旭非正規職支会の第4次日本遠征闘争
旭非正規職支会の第4次日本遠征闘争
「AGC本社の責任で解雇を撤回し、希望者全員を職場に戻せ」と直接交渉を要求!
飯田 英貴(全国労組交流センター事務局長)
株主総会を直撃し、社長が争議の質問にも答える事態に!
3月25日から30日にかけて、韓国・金属労組亀尾(クミ)支部旭非正規職支会の仲間が第4次日本遠征闘争に立ち上がりました。今回来日したのはナムギウン首席副支会長、チャンミョンジュ調査統計部長、ソンドンジュ文化体育部長の3人です。私たち労組交流センターも、動労千葉と旭非正規職支会支援共闘会議、そして地域の合同労組の仲間たちとともに6日間にわたる遠征闘争をともに闘い抜きました。
闘争は、26日にAGC(旧旭硝子)本社に対し団体交渉に応じることなどを掲げて申し入れを行い、翌27日にはAGC京浜工場前と東京・丸の内で街頭宣伝を闘い、28日にAGC株主総会に対する宣伝行動に立ち上がり、29日に再度AGC本社への申し入れを行いました。中でも主要な目的は、今年2月15日に韓国・大邱司法検察庁金泉支庁が、(株)AGCファインテクノ韓国およびAGC本社から派遣されていた当時の代表取締役社長・原野たけしなどを不法派遣(派遣勤労者保護などに関する法律違反)の嫌疑で起訴したことに対し「AGC本社の責任で解雇を撤回し、希望者全員を職場に戻せ」と直接交渉を要求し、株主にも訴えることでした。
京浜工場前や丸の内での街頭宣伝の反応は良く、ビラの受け取りも良かったように思います。とりわけ、株主総会の会場前での宣伝が出席していた株主に届き、総会の中で争議についての質問が出て、社長が答えざるを得なかったということが後でわかりました。こうした闘いが効いたのか、当初高圧的な対応であった本社の総務部も、最終日29日の申し入れでは「お話は伺います」とこちら側の話を聞かざるを得ない状況に追い込まれていました。もちろんまだまだAGC本社の壁は厚いですが、団結を崩さず闘うことで必ず展望は開ける、そう希望の持てる闘いを共にやり抜けたのではないかと思います。
不当解雇から4年、23人の労働者が団結して闘っている!
AGC韓国法人「ファインテクノ韓国」の下請け業者で働く非正規労働者が低賃金と劣悪な労働条件に抗議し、138人で労働組合を立ち上げたのが2015年です。
AGCは低迷する業績を回復させるため、韓国では派遣が禁止されている工場の生産工程に社内下請けの派遣労働者たちを使いました。労働の実態は元請けのAGCが直接業務指示を行い、労働者を監督する典型的な「偽装派遣」です。賃金は正社員の半分、最低賃金ギリギリで土日も休めません。昼食時間はわずか20分。その間に食事もトイレもすませなくてはなりません。少しでもミスをすると、赤いチョッキを着せられて見せしめにさせられるという過酷な労働環境のもとで、人間らしく生きたいという一心で結成されたのが旭非正規職支会です。
しかし、労働組合結成1か月後にAGC韓国法人はメール一本で組合員も組合員でない者も178人全員を解雇。請負会社そのものを解散させました。
不当解雇から約4年。今も23人の解雇者が団結をして、178人全員の解雇撤回と希望者をAGCファインテクノ韓国で正社員として雇用することを求めて闘っています。
今回の共同闘争でどれだけ力を尽くせたか、AGC本社の厚い岩盤を打ち破れていないことについては悔しい思いでいっぱいです。しかし、一緒に闘ってみて、韓国の労働運動が切り開いている地平はとても大きいものであること、そして日本の労働運動の課題が見えてきた気がします。
AGCだけでなく、ホンダやパナソニックなど日本の名だたる大企業が偽装請負、偽装派遣を平然と行い、巨額の利益を上げてきました。労働組合を作ったり、仲間と共に声をあげたら即解雇。企業による不法行為が平然と行われ、韓国の青年労働者と同じように、日本の青年たちの多くも一生非正規職という生き方を強いられてきました。
今回、AGC本社は「韓国の別会社がしたことで、本社はコメントする立場にない」という対応で逃げています。しかし、AGCでは、人事発令は日本の本社が年末に一括発令を出すのが常識だそうです。さらに、韓国工場とは連結決算であり、韓国工場の利益はAGC本社が吸い上げているのです。旭非正規職支会の仲間の闘いは、この30年余りにわたって世界中に非正規労働者を大量に産み出してきた仕組みそのものに対する闘いであり、私たちが打ち破ろうとしている壁もまったく同じです。
日本では、国家ぐるみの不当労働行為であった国鉄分割・民営化がそうでした。国鉄がJRへと移行する際、民営化に反対した労働組合員1047名が不当に解雇されたにもかかわらず、「国鉄とJRは別。不当労働行為の責任はJRには及ばない」という論理が最高裁判決等により30年にわたって正当化されてきました。民営化の際に「いったん全員解雇・選別再雇用」という「国鉄方式」なるやり方が社会に蔓延(まんえん)し、労組破壊と非正規職化が一気に進んだのです。またここ数年、最高益を上げているJR東日本では、100%子会社でありJRからの業務委託費で経営の大半が成り立っているグループ会社(外注会社)でさえ、働く多くの労働者が最低賃金ギリギリの賃金で働かされているのが現状です。こうした現状を打ち破ることの中に日本の労働運動を力強く甦らせる道があるはずです。
韓国の検察を動かした力は旭非正規職支会の4年にわたる闘い
最後に強調したいことは、今回、韓国の検察をも動かした力は、旭非正規職支会の4年にわたる地道で激しい闘いの継続であろうということです。彼らは2016年には27日間の光化門高空断食籠城を闘い、17年には旭硝子の起訴を促す大邱検察庁前での6か月のテント籠城を闘っています。18年には、大邱検察庁ロビー占拠籠城を闘い11人が連行される大闘争を闘いました。23人もの解雇者が4年にわたって団結し続けることにどれほどの日々の努力が必要か。解雇を撤回させ、非正規職という非人間的なあり方をこの世から撤廃するためにどれだけの闘いが必要か。旭非正規職支会の闘いから学びたいと思います。
非正規職撤廃! 労働者が胸を張って人間らしく生きられる勝利の日まで、固く団結し闘うことを改めて誓います。トゥジェン!