産別・戦線の闘い第5回 教育労働者の闘い 教育版「生産性向上」政策を許すな

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0334号04/01)(2018/01/01)

産別・戦線の闘い第5回 教育労働者の闘い 教育版「生産性向上」政策を許すな

産別・戦線の闘い 第5回

教育労働者の闘い

―教育版「生産性向上」政策を許すな 東京労組交流センター教育労働者部会

「学校における働き方改革」は、改憲攻撃と一体の団結破壊攻撃だ!

教育、自治体、郵政、医療など各産別の闘い、及び「労働者階級と諸戦線の闘い」を掲載しています。

●「学校における働き方改革」は、教育版「生産性向上」政策

 公立中学校教諭の7割弱が「過労死ライン」(都教育庁の「教員勤務実態調査」11月9日発表)。文科省「教員勤務実態調査」(2016年度速報)においても中学教諭の57・6%が月80時間の残業。これが今の学校現場の実態だ。
 日本の教員の過重労働が国際問題にもなっている中で、文科省は6月中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」を設置し、12月12日「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」を発表した。その中味は長時間勤務の是正をうたいながら、核心は新自由主義教育政策を現場に推進させることを目的とするものであり、教育労働者への「生産性向上」攻撃だ。まずこの点を徹底的に弾劾しなければならない。

●「効率化」をうたい、学校と教育、教育労働の協働性を破壊

 安倍政権は成長戦略の破産の中で、最後の延命策として「一億総活躍」と「生産性向上」のために「働き方改革」を位置づけている。そして、6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2017」は、副題を「人材への投資を通じた生産性向上」とし、「世界トップレベルの学力達成…に向け、新学習指導要領の円滑な実施のための体制を整備、…教員の厳しい勤務実態を踏まえ、適正な勤務時間管理や業務の効率化・精選…処遇の見直しの検討を通じ、長時間勤務の状況を早急に是正」としている。これを受けての「学校における働き方改革」なのである。
 「中間まとめ」は、「働き方改革」の背景・意義を、「社会、経済の変化」で「学校が抱える課題」の「複雑化・多様化」によって看過出来ない教員の勤務実態があるとし、「長時間化の要因」を、主に「部活」や事務作業、「問題を抱えた児童・生徒や保護者への対応」においている。そして「働き方改革」の視点を「①学校及び教師が担う業務の明確化・適正化、②学校の組織運営体制の在り方の見直し、③勤務時間の在り方に関する意識改革と制度面の検討」としている。その上で、「負担軽減可能な業務」として、「部活には外部人材を」「学習評価や成績処理における補助的業務はサポートスタッフ」「学校行事の準備・運営に、民間委託」「進路指導に民間企業経験者」「支援が必要な児童生徒・家庭への対応はスクールカウンセラー(SC)やスクールソーシャルワーカー(SSW)等の専門スタッフ」が「効果的」としているのだ。「業務の役割分担・適正化を実行するため」国や教育委員会に、「チーム学校」や事務の共同実施、統合型校務支援システムの導入、ICT活用や教材の共有化・共通化、学校運営協議会やコミュニティー・スクールの推進、さらには福祉部局や警察関係機関との連携と。

●長時間勤務の元凶・新自由主義攻撃と闘おう

 教育をバラバラに分解し、子どもを選別分断、教育労働者の協働性を破壊し、国家と教委による管理強化と教育の画一化、学校の民営化と非正規職化攻撃に他ならない。新自由主義攻撃と闘うことが求められている。
 そもそも教育労働者の極限的な過重労働は新自由主義が生み出したもである。「学校と子どもを取り巻く環境の複雑化・多様化」は、非正規職化による労働者の生活と家族の破壊に原因がある。教育財政の削減は、授業時数を増加させながら定数増を行わず、教育労働者の非正規職化を進めた。学力テストや評価制度の導入、教員免許更新制は、競争と分断に拍車をかけた。主幹導入など管理強化は職場の協働性を奪い、自己責任と教職員の負担を増加させてきた。
 長時間勤務解消には何が必要か。「全国学力テストを廃止することだ」「競争を煽り課題を自己責任にする評価制度をやめろ」「無意味な官制研修や公開授業で仕事を増やすな」「現場の自主性と協働を取り戻そう」。これが現場の声だ。現場で闘いを組織しよう。

●教育労働者こそが戦争・改憲阻止の先頭に起とう!

 1980年代中曽根の臨教審を切っ先に、国鉄分割・民営化と一体で始まった新自由主義教育改革攻撃は、動労千葉の30年間の国鉄闘争によって現場への推進は頓挫している。その中で、資本主義・帝国主義体制の破産に喘ぐ安倍政権は、「戦後レジームからの脱却」の核心に教育を据え「教育改革」に踏み込んでいる。その軸は、教育労働者の分断、労働運動、教組運動の解体にある。とりわけ東京都は安倍の先を行く石原都政の「日の君」攻撃、主幹導入による管理強化で日教組つぶし攻撃が全国に先駆けて強行された。
 教育労働者の極限的労働実態は教組運動の弱体化の結果でもある。教育労働運動の復権こそが問われている。それは絶対に可能だ。11月に出された都の「学校における働き方改革推進プラン」に書かれた「週あたり在校時間が60時間を超える教員をゼロにする」や「教員一人一人が…働き方の見直しに向けた意識改革」のスローガンに、現場は「ふざけるな!」と怒りをたぎらせている。
 戦争に突き進む安倍にとって、「教え子を戦場に送るな」を原点に教育労働者としての誇りを守りきっている教組の破壊は第一級の宿願なのだ。「人づくり革命」も「働き方改革」も改憲攻撃と一体だ。職場から怒りを束ね、闘いを組織していこう。

私の職場,連載0334

Posted by kc-master