットラインに起っていた。
 ロサンゼルス統一学区(LAUSD)当局は、2000人の教員免許資格を持つ職員などを集め、400人の代用教員を雇って学校を運営するとし、登校しなかった生徒は無断欠席とみなすと発表した。しかし、生徒たちも保護者と一緒にストライキに参加している。高校生たちは独自に教師支援のストライキに決起し、「先生たちを支援するため、それに私たちの教育環境を良くしたいから、共に闘う」と。小学校の前で教師たちが、「私たちは今ストライキに起ち、授業は行いません」といった内容のビラを配布した。
 午前10時30分、ロサンゼルス市街のグランド・パークに各学校から続々と人びとが集まり、5万人をはるかに超えるストライキ参加者で埋め尽くされた。集会後、LAUSDへとデモ行進を行い、教育長オースティン・ベアットナーへの抗議をたたきつけた。国際港湾倉庫労働者組合(ILWU)、サービス従業員国際組合(SEIU)、カリフォルニア州立大学職員協会(CSUEU)など、カリフォルニア州の多くの労組が駆け付けて共に闘った。

■チャータースクールの教師たちもストライキに起つ

 2日目の15日は、早朝の各校前のピケットラインを終えた後、カリフォルニア・チャータースクール協会(CCSA)の前で、増え続けるチャータースクールによって公立学校が破壊されていることに断固抗議する集会を行った。この2日目から、チャータースクール3校の教師たちもストライキに加わって、チャータースクールの劣悪な労働環境の改善を求めて訴えた。
 これら3校の教師たちは、アクセラレーテッド・チャータースクールズという大手のチャータースクール運営企業が経営するフランチャイズのチャータースクールで働く、UTLA傘下の組合員だ。チャータースクールの教育労働者がストライキに起つのは、カリフォルニアでは初めてであり、全米でも去年の12月に初めてシカゴでチャータースクールの教師たちのストライキが貫徹され、それに続くものとなった。チャータースクールに組合があるのは全米でわずか11%であり、公立学校の教員組合はチャータースクールの教師たちの組織化を進めている。UTLAもチャータースクールの中に独自の組合を組織する手助けをして、傘下の組合として団体交渉にも加わっている。
 集会にはカリフォルニアを拠点にライブ活動をしているオゾマトリ(OMATLI)が支援に訪れ、UTLAの音楽教師たちと共にジャムセッションを行い、参加者から大喝采を受けた。「僕たちも公立学校で学んだので、ロサンゼルスの音楽の先生たちに音楽のすばらしさを教えてもらって感謝しています。この数十年の間に公立学校への資金がどんどん減らされて、音楽教育が打撃を受けているのは本当に悲しいです」と、オゾマトリのメンバーは語った。

■ストライキは盛り上がり、協約交渉が再開される

 UTLA執行部のストライキ戦術は、早朝に各学校職場でピケットを張った後、全員が結集して大団結行動を行うというもので、「私たちが圧倒的に力のある団体として団結する姿を示すことが重要」と、ベアットナー教育長に自分たちが無視するわけにはいかない力のある存在であることを徹底的に見せつけるというものだった。
 ストライキは、生徒や保護者、コミュニティーの人びとも加わって、組合員を倍する6万人に近いストライキ参加者で盛り上がり続けた。これに恐怖した学区当局は、ロサンゼルス市長エリック・ガルセッティの申し出を受け入れ、ストライキ4日目の17日に協約交渉を再開すると決定した。「私たち交渉団は、生徒、組合員、コミュニティーの人びとに利する合意を勝ち取るために、準備万端、粘り強く真剣に交渉に臨みます」と、交渉団のチーフであるアーリーン・イノウエは交渉に臨む決意を述べ、ストライキは新たな段階へと進んだ。
 ストライキ4日目、雨が降る中で各学校の前では教師と保護者や生徒が元気にピケットを張り、その後ロサンゼルス市街へとそれぞれの地域からデモ行進を進めた。正午から開始されたロサンゼルス統一学区との交渉が良い結果を出せるようにと、より高らかに、より力強く、UTLAの組合員たちは支援者と共に市街をデモ行進し、ロサンゼルスの街はストライキ参加者の赤色の服装姿で真っ赤に染まった。正午から開始されたロサンゼルス統一学区との交渉は12時間続いて、夜中の午前0時に終了し、翌日に持ち込まれた。

■「私たちは、歴史的な偉業を成し遂げようとしている」

 14日月曜日に開始された週の最終日を迎えた18日金曜日、組合員たちは支援のスト参加者と共に協約交渉が行われているロサンゼルス市庁舎の前に結集し、交渉団にエールを送る集会を開いた。この日はずっと雨模様だったストライキの4日間とは打って変わってすがすがしく晴れ渡り、結集が6万人をはるかに超える巨大なものとなった。
 6万人のスト参加者を前に、アレックス・カプートパール委員長が語る。
 「UTLA、みなさんは自分たちの力を実感していますか? みなさんはこの街を席巻したのです。行き交う車は連帯のクラクションを鳴らし、見ず知らずの人たちまでが食べ物を届けてくれ、メディアが私たちの話を聞いて記事を書き、世界中の人たちが注目しています。みなさんは今、歴史的な偉業を成し遂げようとしているのです」
 「公教育がこれほどまでに危機的な状況に陥ったことはありません。だから今、国民に私たちの状況を話さなくてはなりません。民営化政策が恣意的に公立学校を破壊しようとしているのです。ドナルド・トランプとベッツィー・デボスが民営化の旗振りをし、カリフォルニアの民主党がチャータースクール企業からの選挙資金欲しさに、50州中43位にまでカリフォルニアの教育資金を減らして、公教育の民営化を推進しようとしています。超大富豪のオースティン・ベアットナーやイーライ・ブロードが、ロサンゼルスの公教育に資金を送らず、飢えさせて民営化を図ろうとしているのです。今これを止めなければ、生徒たちは学校を失い、私たちは負けるのです。絶対に負けるわけにはいきません」
 「ストライキのこの5日間で、私たちはものすごく大きなことを成し遂げました。ボクシングで言えば、大富豪の民営化推進者たちに強力なブローを食らわせたところです。もっともっと強く、私たちは大声をあげなければなりません。市庁舎の中で頑張っている交渉団に、あと6万人の交渉メンバーがいると知らせるのです。彼らに私たちの声を届けましょう」
 「みなさんは本当にすばらしい。生徒たちよ、声を上げたことを誇りに思いなさい。保護者のみなさん、子どもたちのために闘っていることを誇りとしてください。教育労働者のみなさん、子どもたちのために果たしている役割を誇りに感じてください。みなさんの団結力を誇りとしてください。ストライキは私たちの誇りです。私たちは勝利します。みなさんを心から尊敬しています」

■勝ちとった合意は労働協約をはるかに超えるパラダイムシフトだ

 協約交渉は週末と翌祝日の3日間、早朝から夜中まで続けられた。ストライキ7日目の1月22日の朝に記者会見が開かれ、UTLAとLAUSDが協約交渉で合意に達したと発表された。暫定合意は全組合員に周知されて、すぐさま賛否の投票にかけられ、「スーパーマジョリティ(圧倒的多数)の組合員が合意に賛成した」とUTLAのホームページで報じた。「この合意はパラダイムシフト(=社会の規範や価値観が大きく変わること)であり、我々が協約闘争の目標とした要求を達成した」。22日の午後は、市庁舎前で大集会が行われ、教育労働者や保護者が結集して勝利の歓喜に沸いた。
 暫定合意の内容は、賃金の6%アップ、クラスの人数の削減、看護師や図書館司書の週5日フル勤務体制、フルタイムのカウンセラーを増やす、テストを50%削減するなど、この数十年で公教育が奪われてきたものを取り戻す大勝利だが、それ以上の社会的意義のあるものとなった。「チャータースクールを制限する手段をとる」とした協約の合意は、ストライキ終了後の1月29日の教育委員会のミーティングで、「カリフォルニア州に州調査を要求し、調査が完了するまでの8~10カ月の期間は学区内にチャータースクールの新設を禁止する」という決議を採択させた。この決議によりカリフォルニア州は、学区の公立学校がチャータースクールに充てられる資金によってどれほど影響を受けているかを調査することになり、『チャータースクール法』の見直しを迫られることになるだろうと、マスコミも報じている。「増え続けているチャータースクールを阻止するのが、UTLA執行部が掲げた中心的な課題であり、この決議が組合のさらなる勝利となった」
 このほかにも、『移民防衛基金』として、「LAUSDは専従の弁護士を雇い、移民家族のためのホットラインを設置し、UTLAと共同で取り組む」や、有色人種の生徒を管理するための「ランダムサーチ」という生徒管理システムを中止させるなど、コミュニティーに利する合意を多く勝ちとった。

(写真 ストライキ5日目、ロサンゼルス市街へと向かうデモの先頭に立つ小学生たち)

■勝利の要因は徹底した組織化と保護者やコミュニティーとの連帯

 「私たちのストライキは、4年半をかけてつくり上げてきたものです。組合員、保護者や生徒、コミュニティーの人びととの関係を深めて結びつきを強化し、組合としての組織構造やシステムを築き上げ、盤石なスタッフ体制も整えました。こうしたことが、ストライキを成功へと導いたのです」と、全国労組交流センター教労部会に届いたアーリーン・イノウエさんの手紙には書かれている。2014年にUTLAの執行部に当選したユニオンパワーは、900校あるロサンゼルスの公立学校を頻繁に訪れ、組合員と真摯な対話を繰り返して、公教育を立て直すにはどうしたらよいかを共有してきた。
 アレックス・カプートパール委員長が「どのように組織したのか」とインタビューで問われたとき、「オールドファッションの組織化です」と答えている。昨年8月のスト権投票で組合員の98%の賛成を得たが、「組合員の100%が賛成しなければ、ストライキに突入できない」と、その後はより一層の組織化に努め、同時に保護者やコミュニティーの説得にも力を注いだ。「ストライキのできる組合をつくる」という目標を掲げて、地道な組織化と、決して諦めないたゆまぬ努力で、UTLAは歴史的な大勝利を勝ちとったのだ。

■UTLAストライキ大勝利の波は全米に広がっていく

 コロラド州デンバーのデンバー教職員協会(DCTA)は、2月11日にストライキに突入し、協約交渉に勝利して3日間続いたストライキは終結した。
 ウェストバージニアの教育労働者は、2月19日、州の55郡中54郡のすべての学校を閉鎖し、公教育に敵対するオムニバス教育法案に反対してストライキを展開。数時間後には州の下院で53対45の反対で廃案(公式には無期限延期)となった。
 UTLAは、同じカリフォルニア州のオークランド教育協会(OEA)が2月21日に突入したストライキを支援し、22日早朝には各学校職場で連帯の支援行動を行った。オークランド教育委員会が、「5年以内に86校の公立学校のうちの24校を閉鎖する」という決議を圧倒的多数で可決し、民営化を推進する当局に強く反発。給与アップや学校資金増額を求める要求に加えて、ストライキの大きな要求項目となった。OEAのストライキは現在(2月23日)も続行中だ。