新自由主義教育と対決しよう

2019年9月26日

月刊『労働運動』34頁(0354号04/01)(2019/09/01)

新自由主義教育と対決しよう

(写真 東京都23区の学校選択制と学校統廃合の実施状況)
(写真 東京都13市 の学校選択制と学校統廃合の実施状況(選択制導入年度順))

中田 一夫(動労千葉を支援する会事務局)

●はじめに
 「逃亡犯条例」改悪を発端とする香港の反乱は、相次ぐ労働者の6月100万人デモから若者の実力反乱に発展し、8月5日香港国際空港を実力占拠―ゼネストとして闘われている。5日のゼネストは、空港・金融・ITなど幅広い業種の労働者が闘いぬいている。そして青年の実力闘争を支持している。またこの日、朝の通勤ラッシュ時、若者がドアにカバンをはさむなどして開閉できなくし、一部が遅延するなど、公共交通機関に大きな影響を与えた。
 若者を先頭に200万人デモとして、なぜ拡大しているのか。実力闘争―ゼネストとして、なぜ爆発しているのか。6月100万人デモ前までは、その多くが「政治にはもともと関心がなかった」(香港バプテスト大学の鄭イ副教授)ことだ。若者たちが立ち上がったのは、100万人デモに対する香港警察の強制排除がきっかけだ。市民の側にも「自分の将来を犠牲にして闘ってくれる若者を応援しよう」という声が広がっている。7月1日立法会の庁舎を破壊し一時占拠した闘いについても「一定の暴力行為はやむを得ない」と支持する声も広がっている。
 その背景にあるのは、格差の拡大、貧困・総非正規職化である。新自由主義攻撃の極限的激化である。香港政府の「身内」ともいえる公務員が8月大きな抗議集会を開催した。公務員という中間層の非正規職化の進行であり、下層への没落である。この反乱は「逃亡犯条例」改悪をきっかけとした労働者人民の怒りが、新自由主義攻撃への全面的怒りとして政府打倒の闘いに発展している。

●三大労組破壊を乗り越える闘い

 1980年代に強行された、日本の中曽根による国鉄分割・民営化攻撃、イギリスのサッチャーによる炭鉱労働組合の破壊、アメリカのレーガンによるPATCO(連邦航空管制官労働組合)の全員解雇、これが世界の三大労組破壊であり、全世界の新自由主義化の突破口になった。
 アメリカでは、そのPATCO全員解雇を乗り越えて、歴史的な空港闘争が闘われ、トランプと支配階級を震え上がらせた。2019年1月25日、ニューヨークのラクアルディア空港の航空管制官が一斉に「病休」などで出勤せず、事実上のストライキに入り、空港閉鎖に追い込んだ。あの1981年のPATCO以来初めての管制官による空港閉鎖だ。レーガン政権のPATCO指導部逮捕、スト参加者全員解雇・ブラックリスト化で他職場への再就職も妨害、フードスタンプ(低所得者用の食料切符)受給も禁止という徹底した弾圧が、労働運動全体を威圧し、本格的な新自由主義への転換点となった(1987年の国鉄分割・民営化による国鉄労働者解雇・労働組合破壊・分断・みせしめも、日本における労働者支配の転換点だった)。
 だが今回、ラクアルディア空港の完全封鎖以外にも、他の空港が止められたが、トランプは空港管制官に手を出せなかった。

●アメリカ州内全校ストライキ続く

 そして、アメリカでは、2018年2月のウエストバージニア州の全校スト、今年1月のロサンゼルス統一教組ストと、大ストライキが続いた。
 ブッシュ政権は、NCLB(落ちこぼれゼロ法)を作り、全米的に学力テストを義務化し、それを学校評価・教員評価と結びつけて締め付けを図った。それは、教育労働者を政府・学校当局が直接攻撃するだけでなく、「公立学校・教員が落ちこぼれを作っている」という大宣伝によって全社会的な公立学校・教員バッシングを煽るものだった。
 オバマ政権は、新教育長官にアーニー・ダンカンを任命し、教育問題を最大の焦点にした。「トップに向かっての競争」(RTT)を掲げ、学力テストの点数と教育予算を直結させ、財政的しめあげによって、各地で閉校と教員解雇を桁違いに加速した。
 ロサンゼルスでは、オバマ政権発足の2009年から大量解雇が行われた。2010年にはロサンゼルスタイムズ紙が大々的な「教育改革キャンペーン」を行った。教員評価と勤務学校を実名入りで報道したことで、一人のUTLA組合員が自殺に追い込まれた。また多くの組合員が「教員監獄」に閉じ込められた。つまり、当局から目を付けられた組合員が、様々な口実による学校の出勤停止命令で職場から切り離され、学校当局の地域事務所に隔離させられた。解雇で生活の糧を奪われ、職場に残された組合員も人員不足で過重労働を強いられた上に、労働の誇りもずたずたにされた。
 だが、昨年のウエストバージニア州を先頭とした州内全校ストの爆発は、こうした公教育バッシング、教員バッシング、民営化・非正規職化・労組破壊に対する守勢を全米的に転換させた。力関係を逆転させる闘いとなった。
 アメリカ「州内全校スト」の背景は何か。
 アメリカ・レーガン政権から始まる新自由主義教育攻撃のシンボル的制度は、学校選択制である。それは、学区制の廃止、公設・民営のチャータースクール制、税金で子どもたちが私立学校に通えるよう支援するバウチャー制などである。
 現在、全米に広がる学校選択制は、競争原理を軸に各学校の競争力を上げようとするもので、各学校と家庭に排他的に競争を強いることで、教育システムを一大市場へと変えてしまった。そして、全校参加の統一テストなど、点数に基づく画一的な評価の下で選択制を行うため、学校の序列化が起きる。地域や家庭の様々な環境の違いが競争に反映され、格差を再生産する結果となった。この新自由主義攻撃、貧富の差の拡大、社会の崩壊。地域崩壊、教育の崩壊こそ「州内全校スト」の背景である。

●戦後教育解体攻撃との闘い

 日本の教育はどうなっているか。今、日本の教育は、戦後最大の危機を迎えている。
 それは、戦後教育の全面的解体攻撃として襲いかかっているからである。一つ目は、教育基本法である。2006年自民党安倍政権は、教育基本法の全面改悪を強行した。二つ目は、6・3・3制学校体系である。この解体攻撃が新自由主義教育攻撃の焦点となっている。三つ目は、日教組の解体攻撃である。この三つの攻撃は、改憲・戦争攻撃と一体で、新自由主義教育攻撃として襲いかかっているのだ。
 日本における新自由主義教育攻撃は、1983年の臨時教育審議会の中で「教育の自由化論」(香山健一委員・学習院大学教授)として公表された。実際に改革は1990年代半ば以降、具体化されていった。
 しかし、ここで打ち出されたことは重大だった。一つは、1987年に強行された国鉄分割・民営化と一体だった。二つは、日教組解体―連合化攻撃としてかけられた。当時の中曽根政権は、日教組に対してこれまでの「臨教審反対」から「協力」への転換を迫った。日教組を二分する大論議となり、何回も機関会議を開催し、最終的に路線転換を強行した。臨教審に「反対」から「参加・提言・改革」路線への転換である。この路線の転換こそ新自由主義教育攻撃の始まりであった。

●「新時代の『日本的経営』から始まった

 資本家階級が初めて新自由主義教育を提起したのは、1995年日経連「新時代の『日本的経営』」であった。これは、日本型一括採用の終身雇用制、年功序列賃金を全面的に解体して3類型にし、終身雇用の「長期蓄積能力活用型グループ」、そして高度技術者の「高度専門能力活用型」、さらに使い捨てに近い「雇用柔軟型グループ」(全労働力90%を総非正規職化)に移行すべきという提起である。これは、戦後労働法制の全面的解体であり、総非正規職化である。安倍政権が強行してきている「働き方改革」である。
 戦後教育には、全ての生徒の学力を平等に底上げしていくことが教育の公平性であり、6・3・3の単線型学校体系による教育の機会均等原則を実現するのが公教育制度であるという認識が存在していた。
 1996年東京都足立区で、日本で初めて実質的な学校選択制が導入された。そして1998年に学校教育法が改悪され、公立中高一貫校が法制化された。2000年「教育改革国民会議」による「17の提案」は新自由主義教育と国家主義が一体となったものであった。学校選択制、習熟度別学習、道徳教育、奉仕活動など。
 そして、2000年から2007年の全国学力テスト導入まで、東京は石原都知事の下で、新自由主義教育の日本における実験台でもあった。「東京から全国へ」の合言葉の下で始まった。

●東京から全国へ

 学校選択制が東京、埼玉で拡大し、2003年に荒川区が全国で初めて小1~中3を対象とした一斉学力テストを開始した。結局07年まで東京都23区中19区、26市中9市が選択制、14区が独自の学力テストを導入することになった。都自体も04年度から学力テストを導入し、自治体順位を公表した。足立区など順位が下位の自治体では、テスト対策と称して夏期休暇中の補習や学校二学期制などが導入された。
 学校選択制は首都圏以外で拡大しなかった。東京の学力テストは、2007年の全国学力テスト実施の呼び水となった。1999年石原都知事が登場し、新自由主義教育攻撃―学校選択制・学力テストなどの攻撃をエスカレートして、東京教組、都教組、都高教、都労連を解体しようとした。
 同時に、石原都知事は2003年「10・23通達」(「国旗」掲揚、「国歌」斉唱の強制と懲戒処分攻撃)を発表した。これは石原都政が東京教組、都教組、都高教、都労連解体の全面決戦に突入したということである。

●卒・入学式を激変させた「10・23通達」

 2003年石原都知事―東京都教育委員会は、都立学校の各校長宛に「入学式卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」と「実施指針」を発した。
 「学習指導要項に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること」「教職員が……職務命令に従わない場合は、服務上の責任が問われる」と、処分すると宣言している。
 「実施方針」は「国旗の掲揚」「国歌の斉唱」「会場設営」の三項目からなっている。
 この「『日の丸・君が代』戒厳令」とも呼ばれる2004年春の卒業式・入学式で、すべての学校で教職員が「日の丸・君が代」強制に反対した。その中であらゆる脅しを突き破って、都立高校の教職員を先頭に数百人の教育労働者が勇気ある行動を起こした。
 式当日は、各学校に都職員が数人ずつ派遣された。教職員の動向を背後から監視するためである。そして「君が代」斉唱が始まり、起立しなかった職員がいると、教頭が近づいてきて「立って下さい」と声をかけて強制した。ある学校では着席しているところをビデオで撮影された。
 このような中で、多くの教育労働者が自らの信念をかけて不起立を貫いた。生徒も自ら「日の丸・君代が」強制に反対する行動を行い、卒業生の9割が起立を拒否した学校など多くの抗議行動が行われた。

●都高教組合員を先頭に不起立闘争

 都教委は、卒・入学式で起立しなかったことを理由に教職員248人を処分した。不起立した教職員は、この数よりも圧倒的に多かった。この248人は、都教委の予想をはるかに超える数だった。都教委は、数十人の処分で終わりにできると思っていた。この闘いで、新自由主義と10・23通達を打ち破ってしまったのである。そして、石原都知事の狙いであった「東京から全国へ」を破綻に追い込んだ。「5年先、10年先になったら首をすくめて見ている他県は、みんな、東京のまねをすることになるであろう。それが東京から日本を変えることになると私は信じている」(2004年4月石原発言)。
 東京から国政を変えるのが石原の狙いだった。その具体的攻撃が「10・23通達」であり、学校選択制であり、学力テストであった。
 今振り返ってみると、2003年の石原都政の「10・23通達」攻撃とそれに反撃する闘いとしての2004年の卒・入学式における都高教組合員を中心とする教育労働者の不屈の不起立闘争、その闘いに追い詰められた都教委の248人の処分攻撃との闘い、この攻防はいまだに決着がついていない。東京の教育労働者は、処分攻撃に対する裁判闘争を含めて現在も闘いぬいている。
 そして、この石原の「10・23通達」と一体となった文部省是正指導なる「日の丸・君が代」強制と大量処分と闘いぬいてきた広島の100人を超える教育労働者は、ついに「改憲・戦争阻止!教え子を再び戦場に送らない!広島教職員100人声明」を全国に発した。8月5日、「広島100人声明」よびかけで、広島で教育労働者集会を開催した。そして今、全国各地で「改憲・戦争阻止!教え子を再び戦場に送らない!職員100人声明」運動が広がっている。

●改憲・戦争と闘う教育労働者運動

 石原都知事の「東京から全国へ」の破綻、「10・23通達」への大反撃の中で、第一次安倍政権から民主党への政権交替の時期、新自由主義教育攻撃は挫折・停滞する。東京では、江東区の学校選択制は廃止に追い込まれた。それに続いて、前橋市、長崎市、杉並区などで廃止になった(2012年)。
 全国的に見ても、学校選択制は、2005年から2007年をピークに
その後減少していく。それは、学校選択制による統廃合から、小中一貫校制度を利用した統廃合への移行時期と重なっている。2007年全国学力テストの開始後、東京都および都下の区市レベルの学力テストは実施されなかった。2008年から2012年まで東京では、新自由主義教育は停滞した。
 2012年10月第二次安倍政権が登場し、「経済再生と教育再生」の二つを最重要政策に掲げた。教育再生は、教育再生実行本部を設置して新たな新自由主義教育攻撃をかけてきている。それは改憲攻撃であり、「戦争のできる国家」への転換である。「戦争のできる国家改造」攻撃である。これこそ中曽根が国鉄分割・民営化にかけた「戦後政治の総決算」攻撃である。
 教育労働者は、「改憲・戦争阻止!大行進」運動の先頭に立とう。

○教育基本法の再改悪絶対反対で闘おう!
○学習指導要領改悪と闘おう!
○平和教育つぶしと闘おう!
○小中一貫校を使った学校統廃合反対!
○広島教職員100人声明運動を支持して共に闘おう!

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2003年に都教委が出した「10・23通達」

○入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について

平成15年10月23日
15教指企第569号

 都立高等学校長
 都立盲・ろう・養護学校長

 東京都教育委員会は、児童・生徒に国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てるために、学習指導要領に基づき入学式及び卒業式を適正に実施するよう各学校を指導してきた。
 これにより、平成12年度卒業式から、すべての都立高等学校及び都立盲・ろう・養護学校で国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されているが、その実施態様には様々な課題がある。このため、各学校は、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について、より一層の改善・充実を図る必要がある。
 ついては、下記により、各学校が入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するよう通達する。
 なお、「入学式及び卒業式における国旗掲揚及び国歌斉唱の指導について」(平成11年10月19日付11教指高第203号、平成11年10月19日付11教指心第63号)並びに「入学式及び卒業式などにおける国旗掲揚及び国歌斉唱の指導の徹底について」(平成10年11月20日付10教指高第161号)は、平成15年10月22日限り廃止する。

 記

1 学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること。

2 入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」のとおり行うものとすること。

3 国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること。

別紙

 入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針

1 国旗の掲揚について

 入学式、卒業式等における国旗の取扱いは、次のとおりとする。
(1) 国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する。
(2) 国旗とともに都旗を併せて掲揚する。この場合、国旗にあっては舞台壇上正面に向かって左、都旗にあっては右に掲揚する。
(3) 屋外における国旗の掲揚については、掲揚塔、校門、玄関等、国旗の掲揚状況が児童・生徒、保護者その他来校者が十分認知できる場所に掲揚する。
(4) 国旗を掲揚する時間は、式典当日の児童・生徒の始業時刻から終業時刻とする。

2 国歌の斉唱について

 入学式、卒業式等における国歌の取扱いは、次のとおりとする。
(1) 式次第には、「国歌斉唱」と記載する。
(2) 国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、「国歌斉唱」と発声し、起立を促す。
(3) 式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。
(4) 国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う。

3 会場設営等について

 入学式、卒業式等における会場設営等は、次のとおりとする。
(1) 卒業式を体育館で実施する場合には、舞台壇上に演台を置き、卒業証書を授与する。
(2) 卒業式をその他の会場で行う場合には、会場の正面に演台を置き、卒業証書を授与する。
(3) 入学式、卒業式等における式典会場は、児童・生徒が正面を向いて着席するように設営する。
(4) 入学式、卒業式等における教職員の服装は、厳粛かつ清新な雰囲気の中で行われる式典にふさわしいものとする。