常磐線全線開通は本当に安全か?
常磐線全線開通は本当に安全か?
労組の真価問われる「命の問題」 9・22水戸集会に結集を!
国分 勝之(動労水戸執行副委員長)
来年3月全線開通への動き
2011年3月の東日本大震災、福島第一原発事故から8年半の年月が経とうとしています。原発の廃炉作業はまだ先が見えない状態にあり、福島の原発周辺には高い放射線量のために人が立ち入ることさえできない「帰還困難区域」が広大に存在しています。高速道路と国道だけは開通していますが、JR常磐線は富岡駅―浪江駅の4区間がいまだに不通のままです。安倍首相は、「汚染水はアンダーコントロール」「福島に健康被害はない」とウソを言って東京オリンピックを招致しましたが、JR東日本はこれを受けて「2019年度末までに常磐線全線開通をめざす」として復旧工事を進めてきました。会社によれば、工事は順調に進んでおり、2019年度末の開通に向け準備すると、7月17日JR各労組に説明しました。
職場・生産点から生まれた被曝労働拒否の闘い
福島第一原発事故という激甚な原子力災害、放射線被曝を私たちは初めて目の当たりにして、どう向き合えばいいのか、労働組合は何をすべきなのか戸惑いながらも、「フクシマ」の不安・不満・怒りの声を封殺しようとする権力者の意のままにさせてはいけないと奮闘してきました。地震でめちゃくちゃになった線路が徐々に復旧し、業務も通常運転に戻っていく中で、始めに問われたのは2011年9月、JR東日本が、事故のあった原発からほど近い場所に半年間も放置されていた電車をそのまま使用するために勝田車両センターで整備を行うとしたことでした。「放射線は危なくないのか」「被曝するのではないか」と車両を整備する職場・生産点から声をあげました。K544車両をめぐる被曝労働反対の闘いの始まりです。
会社は、当初、「電車が放置されていた場所(福島県広野町)は避難指示解除となった。避難指示解除は国が住んでも安全としたところ。だからそこに置いてあった車両も安全。放射線の測定も必要ない」と言いました。これに対し、動労水戸はストライキを構え猛然と抗議する中、青年労働者1人が動労水戸に加入し、それに追随する労働者が次々と出るかもしれないという状況が生み出されました。そうしたギリギリの攻防の中で、電車の一部から0・9μSv/hの放射線が検出され、以後1年半、この車両の整備・使用を凍結することを余儀なくさせました。
その後、JR東日本は8年間、自治体の避難解除と同時に不通となってきた区間を徐々に開通させてきました。しかし、私たちは、福島県いわき市内デモやJR職場への激励行動を行い、JR労働者の被曝労働と住民の被曝と帰還の強制に反対して闘ってきました。
帰還困難区域への「開通」と体内被曝の脅威
JR東日本が今回開通させようとしているのは、避難解除にもなっていない帰還困難区域の4区間です。鉄道の敷地内と駅周辺だけを除染し、放射線量を一定の値まで下げることで運転再開を行おうとしているのです。これまで部分的に運転再開となった区間は、曲がりなりにも沿線の自治体が避難解除となり住民が戻るために必要という大義名分で行われてきましたが、今回は違います。除染して立ち入ることはできても住むことはできません。鉄道の敷地内は、線路・枕木・バラスト・電架柱などの設備はすべて新品、表土を削りモルタルを吹きつけ放射線量を低くするという徹底ぶりですが、それでも会社が示した資料によれば、放射線量はゼロどころか2μSv/hを超える所も存在しています。鉄道敷地のすぐ隣は年間50mSVという場所ですから、今後線量が再び上がることも予想されます。
最大の問題はこうした高線量地域と隣接している中を列車が走ることで、放射性物質が付着した空気や微物を吸引して体内被曝(内部被曝)する危険が高いことです。列車が駅間で立ち往生したら乗務員や乗客は被曝しないで安全に避難・誘導できるのか、車両に付着するであろう放射性物質によって車両整備や清掃する労働者は被曝しないのか。体内被曝は、放射性物質が細胞に直接触れ影響を及ぼすことから、低線量でも危険と言われ「しきい値」がないとされています。放射線被曝による影響は、特定の病気を発症するわけではなく、免疫が低下してすべての病気にかかりやすくなることから、被曝したことの因果関係を明らかにすることは難しいと言われています。健康被害・命の問題であるがゆえに絶対にあいまいにしてはなりません。
「命の問題」に労働者が声を上げられるか そのとき労組の役割は何か
こうした命の問題でもある放射線被曝に対して、職場・生産点の労働者が声を上げることができるかが今回の最大の課題です。とりわけ、JRの労働組合がこの全線開通=放射線被曝強制という問題に対してどう取り組むのかでその真価が問われています。JR東日本は2018年2月以降、30年間続けてきたJR東労組結託体制を打ち切り、労組のない会社をめざすことに舵を切っています。乗務員勤務制度改悪やジョブローテーションなど労働者が決起できないような仕組みを次々と作る一方で、業務委託(外注化)・分社化やワンマン化・自動運転などのすさまじい合理化・人員削減を進めています。多くの青年労働者が、将来自分はどうなるのか、自分はどうすればいいのかと岐路に立たされています。
「命の問題」、仲間や乗客の命を会社はどう扱おうとしているのかを見定め、すべて根っこは同じであることを労働者自身がつかみとることが重要です。
労働組合は、労働者を励まし寄り添って、会社の不当な攻撃を暴き、団結することを呼びかけ、非和解的な事態の中で闘いを提起する必要があります。動労千葉・動労総連合が培ってきた「闘いなくして安全なし」の運転保安闘争路線は、職場と離れたところにあるわけではありません。この問題こそ、仲間や乗客の「命の問題」だからこそ、みんながわかる、職場の労働者が一体となれる展望をひめた内容をもっているのです。
常磐線全線開通問題は、オリンピック―憲法改悪という時代を背景にした中で、JR労働者が将来の展望がつかめるかどうかがかかった決戦といっても過言ではありません。私たち動労水戸は、他労組の労働者であれ、一旦組合を抜けた労働者であれ、職場・生産点の労働者と結びつき、JR労働者の中からの決起を作りだすための挑戦をしています。来る9月22日に予定している「高線量地帯に向かって列車を走らせるな!9・22水戸集会」はそのための大きな跳躍台としたいと考えています。労働者が決起したとき、はじめて事態が動くと確信しています。9・22水戸集会への結集をよろしくお願いします。
▼9月22日(日)13時開会
▼駿優教育会館8Fホール (水戸駅北口から徒歩3分)