岸田政権、中国侵略戦争・大軍拡に! インフレ・円安を無視した経済運営「骨太 22 」

NATO首脳会談に初参加

岸田政権は、バイデン来日・日米共同声明(5月末)を通して、ウクライナ戦争への参戦と中国侵略戦争への踏み切り・大軍拡の態度を打ち出した。NATO並みの防衛費2%への倍増をもって、「日米同盟の対処力」を高めることを国際公約にしたのである。クアッドやIPEF(アイペフ・インド太平洋経済枠組み)、また米韓首脳会談も併せて、日米同盟を中心に東アジアは、世界戦争の主舞台になっている。
岸田政権は、ウクライナ戦争をテコに「中ロ連合」を権威主義体制としてやり玉にあげ、「国の方針」として「帝国主義の世界戦争陣形の先頭に立つ」ことを、後戻りできない形で表明した。NATO首脳会議への参加はそれをさらに進める。

日米同盟強化・対中侵略戦争に反対する闘いを

岸田政権は今、対中侵略戦争体制・インド太平洋戦争へ向け、参議院選に勝利して、国内政治決戦をクリアしようと全力を挙げている。
「政治決戦のクリア」とは、立憲・共産など野党勢力や連合を取り込み、同時に、安倍派と維新をも押さえ込んで、岸田主導の軍拡と改憲の体制をつくることだ。しかし、岸田政権は、安倍派と維新の「数=力」に依存した政権であることが一段と明白になるだろう。
立憲民主党と共産党は、ウクライナ戦争情勢に度肝を抜かれ、政府・自民党と一緒になって、ゼレンスキー支持の態度表明を行い、岸田政権が日米同盟=安保を強化して中国侵略戦争とウクライナ戦争を一体で推進するという態度に出たことに全く対決できなかった。
日米同盟で「中ロ連合」との戦争へ踏み切る歴史的転換に実質的に賛成したため、経済政策やいわゆる「暮らし」の面でも政府に対してまともな対決や批判ができない状態に陥った。それが今度の参院選の特徴だ。
共産党が、「戦争(日本有事)になったら自衛隊を支持して頑張る」などと言いだしているのは、見るも無残な姿だ。台湾有事や対中国侵略戦争を仕掛けようとしているのは、米帝と日帝なのだ。そこがはっきり言えないと、「先制的敵基地攻撃」論にも屈服していくことになる。
日本の労働運動、反戦闘争は正念場だ。このままでは戦前の産業報国会や大政翼賛運動と同じ状態に陥りかねない。危機感をもって、階級的労働運動の発展のために知恵をつくし、体をはって起ち上がっていく時だ。

戦争に向かう経済運営、労働者の暮らしは無視

参議院選挙に向かって、岸田政権は、「骨太方針22」と呼ばれる「経済財政運営と改革の基本方針2022」を出した。これには「新しい資本主義へ~課題解決を成長のエンジンに変え、持続可能な経済を実現~」というタイトルが付いている。
岸田政権の看板である「新しい資本主義」論の全体像を打ち出しながら、23年度の国の予算に向かう考え方をあわせて明確にしていこうというものだが、これが、日米共同声明での対外公約(中国侵略戦争のための軍拡)を実現するために、論理破綻を開き直った作文になっている。軍拡が持続可能な経済をつくるとでもいうのか? 「骨太22」は、岸田政権の動揺と破産、本質的グラグラ性をはっきり示している文書である。こんな政府と支配階級を倒すことは可能だ。そういう立場で何点か特徴を確認していきたい。
第一に、「新しい資本主義」論が、①人への投資、②科学技術への投資として打ち出されている。AI万能の科学技術による経済成長論だ。当初の「分配と成長の好循環」という話は消えてしまった。日本経済の「実質賃金低下」体質と向き合うことからは逃げまくっている。
ハイテク技術のために「官民協力で新しい計画的な重点投資を推進する」ということが繰り返される。これが成長論のすべてだ。
労働者も株主になって投資で稼げるようにするとして、資産所得倍増の提案が書かれている。社会保障財源が厳しいので、現役の労働者は、NISA(ニーサ:株などへの投資の利益を非課税にし積み立てもできる制度)やiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金=自分年金)という手段で、将来に備えなさいというわけだ。
岸田は最初、株主中心の新自由主義の破綻を何とかしなければいけないと言っていたはずだが、今では、「新しい資本主義も資本主義、資本主義を守ることが大事」と開き直っている。
岸田の「成長論」は、軍拡に集約される。

戦争国家化へ畳みかける攻撃

第二に、「内外の環境変化への対応」(第三章)として、外交・安全保障の強化をうたい、「防衛力を5年以内に抜本的に強化」と明言した。「経済安全保障推進法の着実な施行」も確認している。ここは、対中侵略戦争に舵を切った以上、動揺せずに軍拡・戦争国家化を貫徹するという意味だ。ここで脱炭素にかこつけて、「原発推進、小型原発や核融合炉を日米共同で開発する」と確認しているのは、核戦争への開き直りだ。
次の第四章が、金融政策とも絡んで、国の財政破綻をどうするかという「骨太」本来のテーマにもなる。ここでは、安倍派や日本維新の会の突き上げを意識しながら、「財政健全化の旗は下ろさない」としつつ、「重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならない」と書いている。財政再建という目標は掲げるが、大軍拡を中心にした重要政策は貫徹するという意味である。「日銀は国の子会社」という理屈の下に、どんなインフレをも辞さない戦時経済、軍拡・戦争国家化へと踏み切るということだ。だから日銀も、円安やインフレに何の手も打てないし、打たない。

労働者の決起が歴史を決める! 国民生活は二の次、三の次。

来年23年度の予算で、防衛費を6兆円の大台にのせる。こうした裏付けをもって、年末の国家安全保障戦略など三つの防衛基本文書を作成する。そして、自衛隊を軍隊として明記し、国家非常事態宣言条項を導入する改憲にも手を付ける。これが「最重要政策」だ。岸田がやるか、安倍派主導でやるか、そういう争いを伴ないながら、日本の政治は、戦後未経験の状況に突入したのである。
この状況で労働者階級がどのように動くか、それが歴史を決する。夏から秋への闘いが大きな意味をもつことを確認して起ち上がっていこう。

藤村一行(動労千葉労働学校講師) 『月刊労働運動』2022年7月号掲載

時代を解く

Posted by kc-master