「変形労働時間制」に現場の怒りが噴出! 県教委と市教委に反対の申し入れ

『月刊労働運動』2020 年2月号掲載

日教組香川発行の2020年1月号を見て驚いた。超長時間労働の問題について「給特法改正」「業務削減」「人員増」の「3つの矢」を放ってきたとの委員長の新春メッセージが掲載されている。さらにその記事によれば、「『一年単位の変形労働時間制』が教育職員に適用可能となりました」と、教員の9割以上が反対している「変形労働時間制の導入」について、彼らの「運動の成果だ」と言うのである。彼らは、昨年11月下旬に「給特法改正」を前提として県教育長と話し合い、「改正」を前提として「導入は労使協議で行う」との回答を引き出した。それは国鉄分割・民営化時の「労使共同宣言」そのものではないか!
本当に許せない。「国鉄の次は教育だ」と言われてきたが、「労組」を先兵にして「労組なき社会」をつくる攻撃が本格的に開始された。「変形労働時間制の導入」は8時間労働の解体でり、労働者が血と汗と涙で闘いとってきた基本的権利を自ら手放すものだ! 歴史への裏切りである! 「導入されても今と同じ」「休みが増える」などという代物では断じてない!

「憲法の実体は労働組合だ」と動労千葉の中野洋前顧問は言っていた。憲法は「戦争放棄」と共に、労基法と教基法がその柱となっている。教基法が改悪され、会計年度任用制と変形労働時間制によって労基法は解体寸前のところにまできている。
私たちはどうするか。口先だけできれいごとを言い、嵐が過ぎるまで「タコ壺」に入っているのか。日教組香川幹部を批判して、何かをしたことにするのか。批判とは何か。自ら実践の中に身を投じることなく評論するのが批判か。断じて否である。
使用者側が「労組なき社会」と言うなら、我々の回答は鮮明である。労組を建設すること、日教組を甦らせることである。第一次勤評闘争を描いた「人間の壁」(石川達三)の中に「闘わない者は負ける」とあるが、本気になって闘えば必ず一緒に闘う仲間ができる! 絶対だ!

三浦半島教組の反戦デモ、それを引き継いだ広島の改憲戦争阻止100人声明、日教組奈良市の非正規職撤廃の闘いを見れば一目瞭然! なによりも星野文昭さんや動労千葉の闘い、韓国・香港・フランスなど全国全世界の闘いは、私たちに力を与え、闘いの意思・意欲、教訓と方針を与えてくれる。私たちの内側から、エネルギーと力が自然と湧き上がってくるのだ。
香川でも、一昨年開催された星野全国集会に多くの仲間が来てくれた。星野絵画展にも毎回、仲間がたくさん来てくれる。星野文昭さんの精神を継承しようとして、絵画と詩に触れようとするのだ。改憲・戦争の危機に対して「教え子を再び戦場に送らない」意思を表明すべく、香川でも広島に続いて「改憲・戦争阻止!教え子を再び戦場に送らない!100人声明」を達成、オスプレイ反対闘争などを通して200人に向けて奮闘中だ。

変形労働時間制反対に決起! 香川県教委に申し入れ

それを引き継ぎ発展させるものとして「変形労働時間制の導入反対」の闘いとなった。
職場で、隣や前後の人とずいぶん話した。今まで話し込むことがなかった人とも話をした。「いま『働き方改革』で長時間労働が解決できなかったら、自分たちの定年まで良くなることはない。」「部活動は業務なのか」「教員は残業代が出ないので『裁量労働制』だろう」「寝る時間以外は職場、これが一生続くのか」「フィクションと現実の区別がつかなくなってきている」「家族問題、連日発生!」「組合は口先だけで反対ばっかり」等々。たくさんの意見が出てくる。激論を交わし、しばらく口をきかなかった同僚もいた。しかし、給特法改悪=変形労働時間制の導入を話すと、みんな驚くと同時に、信じられない様子。きちんと伝えると「絶対反対!」「本当に文科省はそんなことを考えているの」「政治家や文科省の役人は現場のことなど全くわかってない」「子どもを迎えに行く人や通院する人はどうするの」「もう、ほんとにやっとれん」等、意見と積もり積もった怒りが噴出。組合がどう見られているかも思い知った。
休日出勤で、生徒の試合の引率。昼休みに引率者が食事をしている時、変形労働時間制の導入の話をした。反応はやはり激烈! 「仕事が減らないのに休みなどとれない」「文科の役人は簡単な算数さえできないのか」「香港みたいにやらなければいけない」。

これに応えるために「闘いの先頭に立ち、できることは何だってやる」との決意表明をする羽目となってしまった。これは本当に気持ちの引き締まる決意表明ではあったが、胸躍る時代の到来なのだ! これまでにないチャンスなのだ! 多くの人たちが「世直し」を望み、一縷の期待をいまだ労働組合にかけているのだ! 本当に望むところではないか!
仲間と相談し、激論もありながら、「いまの私たちには耳目さえ集まっていないのだから、思いつくことはすべてやろう!」ということになった。
県教委と市町教委への申し入れ(県下3分の2は終わった)、県人事委への申し入れと勧告の要請、それを報告するビラの作成、そのための議論、そしてビラの配布と討論。署名運動の開始と呼びかけ人への呼びかけなど、思いつくことを具体的に開始した。行動を開始すると、たくさんのことが実際にわかってくる。自らが身をもって示すこと、行動で実践することが、一番簡単で説得力のある方法だ!

闘い全体の組み立てと個々の職場の計画的な闘いの構想と実践。これがうまくいくと署名などは自分が考えていたよりも進んでいく。闘う体制作り、任務分担の必要、労働組合建設の0から1という最も大変なところを研究し、先人から学ぶ必要もある。どのように発展しどこで困難が待ち受けているのか。
もちろん、すべては実践のためにである。わからないことは「見る前に飛べ」だ。失敗したら、失敗したと身に刻んで結論づけることができる。これがないと同じ失敗を何度も繰り返す。実践あるのみだ。そのために討論する経験も深めていきたい。議論がきれいごとにしかならないことも多い。相互批判なしには人間は成長などしない。
しかし、教員の9割が反対している「変形労働時間制の導入」を「成果」とみなすような「労組」には、もはや一刻も労働組合を名乗らせたくもない。
関西生コン支部のいう「ひとの痛みは自分の痛み」と言える労働組合、「世直し」をすることができる労働組合、日教組をそんな労働組合として甦らせることができる時代になってきたし、その手応えを感じ、「生きている」としみじみ思う。団結してこの時代をともに人間らしく生き抜きましょう!

高橋 敦(香川・教育労働者)

教労

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