杉並区の児童館全廃とのたたかい

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0294号07/01)(2014/09/01)

杉並区の児童館全廃とのたたかい

(写真 区議補選で廃止反対を訴え)

 杉並区議補選の中、児童館をまわり、児童館にとどまらない自治体・教育のまるごと民営化の突破口としての本質、そして労働組合つぶしから改憲を狙う安倍政権、杉並の田中区政の姿が明らかになってきました。

■42か所の児童館を全廃する攻撃

 0~18歳の子どもが遊び、地域のイベントをしてきた機能は廃止され、年齢ごとに保育園、小・中・高校に分割・統合されます。「児童館の機能は一定残る」というのは全くのデマで、42カ所の児童館を全廃する攻撃です。
 聞こえてきたのは働く労働者の「まだ何も聞かされていない」という不安の声でした。最も早い児童館は2015年度で廃止。雇用がどうなるのかも分からない不安の中にいる。
 この職場を非正規の労働者が懸命に支えています。500人ほどの職員のうち半分は非正規。週4日勤務の嘱託の労働者は、1年雇用、延長5回限度。ある若い職員は、6年働いた後、「まだ働きたい」と言うと、「新規と区別しない」と言われた。新規採用扱いなのに給料はそのまま、つまり「経験はほしい」。職場は別の児童館で、継続雇用の事実は隠蔽。
 田中区長は、廃止の理由を「老朽化」と「ニーズの減少」をあげています。しかし老朽化なら建て替えればすむ。そして「ニーズの減少」については、年間のべ130万人以上の利用者は年々増加傾向にあるのが実態であり、全くの嘘です。子どもたちと職員が作った飾りや創意工夫で埋め尽くされる芸術作品のような職場を嘘をついてつぶす。絶対に許せない。

■狙いは学童クラブと保育園の民営化

 狙いは「子ども子育て支援新制度」に基づく学童クラブと保育園の民営化です。児童館の中の学童クラブの機能は民営化・業務委託し小学校の中に移す。「子どもセンター」(仮称)に再編される19カ所以外の児童館の土地、そして11の学童クラブ単独施設、児童遊園なども保育園の用地へ転用。「待機児童ゼロ」を掲げた公共施設の売却と保育園の株式会社化です。さらには、杉並第一小学校が建て替えられ、地域センターや民営学童クラブ、住宅が併設される。公民併存の矛盾は、学校全体の民営化に必ず向かう。清掃事務所の再編・統合や清掃工場の20年操業、公営住宅や介護施設、地域センター、区役所庁舎移転を含む杉並丸ごと民営化の突破口です。

■民営化反対の闘いこそ求められている

 田中区長は「行政の問題であって、労働条件の問題ではない」として組合無視を貫いています。問題は、国鉄1047名解雇撤回の「4・9政治和解」を契機に、民営化政策への同調を強めた杉並区職労幹部が、団交ではなく、区政主導の委員会に参加し推進していることです。「児童館の機能をどう継承するか」という議論に乗って統廃合を認めれば、表裏一体の労働条件に反対できなくなります。
 労働条件、民営化・外注化をめぐる絶対反対の闘いこそが求められています。7・1情勢は戦争と一体の自治体民営化攻撃を焦点としているがゆえになおさらです。1人からでも怒れる労働者の決起が必ずこの構造をひっくり返します。10・2杉並国鉄集会の焦点の一つに押し上げ、闘いを強めたいと思います。
 (織田陽介)

自治体,記事0294

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