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原発から15㌔ 竜田駅乗り入れ絶対反対の闘い

月刊『労働運動』34頁(0292号03/01)(2014/07/01)



原発から15㌔ 竜田駅乗り入れ絶対反対の闘い


石井 真一(動労水戸執行委員長)
 5月30~31日、動労水戸は、JR水戸支社のよる6月1日からの竜田駅乗り入れ強行に反対して、全乗務員のストライキ闘争に決起しました。
 5月29日、楢葉町長は、「帰町宣言」が出来ず、「帰町判断」を来年春行うということを発表しました。これを受けて、JR水戸支社長が5月30日、記者会見し、6月1日から常磐線を広野駅から竜田駅まで乗り入れることを明らかにしたのです。JR水戸支社が、これまで社員や労働組合に説明していた「『帰町宣言』が出たら運転を再開する」ということは反故にされ、どうあっても竜田駅までの乗り入れを強行するというものでした。

■6月1日楢葉町帰還強制に向かう激動情勢

 安倍政権は2月、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけるエネルギー基本計画の政府案を発表しました。原発の再稼働と原発
輸出をあくまで推進することを表明したものです。それを推進するために、「福島第一原発事故は収束した」「放射能汚染はもう大丈夫」「原発の近辺は除染が済んで安全であるから帰還せよ」ということを強引に推し進めようとしていました。その突破口が、6月1日楢葉町帰還強制―常磐線・竜田延伸という攻撃でした。
 しかし、安倍政権の原発再稼働・原発輸出政策を打ち砕く形で、福井地裁が5月21日、大飯原発差し止め訴訟において、「大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない」という判決を出しました。さらに、漫画「美味しんぼ」で鼻血描写が掲載され、安倍総理は自らの原発政策が吹き飛ぶ危機感にかられ、福島に乗り込んで風評被害とのキャンペーンを行ったのです。一方、米ケネディ駐日大使が福島第一原発に乗り込み、解決の目途がつかない汚染水問題などについて必死で福島の怒りを鎮めようとしました。
 この時期同時に安倍政権は、中間貯蔵施設を双葉町と大熊町に建設しようとしていました。石原伸晃環境相は5月27日、福島第一原発事故の除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設を設置するために、候補地の福島県双葉、大熊両町長と会談し、31日から住民説明会を行うとしていました。また、安倍政権と東電を追いつめていた汚染水問題についても、5月21日福島第一原発に流れ込む地下水を、海に放出することが開始されました。

■吹き飛んだ楢葉町帰町宣言

 まさに6月1日楢葉町帰町宣言をもって、すべてが動き出そうとしていたのです。
 動労水戸の5月10日ストを含む常磐線竜田延伸・試運転反対闘争が、楢葉住民を巻き込む形で爆発しました。楢葉町長は、住民の怒りの前に帰町宣言を出せませんでした。安倍政権・東電・JR水戸支社・楢葉町長は、事前に周到に打ち合わせていたはずです。楢葉町長が帰町宣言し、政府が避難区域を解除する、JRが竜田まで電車を乗り入れる、そして東電は補償金を打ち切るというシナリオです。
 それが、「帰町宣言」が吹き飛ぶことで、全部の歯車がかみ合わなくなってしまったのです。JRは、3月以降いつでも運転再開するために、昨年8月末から工事を再開し準備していました。JR水戸支社長は追いつめられながらも、6月1日から竜田駅までの乗り入れを表明せざるを得ませんでした。そのことでJR内部での矛盾が噴き出すことになりました。
 楢葉町が帰町宣言を出すことで協力を表明していたJR東労組は、議事録確認と違うことを会社はやろうとしているとして反対を表明せざるを得なくなりました。もちろん動労水戸の闘いに触発され、いわき運輸区をはじめとして、労働者の中にすごい怒りの声が上がっていることが根底にあります。
 いわき運輸区では、5月10日の試運転翌日の5月11日から乗務員訓練が開始されましたが、避難区域が解除されない中で、訓練開始はおかしいと抗議の声が上がり始めました。運転士や車掌の中から、「避難区域も解除されていないところに電車を走らせて、だれが乗るのか」「空箱に空気を乗せて走るのか」「ただ単に被曝するだけではないか」という声が出たのです。
 そして、実際にいわき運輸区で、震災後に白血病で死ぬ運転士や肺がんで死ぬ検修労働者が出ていました。5月も咽頭がんの労働者が出ました。原発事故とは因果関係がないなどと軽々しく言いますが、いわき運輸区やいわき在住者にがん発生率が高いということは、はっきりしています。原発事故以後、福島の子供たち50人に甲状腺がんが発生していることからみても、原発事故が原因であることは疑いありません。
 楢葉町は、空間線量でさえ0.23マイクローベルト(年間被ばく量1㍉シーベルトの限度)を超えています。そして、至る所にフレコンバックと言われる除染物質の詰まった円柱の黒い袋が大量に積まれています。川底や池の底の泥は高濃度に汚染されており、飲み水の問題もあります。住む家も、震災から壊れたままで、雨漏りがし、家の中はネズミが走り回っています。そういう家に住めるわけもなく、一部損壊の家は解体費用も出ないのです。避難補償費は一人月10万円出ますが、一人暮らしの老人は年金と合わせても13万円しかありません。補償を打ち切られたら月額3万円しかない。まさに「死ね」と言わんばかりの帰還攻撃なのです。
 これに反対する闘いは、労働組合なら当たり前の闘いであると思います。「国鉄の労働組合が闘っている」という声が、地域住民から上がりました。労働組合が闘いの中心になることが安心感を与えているのです。
 また、動労水戸のメールアドレスには、JP労働者から以下のメールが寄せられました。「こんにちは。私は、JP労組の組合員です。私は、ほぼ毎日、いわき局より楢葉町に配達に行っています。大変恐ろしい風景の中、多少なりとも被曝しながら業務を遂行しております。我が組合は大変組合員思いの組織で、被曝軽減、万が一の時の対応等の交渉は一切しない、形ばかり組織、金食い組合です。貴組合には、この様な愚かな組織にならぬ様に期待しております。頑張って下さい」
 動労水戸が呼びかけた5月31日「福島切り捨てを許すな!竜田延伸絶対反対!」の520名結集の集会とデモは、楢葉町住民をはじめとした地域住民といわき運輸区をはじめとした労働者の怒りと一体となって爆発したのです。鈴なりのいわき駅前の人を見れば明らかです。本当にすごい情勢が来ています。

■次の闘いは何か

 竜田駅乗り入れの強行によって引き起こされた矛盾を、さらに広げ追及することです。あくまで竜田乗り入れを強行・継続する水戸支社に運転を中止させることです。住んでもいない地域に電車を走らせても乗客がいないのは当たり前です。
 JR水戸支社に対して、このことについて団交で回答させ、職場で暴露し、職場の怒りをもっと噴出させていくということです。
 会社は、社員の健康被害について全く考えていません。いつまでこんな会社に従っているのか、命を取られてもいいのかということです。闘うふりをして何も出来ない東労組にいつまでしがみつくのかということです。
 東労組の竜田延伸問題の幕引きを許さず、他労組の屈服と裏切りを許さず、全部を巻き込んでいくことが求められています。堤防決壊を作り出す、そういう時代の到来です。
 新自由主義が労働者を、学生を殺しています。セウォル号の事故はそれを示しているではないですか。JRが労働者を、住民を殺そうとしている。それを許さない決定的な闘いが、竜田延伸絶対反対闘争だと思います。共に闘いましょう。