4・12千葉県労働委員会審理拒否裁判(第2回)の報告

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0350号03/01)(2019/05/01)

4・12千葉県労働委員会審理拒否裁判(第2回)の報告

(写真 4・12千葉県労働委員会前で抗議行動)

「千葉県労働委員会の審理打ち切りは労働委員会規則違反」が明らかに!

片峯 潤一(動労総連合書記)

 4月12日、動労総連合1047名解雇撤回の千葉県労委審理拒否事件の第2回裁判が千葉地裁で行われました。この裁判は、国鉄分割・民営化の国家的不当労働行為の真実がすべて明らかになりながら、千葉県労委が審理を拒否して打ち切ったことに対する闘いです。

「審理拒否は違法」を暴く

 裁判では弁護団から重大な事実が突きつけられました。千葉県労委の村上公益委員の審理打ち切りは、明らかに労働委員会規則に違反していたのです。
 労働委員会規則によれば、開始された審査を途中で打ち切るためには、公益委員会議に諮る必要があります。2016年の規則改悪で「事実調べなしで命令を出せる」という条項が追加されましたが、それには条件があります。両者の主張が十分に出されて争点の整理が行われていること、主要な事実に争いがなく、事実の認定が簡単なことなどです。しかも、中央労働委員会から、事実調べをせずに終わらせることの意向を双方から聞いて、争点や証拠を整理せよと通達されているのです。
 千葉県労働委員会の場では、動労総連合から「JR不採用=解雇した基準そのものが不当労働行為であると最高裁で確定したこと」「その基準の策定を指示したのが、斉藤英四郎JR設立委員長だったこと」「作られた基準は第3回JR設立委員会で正式に決定されたこと」を主張していました。国鉄1047名の解雇は不当労働行為であり、その責任がJR自身にあることを完全に突き止めた上で労働委員会に持ち込んだのです。
 「JRに法的責任なし」とした03年最高裁判決でさえ、「設立委員会が不当労働行為を行った場合は別」と書かれています。設立委員会による不当労働行為について、事実を明らかにすることなく命令を出すことなどできるはずがありません。当時国鉄職員局次長で不採用基準による名簿からの排除を指示した葛西敬之JR東海名誉会長、その葛西の下で実務に直接携わった深澤祐二JR東日本社長などの尋問は絶対に必要です。

「団結権擁護」の役割を果たせ!

 しかし、村上公益委員は労働委員会の冒頭から、「最高裁判決に反した命令は出せない」と言い放ち、2回目の調査で突然審査の打ち切りを宣言しました。そして、「命令は10月か11月ころに郵送する」と通告してきたのです。
 JR側は、「使用者ではないから責任はない」という書面を一度出したきりで、労働委員会に出席さえしませんでした。最も重要な事実に主張の食い違いがあることは明らかです。
 審査打ち切りの判断が公益委員会議で諮られたものでないことは、千葉県労委自身が認めています。村上公益委員は、労働委員会として何が争点と捉えているかを口にすらしていません。事実調べを行わないことについて、組合側の意見を聞こうという姿勢さえありませんでした。
 そもそも労働委員会で審査が開始された以上、事実調べを行うのは当然の原則です。村上公益委員は、労働委員会規則を踏みにじってまで事実を明らかにすることを拒否したのです。本来、不当労働行為を救済するべき労働委員会が、国家的不当労働行為の真実を隠蔽し、政府とJRを救済するというのは決して許されない行為です。

団結権解体・労組解体の攻撃

 この闘いは、安倍政権による労働運動解体と「現代の産業報国会化」との闘いでもあります。労働委員会という、労働者の団結を擁護するための機関を解体する。それを通して、労働者の団結権そのものへの攻撃が行われています。JRにおける官邸と一体になった東労組解体―労組一掃の攻撃。関西生コン支部への共謀罪を先取りした度重なる大弾圧。この改憲情勢下における労組解体攻撃と軌を一にしたものです。
 そして、この時代に国鉄1047名解雇撤回闘争を続けさせるわけにはいかないという国家意思に貫かれた攻撃との闘いです。
 国鉄分割・民営化こそは、この30年にわたる労働者の権利と労働運動の後退の出発点でした。労組解体を通して改憲を実現するための攻撃でした。だからこそ、国家的不当労働行為の真実と、その責任がJRに直接及ぶことを突き止めたことは、すべての前提をひっくり返す意味があります。
 安倍政権が「2020年新憲法施行」を宣言し、「働き方改革」=労働大改悪に突き進む中、国鉄1047名解雇撤回闘争の意義はますます大きくなっています。千葉県労委の審理拒否を打ち破り、JRに解雇撤回・団交開催を強制しよう。

すべての真実を明らかにしろ!

 千葉県労委の審理拒否の違法性は完全に暴かれました。しかし、千葉地裁は「不当性について裁判で争うのは、最終的な命令が出てから」という形で訴訟を打ち切り、千葉県労委の救済を狙っています。それならば、県労委で公正な審査を受ける権利はどこへ行ってしまうのか。絶対に許すことはできません。
 千葉県労委が提出を拒否している労働委員会の録音データ提出をかちとり、審理拒否の違法性を立証しなければなりません。裁判闘争は決戦が続いています。
 そして、この闘いは大きな力を発揮しています。法律上は、現在の裁判の判決を待たず、労働委員会命令を出すこともできます。しかし、現在に至るまで千葉県労委は命令を出せないでいるのです。あまりにデタラメな審理拒否を追及して闘うことで、力関係を押し返しています。さらなる闘争の力で、千葉県労委に「審査打ち切り」撤回と、事実調べの実施を行わせよう。
 第3回期日は6月21日(金)11時~、千葉地裁601号法廷で行われます。裁判闘争への多くの方々の結集を呼びかけます。