連合崩壊情勢と全国労組交流センターの課題

2019年7月31日

月刊『労働運動』34頁(0333号06/01)(2017/12/01)

連合崩壊情勢と全国労組交流センターの課題

飯田 英貴(全国労組交流センター事務局長)

職場で闘い、労組を軸とした改憲阻止闘争を広範に作り出そう!

■労働運動の変革をかけた新たなる挑戦

 10月の衆院選決戦と11・5全国労働者集会―訪韓闘争を軸とした11月決戦は、私たちにとって、これまでにない飛躍をかけた闘いでした。
 安倍政権が、北朝鮮の核・ミサイル問題を利用し、朝鮮半島への戦争と9条改憲を前面に押し出して強行した衆院解散・総選挙。その戦争と改憲を競い合うように小池都知事が代表となる「希望の党」が登場し、民進党が一夜のうちに崩壊。そして、そのすべての過程で労働組合のナショナルセンターである連合が焦点となり、その分裂と崩壊が始まっています。この歴史的事態に対し、衆院選も11月決戦も、労働運動の変革をかけた私たちの挑戦でした。「どうすれば労働運動がこの時代に力ある存在として登場できるか」という点でふたつにしてひとつの闘いであったのです。
 「この国に革命を」「生きる誇りを取り戻そう」と訴えて闘い抜いた斎藤いくま候補に2931票が集まり、また厳戒態勢を打ち破って11月5日のトランプ訪日・安倍との戦争会議を撃つ4800人の銀座デモを実現できたことは、新しい労働運動の可能性を示すものとなったことは間違いありません。

■連合崩壊情勢下で流動化する労働者とその獲得をめぐる闘い

 しかし同時に、私たちはこの現実に留まることはできません。本当に労働運動が社会を変える力ある存在として登場するために、私たちが越えるべき課題があることも明らかです。
 10、11月の闘いを総括するとき、改めて、連合をめぐって起こった事態の大きさをとらえ返したいと思います。安倍や小池がやろうとしたことは、連合の改憲・戦争翼賛勢力化です。歴史上、日本の労働組合ナショナルセンターが再編されたのは3回しかありません。1940年の産業報国会結成は、日本の第二次世界大戦突入の契機となり、1950年の総評結成は、朝鮮戦争へとつながりました。さらに、戦後最大の改憲攻撃となったのが国鉄分割・民営化と連合の結成です。分割・民営化を強行した中曽根元首相は、「国労をつぶし、総評・社会党をつぶすことで立派な憲法を安置する」と言い、民営化の目的が改憲のための労働組合破壊であったと語っています。そして、いま始まった連合の再編は、歴史上4度目、改憲・戦争へと事態が激しく進む時代の中で生み出されている歴史的事態です。
 この安倍・小池による連合の改憲翼賛勢力化の策動は、いったん頓挫し、連合の分裂と崩壊が始まっています。しかし、連合の分裂と崩壊が、ただちに私たちへの支持へと結びついていません。この間を埋めることに全力を尽くすこと、これが私たちの課題です。

■改憲阻止1万人行進の開始

 11・5全国労働者集会で特徴的なことがふたつあります。
 ひとつは、「改憲阻止!1万人大行進」と題した「第2部」からの参加者が100人を超えたことです。衆院選後に行われた11・3国会包囲闘争でチケットを買った人も数多く参加しています。「改憲阻止!1万人大行進」は、一昨年の安保法をめぐる闘いの総括から提起されたものでもあります。国会を取り巻くあれほどの闘いを展開しながら、法律が通ったとたんに運動が雲散霧消し、闘いを選挙の一票に押しとどめようとするあり方をどうしたら突破できるのか。「改憲と戦争だけは許してはならない」―これは戦後日本の労働運動の原点であり、最大のテーマです。「2020年」という区切りをつけて改憲が具体的日程に上った今、私たち自身の手で持続した具体的運動の姿を登場させるにはどうすればいいのか。その新しい挑戦が今回の「改憲阻止!1万人大行進」でした。この闘いが求心力を持ち始めています。

■職場で具体的闘いを始めよう

 労働組合が改憲阻止闘争の中心になる運動を提起でき、なおかつそれが求心力を持ち始めた土台には、労働運動の変革を掲げて20年にわたって全国集会を開催してきた、関西地区生コン支部、港合同、動労千葉の3労組の具体的運動があります。
 11・5労働者集会で、関西生コン支部の代表は、「闘わない労働組合を非難するのではなく、私たちが労働現場で具体的な行動を展開し、結果を出すことで闘う労働組合を結集させることができる」と発言しました。
 そのことと関連して、11・5集会のいまひとつの特徴は、職場で闘いを開始したところは必ず動員を増やしているということです。「これが我々の運動の姿だ」という具体的運動が示されたとき、怒りが組織化へと転化し始めています。

(写真 11月5日、労組の旗を先頭にデモ行進)

■改憲阻止の闘いと、職場からの闘いをひとつに

 戦争を止める力、「働き方改革」に象徴される安倍政権による労働大改悪を止める力は、何より労働者自身の力です。その意味で、10、11月の闘いで作り出したものは、連合打倒の情勢だと言えます。
 そうした時、私たち労組交流センターの最大の課題ですが、日本の労働運動全体が、国鉄分割・民営化を乗り越えて闘う力を取り戻さなければなりません。例えば、JAMは組織崩壊が進み、毎年20労組が脱退していると言います。その理由は、組織運営ができないため解散、上部団体に意味を感じないから脱退というものです。また、今年のNTT労組定期大会では「民営化以降、組織に対する求心力が落ちている」という意見が出ています。
 そうして見たとき、動労千葉が国鉄分割・民営化に立ち向かい、組織を拡大し、社会に影響力を持つ形で国鉄闘争を継続させてきた悪戦苦闘の大きさがわかります。動労千葉は「労働者が自分自身の決断した闘いの経験に基づいて、その闘争の社会的な意味や正しさを確信したときにどれほど大きな力を発揮するのか」―これが自分たちの「運動思想」だと言っています。独自の運動をつくりだすことがどれほど困難なことか。しかしそこから逃げずに、徹底した議論とそこから発揮されたエネルギーが現実を変える力となることを動労千葉の闘いは教えてくれています。
 職場で闘い、労働組合を中心とした改憲阻止闘争を広範に作り出すこと、この二つを労働運動の変革の課題としてひとつにして闘うことが12月から2018年に向かった私たちの課題です。組織の原点に返り、職場から仲間をつくり、闘いを開始しましょう。