コロナ恐慌下、命を守るために職場から闘おう! 今こそ労働組合の出番だ!

国際保健機関(WHO)は3月24日、「パンデミックが加速している」と警鐘を鳴らした。すでにこの時点で、新型コロナウイルス感染症は174の国・地域で36万人以上の感染者を数え、死者は1万6千人を超えた。「医療崩壊」と言われているイタリア一国で死者は6千人を超えている。
体制存亡の危機を前に、各国首脳たちは「国家非常事態」を宣言し、「これは戦争だ」という恫喝であらゆる活動をストップさせた。
だが、階級闘争に休戦などありえない。今こそ、労働組合が先頭に立ち、命と生活を守る要求を掲げ、全世界の労働者と連帯して、この腐りきった新自由主義社会を根底から変革するために闘うときだ。

新型コロナで世界が一変!

新型肺炎の感染拡大を引き金にした空前の世界株価大暴落が世界経済を激震させている。2008年リーマン恐慌は中国の4兆元もの財政投入と巨大市場によってかろうじて生き延びたが、その中国が新型コロナの震源地となって経済の大失速に見舞われている。今やリーマン恐慌を超えるコロナ恐慌(世界大恐慌)は不可避だ。
だからこそ、各国政府は先を競うように「緊急事態宣言」を出して、労働者が集まること自体を禁止し、闘いを圧殺しようとしている。「感染拡大防止のため」は一面でしかない。
その真の狙いは労働者の闘いを押さえ込むことだ。フランスの黄色いベスト運動をはじめ、欧州各国で労働組合のストライキ、民衆の闘いは新自由主義政府を追い込んでいた。なにより、アメリカでも反トランプの闘いが燃え上がっていた。こうした労働者民衆の生きるための闘いを「コロナ非常事態宣言」で叩きつぶそうとしているのだ。
とりわけ安倍政権は、大銀行と大企業の救済、「東京オリンピックの予定通りの開催」を一切に優先させ、検査の拡充をはじめ医療体制の強化や失業・休業補償といった最低限の措置さえ放棄し、「オリンピック延期」を契機に、憲法破棄の「緊急事態発動」へ突き進もうとしている。小池都知事は「ロックダウン」(首都封鎖)の恫喝で「欲しがりません、勝つまでは」の世界に労働者を引きずり込もうとしている。
新型コロナの感染拡大を口実とした一切の生活破壊、権利侵害を許してはならない。解雇や派遣切りをめぐる闘い、休業補償をめぐる闘い、労働安全衛生をめぐる闘い、コロナ対策を理由とした長時間労働との闘い等、職場には闘う課題が山ほどある。この闘いは一人でも充分闘える。「命と生活を守る」この一点で、新たな団結は必ずつくれる。今こそ、全国労働組合交流センターの出番だ。

現実を変えられるのは労働組合

最大の犠牲者を出しているイタリアでは、医療崩壊という現実の中でも医療労働者は懸命に闘っている。医療労働者とそれを支援する労働者が諦めたら社会は崩壊してしまう。そもそも医療崩壊は、緊縮財政下で、過去5年間に760もの医療機関を閉鎖し、医師5万6千人、看護師5万人以上を解雇したイタリア政府が作り出したものだ。
日本で新型コロナ感染者を治療している病院の9割は公立・公的病院だ。ところがこの公立・公的病院424病院に対して、効率化を進めろ、ベッド数を削減しろと安倍は迫っている。感染症指定病院である都立病院でさえ、マスクは一人一日一枚というこの現実! 都立病院の全面民営化(地方独法化)を許したら、本当に命を奪われてしまう。
政府がいくら「中小企業への融資を最優先」と叫んでも、融資(借金だ!)の相談に一か月も待たされたら、その間に倒産してしまう。「黙っていたら、安倍や小池に殺される!」。こうした声が、今や巷に溢れている。
休業補償も、労働安全衛生も、長時間労働の解消も、労働者が団結して闘わなければかちとれない。労働者に責任のない休業については正規・非正規問わず10割を補償せよ。会社には労働安全衛生を守る義務がある。マスク・消毒薬など直ちに支給せよ。職場で倒れないために十分な人員を確保しろ。とりわけ、非正規労働者に対する派遣切り・雇い止めを絶対に許すな。今こそ非正規職撤廃、あらゆる差別・分断を許さず闘おう。
この危機をのりこえ、あらゆる矛盾を解決できるのは、全世界の労働者の団結以外にない。資本主義と非妥協的に対決する労働組合がすべての責任を担って登場しよう。

世界の労働者と共に大反撃へ

すでに世界中の労働者がこの情勢に対して新たな闘いに踏み出している。
2月の香港医療労働者のストライキ、3月10日の民主労総の「コロナ19対政府要求」の発表に続き、3月16日には韓国・民主労総と香港職工会連盟が共同声明を発表した。韓国・香港両政府に
10項目の要求を突きつけ、すべての労働者の生命と生活を守るあらゆる手段をつくすことを要請するとともに、労働組合と定期的に協議するよう要求した。労働組合こそ社会の主人公であり、責任をとれる唯一の主体であるという表明だ。
さらに3月、イタリアの労働者はストライキに立ち、緊縮政策による医療・福祉の民営化、医療設備の縮小を弾劾、「安全のないところでわれわれは働かない! われわれは、屠殺を待つ家畜ではない!」と訴えた。
アメリカではUTLA(ロサンゼルス統一教組)が、3月12日に声明を発表、ロサンゼルスの全労働者への生活保障を具体的に要求するとともに、トランプと闘う姿勢を改めて鮮明にさせた。
全世界で労働者は、たとえいったんは自粛を強制されても、「非常事態宣言」を打ち破り、労働組合を武器に必ず立ち上がる。腰をすえ、職場から具体的要求を掲げた闘いが決定的になる。新自由主義を終わらせよう。搾取と抑圧の鉄鎖を断ち切り、全世界を獲得するときだ。万国の労働者が、今こそ団結する時だ。

久保田 真(医療福祉労働者部会事務局) 『月刊労働運動』4月号掲載