社会と深く結びついた 米教育労働者の組合運動

月刊労働運動2020年3月号掲載

アメリカでインフルエンザによる死者が莫大な数に

日本では、新型コロナウィルスの感染拡大に関してマスメディアが毎日報道に明け暮れている。
そんな中、アメリカではインフルエンザが猛威を振るっている。米疾病対策センター(CDC)は、「2019~20年のシーズンは、2月8日の段階で少なくとも2600万人以上がインフルエンザにかかっていると推定され、死者数は1万4000人を超えた」と発表した。
アメリカではここ10年間で毎年5万6000人ほどのインフルエンザによる死者が出ているが、今年はこれをはるかに上回る数値になるだろうとCDCは警告を発している。特に子どもや若者に重症者が多く、4歳以下の小児の死亡者数はすでに92人に達するなど、過去にないペースで増えている。

国民皆保険制度のないアメリカの実態

2007年に公開されたマイケル・ムーア監督の映画『シッコ(Sicko)』で、アメリカの医療制度の実態が広く知られるようになった。無保険で医療を受けられずに死亡する人は年間1万8000人超、保険に加入していても法外な費用を要求される、またいろいろな理由をつけて保険会社が支払いを拒否するなどの実例が映し出された。
インフルエンザの死者がこれほどまでに多いのは、アメリカの医療制度が大きく原因していると思われる。たとえ保険に加入していても、驚くほど高額な診療費が要求されるからだ。貧困も大きく影響し、インフルエンザに感染しても多くの人が医療機関にかかっていない。

教育労働者がストライキで貧困改善を要求

相対的貧困率がG7の中で最も高いアメリカでは、子どもの貧困は7人に1人と言われている。全米に広がる教育労働者のストライキは、「生徒と教師の生活の質を向上させる闘い」だ。
2018年にウェストバージニアから広まった巨大な教員ストライキの地域では、教師の賃金は最低ラインで、健康保険料は年々上がり、副業をしなければ生活できない状況だった。多くの生徒が家で食事ができず、学校で出される朝食・昼食で飢えをしのいでいる。オクラホマではもう数年前から、20%以上の地域で、資金不足のため週4日しか学校が運営されず、教師たちは休日にダブルワーク、トリプルワークなどして生徒に必要な学用品などを買い与えていた。昨年10月のシカゴ教組のストライキでは、学区に17万人のホームレス状態にある生徒や低収入のシカゴ住民に経済的な援助を要求した。
ロサンゼルス統一教組(UTLA)のユニオンパワーは、執行部選挙に勝利した6年前、「教師のことだけでなく有色人種の貧困家庭の生徒の問題にも取り組み、社会正義を第一に考える」と公約し、その実現のために組合を変え、ストライキのできる組合づくりをすると決意。昨年1月のストライキでその公約を果たして大勝利した。

小島 江里子(動労千葉国際連帯委員会)