「関西地区生コン支部とはどんな組合か」

2019年8月28日

月刊『労働運動』34頁(0353号06/03)(2019/08/01)

「関西地区生コン支部とはどんな組合か」

関生支部は、生コンクリート産業やその関連産業に従事している労働者で組織された産業別労働組合である。生コン協同組合の加盟会社あるいはその下請けの運送業者で雇用されている労働者が組合員の大半である。2019年で結成から55年になる。企業内労働組合が圧倒的に多い日本で、このような産業別労働組合は珍しい(他に全港湾や海員組合などがある)。
生コン業界では、原材料のセメントの製造と建設工事を行うゼネコンは大企業であるが、セメントに水と砂、砂利などの骨材を混ぜて生コンを製造する工程は中小の生コン企業が担っている。ゼネコンの力が強く、生コンは安価に買いたたかれてきた。それが労働者の低い賃金や劣悪な労働環境をもたらす要因となっていたことから、生コン支部は、中小生コン業者が集まって協同組合を結成するように促してきた。協同組合による共同受注・共同販売によって、力関係で優位に立つゼネコンとの間で対等かつ適正価格での取引と生コンの品質を確保することを目的としてきた。
価格競争が激化すると、不良な骨材を用いたり、過剰に加水した粗悪品のコンクリートが作られ、耐震性の不足した建物や土木構造物を生み出し、市民生活の安全にも大きな影響を及ぼしかねない。
関生支部の労働運動は、大資本であるセメントメーカーやゼネコン中心の経済や産業の仕組みを変え、労働組合と中小企業が団結して、大企業の収奪から生コン製造・運搬の業界全体を守ってきたといえる。その結果、関西における生コンの価格は、一立方メートルあたり1万5000円から1万7000円の水準を確保し、東京などの他地域が1万1000円から1万2000円に買いたたかれているなかで、値崩れを防いできたのである。
そして、協同組合に加盟している会社のうち、組合員が所属している会社の経営者で組織する大阪・兵庫生コン経営者会と関生支部等の間で団体交渉が行われ、生コンの価格が上がれば運賃を引き上げるとの約束が交わされていた。この約束のもとで、生コン支部は協同組合に協力してきた。その後、協同組合の組織率が高まり、生コン価格が上昇したにもかかわらず、協同組合側は約束した運賃値上げと組合員の賃上げを実施しなかった。
そこで、関生支部は、約束されたセメント輸送、生コン輸送の運賃を引き上げることと、大阪広域生コン協同組合の組織運営の民主化を求めて、2017年12月、近畿地方一円で無期限ストライキに立ち上がった。滋賀、京都、奈良、和歌山の生コン協同組合、バラセメント輸送協同組合、生コン輸送協同組合などは、組合側の要求を大筋で受け容れ、ストライキは4日で収束した。
ところが、大阪広域生コン協同組合だけは回答すら示そうとしなかった。そして、ストライキは威力業務妨害であるとし、「関生支部を業界から一掃する」と宣言した。
さらに、協同組合の執行部は、排外主義的なヘイトスピーチを繰り返してきた極右団体と結託し、争議現場で彼らに挑発行為をさせて「衝突」を演出し、これをネット配信することで、関生支部は組織犯罪集団と印象づけるキャンペーンを始めた。他方で、関生支部との関係を維持しようとする事業者を生コン製造の割り当てから外し、関生支部との交渉そのものを否定するようになったのである。
旧日経連(現経団連)大槻文平会長(当時)は、1982年に「関生型の労働運動は、資本主義を揺るがしかねない。箱根の山を越えさせてはいけない」と語ったという。今回の事件でも滋賀県警は、捜査の過程で、生コン業者に対し「関生と手を切れ」などと迫っており、この弾圧が、産業別労働組合の解体を目的としていることは明らかである。 (関西地区生コン支部のHPより転載)