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特集 集団的自衛権を撃つ 動労千葉・田中康宏委員長へのインタビュー

月刊『労働運動』34頁(0293号02/01)(2014/08/01)



特集 集団的自衛権を撃つ 動労千葉・田中康宏委員長へのインタビュー
 

 

8・17安倍打倒集会から各地区国鉄集会、そして11月労働者集会への展望
動労千葉・田中康宏委員長へのインタビュー

戦争する国への転換のクーデター

聞き手 7・1集団的自衛権行使容認の閣議決定という時代の転換について話して下さい。

田中 歴史の分岐点に立ったという思いを強くしています。我々の決断、一挙手一投足、何を言うのかが注目されています。社会の安定時にはできなかったことも、大きく変わる時代には一人の決意や行動が社会を動かす可能性があります。労働者が団結することで時代を動かすところに来たと思います。
 集団的自衛権行使容認の閣議決定は、戦後70年の歴史の最大の転換点と言ってもいい。戦争をしない国から公然と戦争をする国へ名乗りをあげたということです。二度と戦争をさせてはいけない決意を1ミリのあいまいさもなく明確にすべきです。
 いくつか思ったことがあります。
 ①一つは、憲法解釈の変更というペテン的言い方です。一握りの閣僚らによるクーデターに等しいと思います。
 ②もう一つは、その論理もすべてを欺くやり方で、憤りを感じます。「幸福追求権が脅かされたらどうするのか」「生命の危険が迫ったらどうするのか」と言って威嚇して、幸福追求、自由追求の名で戦争をするのです。しかし、戦争にかり出されるのは労働者、農民です。それが一番許せません。
 ③さらに、「限定的」とか「必要最小限度」というのもペテンです。戦争の本質から言ってもあり得ない。すべては始めは限定的であり、必要最小限と言われてやってきた。政治反動はすべて同じです。労働者派遣法も最初は26業種に限定し労働者が望んでいるなどと言って強行したが、すべての業種に拡大され、何をもたらしたかは明らかです。
 ④少なくとも憲法9条には「国権の発動としての戦争はこれを永久に放棄する」「陸海空の戦力は保持しない」「国の交戦権は認めない」と書いてある。支配者階級自身が支配の道具である法すら破った。命をかけても止めなくてはいけない時代が来たと思います。
 1947年に憲法がつくられ、その直後から日本は帝国主義として復活し、戦争のできる国として国際社会に登場したいという企ては動いていた。1950年アメリカ帝国主義の朝鮮侵略戦争の年に、再軍備が始まっている。警察予備隊が創設され、2~3年後には自衛隊になっていく。60数年、戦争を阻んできた力は必死に立ち向かってきた労働者の闘いだったわけです。そうした歴史から考えると、なぜ集団的自衛権の閣議決定ができたのかと言えば、労働運動が後退させられたからだということははっきりしている。それが国鉄分割・民営化から始まったことは誰も否定できない。これに立ち向かうのは、階級的労働運動を復活させる以外ないと思います。
 すべてはこれからです。国会前、全国各地で怒りが渦巻き、様々な闘いが始まっています。新宿駅での焼身自殺(未遂)もありました。労働者の価値観が揺さぶられ、時代への危機感が生まれ、全てが動きだそうとしています。集団的自衛権の行使容認は、憲法を踏みにじることを通して、支配者階級が労働者階級の怒りの声を押し止めてきた装置を最後的に取り外したという意味をもちます。
 無数の法律改正が国会で行われていきます。戦争のできる国への転換は社会の隅々まで、これまでのあり方が変えられていく。労働者が存在しているから、戦争ということは日々の問題になる。全てが変化し始めます。
 まず教育が変わる。学校から何から変わる。すでに高校生へ自衛隊の募集通知が発送されている。間違いなくアメリカのように貧困層が徴兵される。全国の高校や大学に軍のリクルーターが常時徘徊するようになる。
 地方自治体のあり方、社会保障制度も兵士が死ぬことを前提にすべてが作り変えられていく。言論・集会・結社の自由への統制も始まる。なによりも労働者の権利への制限も始まる。全てが攻撃対象になる。社会の隅々まで戦争へむけたあり方に転換する。
 それを粉砕するためには、労働運動が力を取り戻すことが決定的課題です。しかもすでに時代は動き始めていた。3・11東日本大震災と原発事故で、膨大な労働者が価値観を変えざるを得なかった。国家の本質に気付き始めていたのです。これと結びつける力を我々はもたなくてはいけない。
 安倍政権は、今なぜ踏み切ったのか。それは足下が崩れ落ちようとしていることへの恐怖があるからです。資本主義の終わりの始まりの情勢への危機感が突き動かしています。1000兆円もの国家財政の赤字の危機を必死にアベノミクスで先送りしてきただけです。巨額の金融の量的緩和策、巨大な財政出動で公共投資を行う、しかし破産は明らかです。その時に戦争は現実のものになる。そのことに背筋を凍らせているのだと思います。
 日本だけではなく、世界の帝国主義支配が最後の姿を見せています。世界経済の底が割れてしまいかねない危機が起きる。クリミア半島では戦争的激突の危機になっている。アメリカのイラク戦争以来の中東支配が崩壊しています。アメリカは延命をかけて東アジア戦略に移行していますが、中国はバブル崩壊の危機の中でこれに対抗して、いつ戦争が起きてもおかしくない情勢です。支配が崩壊しようとしているがゆえに怒りの声を力ずくで押さえ付けようとしています。資本主義が終わりを告げようとしている今こそ、労働者が登場すべき時代がきています。全世界で怒りの声が噴き出している。だからこそ支配者階級は戦争に突き進む以外にないのです。
 若者が動き始めています。そのきっかけを安倍政権がつくった。青年、学生が動き始めると時代は動きます。はじめに自衛隊の若者から「こんなことのために自衛隊に入ったのではない」という声があがっている。青年、学生の決起をつくって安倍政権の墓穴にしてやることだと思います。アメリカでは、青年を奨学金で借金漬けにして、軍に入れば返済を猶予すると言ってイラクに送り、棺桶に入って帰ってくることを繰り返した。貧困による徴兵が日本でも始まる。そのためには、非正規職や格差社会が徹底的に利用される。教育ももっと競争原理にたたき込む。教育を戦争への道に引き込んだ。
 改憲と戦争への道と、総非正規職化・解雇自由化・社会丸ごとの民営化という究極の新自由主義政策への突進は、表裏一体の問題です。どちらも危機にあえぐ資本主義の延命策です。労働者を犠牲にして引きずり落とし、政治的反動を引き起こす。しかし、我慢のならない怒りが生まれています。この勝負に勝たなくてはいけないと本当に思う。
 武器輸出三原則改悪も三菱重工など軍需資本から安倍への要請で行った。資本の延命のために戦争をする。労働者を総非正規職化する。そのことに支配者階級は何の痛みも感じない。社会のあり方、医療、年金、社会保障もすべて破壊していく。資本さえ生き残ればいいというのが安倍政権。こういう連中だから戦争をやろうとする。資本主義の最後の姿です。
 国鉄分割・民営化に日本の労働運動が立ち向かうことができなかった。「国労をつぶし総評をつぶして社会党を解体し、新しい憲法を安置する」と中曽根が言った通りの現実に行き着いたことを決して曖昧にしてはいけない。労働組合のナショナルセンターが解散に追いやられた国は、世界にはないのです。新自由主義の攻撃が日本の場合はそこまで行き着いた。国鉄分割・民営化は新自由主義の最も暴力的な攻撃だった。この問題を絶対に曖昧にせず、今の時代だからこそ総括し、実践的に乗り越えることです。
 具体的にも、国鉄分割・民営化までは防衛費はGNP(国民総生産)の1%以内という歯止めがあったのです。分割・民営化の87年に防衛費は1%を超えた。すべては労働者の団結を破壊し力関係を変えて、政治反動も進んでいくことを考えなくてはいけない。

(写真 5・2ストライキ)

国鉄分割・民営化が一切の始まりだった

聞き手 労働組合こそ問われていますね。

田中 労働運動をやっていて、今の労働者が置かれた現実を見て思うことは、改めて国鉄分割・民営化が一切の始まりだったということです。1986年国鉄改革法が成立して、労働者派遣法はその前年に成立し施行が1986年です。この二つが労働運動と労働者の権利を打ち砕く決定的意味を持った。国鉄改革法は一旦全員解雇・選別再雇用で、解雇自由と労働組合破壊が合法化された。もう一方、労働者派遣法は労基法の根幹を打ち砕いた。中間搾取の問題は形式的な問題ではない。「労働者をモノとして扱うことをしてはならない」ということを粉砕してしまった。アリの一穴で、そこからあらゆることが拡大解釈され、4割が非正規職に転落させられた。そして、総評解散、社会党解散で、労働運動が後退、メチャメチャに潰されていった。そこまで潰されて、社会のあり樣がすべて変えられてしまった。その中で、どれだけの労働者が苦しみ、命を奪われ、未来を失ったのかと考えると、労働運動が力を取り戻すこと、労働者が自らの力にもう一回自覚を取り戻すことを抜きにこの時代は絶対に動かないと思います。戦後最大の労働運動解体攻撃であった国鉄分割・民営化の当事者だから、絶対に乗り越えて、労働運動が息を吹き返すまで闘い続ける責任を負っていると今日まで闘ってきた。この時代だからなおさらそう思います。
 国鉄闘争にこだわってきたことは、非常に意味があったと思います。
 国鉄分割・民営化では、国鉄を解体し民営化して、労働運動を解体し、資本は莫大な国鉄利権をむさぼり食い、それを通してバブルを生み出し延命していった。
 今日も、安倍政権の成長戦略の柱に、原発、鉄道、水事業の3つのパッケージ輸出をすえている。しかし、原発は3・11でそう簡単にはいかない。鉄道もアジア諸国では莫大なカネがかかりすぎ、ほとんどのプロジェクトが棚上げにされている。しかし今なお安倍の延命をかけた成長戦略の中心に鉄道輸出がある。これが破綻したら、1000兆円の国家赤字を持っているからすべてが破滅しかねない。だからJR北海道で起きていることやJR貨物の経営破綻のことなどが国際的に露わになったら、すべてが破滅しかねない。
 国鉄闘争は今も、政権の新自由主義の延命政策の中心課題と対決する闘いです。労働者の側から見ても、労働者が力を取り戻す以外にはすべては動かない。
 韓国鉄道労組との連帯が始まって思うことは、全世界の労働者にとって最大の共同課題である新自由主義攻撃との対決、その柱である民営化との対決という点で、国鉄闘争は国際連帯の最先端に位置する課題だと思います。国鉄闘争にこだわって、階級的労働運動が力を取り戻すことが、大きな意味を持つと思います。
 動労千葉が国鉄分割・民営化に真正面から立ち向かって2波のストライキをやり抜き、団結を守りぬいてJR体制に乗り込んだこと、ここで負けなかったから今日があると思います。
 国鉄分割・民営化で打ち砕かれずに、戦後最大の争議として継続された1047名解雇撤回闘争は、戦後労働運動の精華です。国鉄分割・民営化体制を揺るがし続けた力をもった闘いであり、戦後労働運動の決定的な力だった。しかし、2010年4月9日の政治和解で1047名闘争は旗を降ろすことになった。
 その中で、我々は重大な決断をして国鉄闘争全国運動を立ち上げ、一旦は孤立しても継続させると4年間やってきた。全国の力を結集して、国鉄分割・民営化、国鉄改革法に手がかかるところまできた。6・29東京地裁判決、9・25東京高裁判決をかちとった。
 国鉄分割・民営化反対ストから今日まで30年間、この全過程で日本の戦後労働運動の限界を乗り越えたいと思ってきた。切り開いたのは大きな地平だ。これは動労千葉と全国の力でつくりだした偉大な力であり、誰も否定できない地平だ。当初は無視したり、「玉砕の道だ」と非難を投げかけたり、「政治的主張にすぎない」などと反動が渦巻く中でやってきた。
 しかし、誰も実現できなかったことを僕らはやってきた。大きな可能性を手にしている。分割・民営化の時の不採用基準そのものを不当労働行為意思に基づくものであると認定させ、改革法をもう一歩で打ち砕けるところまできた。国鉄闘争で切り開いた地平が我々の地平だ。このことに改めて確信を持って、今の情勢に立ち向かっていきたい。
 もう一つ我々がつくりあげてきた地平は、JR体制下での闘いです。外注化粉砕の10年以上の闘いの地平は、日本の労働運動が実現できてこなかった大きな地平です。なによりも民営化・外注化こそ新自由主義攻撃の最大の核心的攻撃だと見抜いた。闘ってきたからわかったことです。非正規職化は、外注化攻撃に労働組合が全く闘えずに容認してきたから起きたことです。労働者の権利が奪われた。反撃できなかったら現実と立ち向かうことができないという認識に立ち至った。
 動労千葉的に言えば、シニア制度という外注化を認めないがゆえに、再雇用を拒否されて60歳でクビになっていくという激しい組織破壊攻撃に真正面から立ち向かった。逆にそのことを通して「外注化とは労働者に何をもたらすのか」を真剣な職場討議にかけて、逆転させて外注化反対ということを他労組も含めて職場全体の意志にまでして、10年間外注化を止める力をつくってきた。外注化という合理化攻撃に、1999年から15年闘い続けてきた。これも例がないと思う。
 あらゆる組織破壊攻撃を打ち破って闘い続ける力を作ってきた。2012年に外注化が強行されたが、外注化体制を揺るがし、闘いを継続している。その根底に反合理化・運転保安闘争路線があった。これがもう一つ大きなことだったと思います。
 そういう地平の上に、今年の6・8集会は、改めて決定的に勝負の時だと思って全国の仲間に訴えた。国鉄闘争全国運動を始めようと呼びかけた決意に勝るとも劣らない決意で呼びかけた。なぜか。闘いは大きな地平を切り開いて、最高裁段階でいずれ判決が出される状況だ。その中で、労働者を取り巻く情勢の厳しさ、我々が国鉄闘争では大きな地平を切り開いたとは言え、未だ労働運動全体では影響力をなかなか持てていない。困難な壁に日々ぶつかりながら、影響力を持ちきれていないという主客の情勢の中で、今までのあり方では収束させられていく。これからが勝負の時に、国鉄闘争全国運動が発展していくきっかけになる集会にしたかった。三労組(港合同、関西生コン支部、動労千葉)、国鉄闘争全国運動の呼びかけ人、韓国民主労総とも真剣な議論をして開催した。
 結集した1650人の仲間が思いを一つにしてくれた。集会が成功して本当にお礼を言いたい。全体が国鉄闘争全国運動はこれからが勝負であり、今から発展させようという気持ちになる集会になったと感じた。大きくは6・8集会での決意に終わらせずに、今年後半の闘いに生かさなくてはいけない。11月労働者集会に今年こそ勝負をかけ成功させたい。
 その上で、外注化反対闘争においても新しい実践的展望をつかんだ。このことがものすごく大きかった。5・2CTS(千葉鉄道サービス)のストを通した闘いで教えられ確信をもつことができた。
 発端は、外注化が強行されて、千葉だけが26人の大量のプロパーを新規採用したことだった。それはスト破り要員、組織破壊攻撃のための要員だった。そうであるがゆえに、わずか1年で26人もの労働者を検修の経験も持たないのに動員しようとした。間違いなく重大事故が起きる。この現実にどうするのか。議論の中で決断したのが5・2ストだった。外注化が安全をないがしろにして進むことを許さず、ストに決起した。ストをやると決断した時、何を訴えるかが問われた。結局、事故が起きた時に犠牲になるのはCTSに採用された労働者だ。「CTSの労働者を守れ」のスローガンを掲げてストに立った。動労千葉への攻撃として採用されたことを逆転させた。全てのCTS労働者に簡単に浸透しなくても、大きな意味を持った闘いだった。
 闘争をやってみて、動労千葉自身にとって初めてのストの意味がわかった。外注化というのは、コスト削減の中で、労働者を下請け会社に突き落としていく。本体と下請けを分断して雇用を破壊していく。外注化を粉砕するためには、JR本体だけではなく、外注先のCTSの労働者を組織することなしには、外注化は粉砕できない。それができた時に外注化は粉砕できるという展望を、闘いを通して確信を持つことができた。考えてみると、労働運動の中で初めてだったとわかった。下請けの労働者は我慢がならない中で立ち上がって、それを本体の労働者が応援をしたという経験は多少ある。しかし、JR本体の側から分断の垣根を取り払って闘いを提起したことは民主労総の闘いの中にもないと思う。ストを闘ってみて初めて自らその意味について気づかされた。そして、外注化攻撃の最大の弱点は安全問題だと改めて確信をもった。
 動労千葉の定期委員会でも訴えたのですが、運転保安確立を求めて外注化を粉砕するために、何かあれば何度でも立ち上がろうと。その闘争は、必ず本体とCTSの労働者を獲得することになる。そのことに確信を持って闘い続けよう。
 核心は運転保安確立の闘いだ。外注化は雇用を破壊し、運転保安を破壊する。JR北海道事故や京浜東北線の川崎駅事故、韓国のセウォル号事故の問題の現実。僕らはこれに立ち向かう。その中で、本格的な組織拡大を実現するという闘いの方針は明確になった。5・2ストと6・8集会の成功で、国鉄分割・民営化を打ち砕く展望が明確になった。分割・民営化体制が全面的に破綻している中で、われわれの側から国鉄分割・民営化を粉砕しなくてはいけない。
 ストをやって、CTSの仲間が2人動労千葉に結集してくれた。これは始まりです。広げていくことには努力が必要だが、新たな一歩を踏み出した。
 もう一つ重要なのは、3・11の原発事故の現実が、国鉄分割・民営化に次ぐ位の転換点だった。これに真正面から立ち向かってきたことも大きなことだった。大変な反動との闘いだった。
 動労水戸の仲間たちが頑張っているけれど、福島の現実、原発事故の現実に対して自らの職場からストライキで立ち上がる。他に誰が実現できているんですか。福島の本当に分断された現実。職場からストで立ち向かう。この迫力こそが、もう一回福島の怒りを一つに団結させる力になっている。階級的労働運動にこだわって闘い抜く、国鉄分割・民営化にこだわって闘い続けてきた我々の闘いがこういうものを生み出した。
 それとふくしま共同診療所をつくりあげた。僕らは本当に真剣に福島の被曝の現実に立ち向かう、その本気さが示されている。大変な過激派宣伝や反動を乗り越えて、全体を獲得する地平に手をかけている。国鉄分割・民営化との闘いと表裏一体の闘いだ。

(写真 韓国鉄道労組元委員長)

戦争と民営化に反対する11月労働者集会

聞き手 8・17安倍打倒集会から11月労働者集会にむけての展望を話して下さい。

田中 国鉄分割・民営化以来実現してきたものを考えると、本当にもう一度、全国各地・職場地域に分け入って、我々のあり方の飛躍と変革をかけてすべての怒りの声を団結させる挑戦に打って出なくてはいけないと思います。特に、集団的自衛権行使容認の閣議決定、戦争への危機感と結合する時であり、間違いなく時代を動かす、その時が来ていると思います。今、本気で勝負をかけないとその先はない。国家戦略特区の指定、労働時間規制を解体して百数十年の労働者の闘いの歴史を全部破壊する大陰謀、全てを民営化・競争に叩き込む、社会保障制度解体など、あらゆることが進んでいる。生きることすらできない現実が進行している。こうした全てを引き受けて、具体的な運動、実践を通して展望を示していく時に来たと思います。
 11月労働者集会にむかって訴えたいことは、国鉄闘争全国運動が切り開いてきたものは、全国の仲間たちが実現してくれた僕らの誇りともいうべき地平です。これで全国の各地区・職場のすべてに分け入って組織していくことです。
 全国各地区で網の目のように国鉄集会を開いてほしい。今まで関わってくれた人が来ればいいという考えを全部捨て、我々が事を始めれば怒りの声を集めることはできると確信をもって、その地域に応じたやり方で直ちに闘いを始めないといけない。
 特に、解雇撤回・JR復帰判決を最高裁に求める10万筆署名を本当に10万筆集めることです。今は6万筆を超えました。職場や地域に訴えた地平は大きいと思う。多いところでは一つの県で100を超える労働組合から署名が寄せられている。我々の闘いは、体制内的勢力によって徹底的に分断されてきた。しかし、国鉄闘争全国運動の前進で、そうしたものが全て崩れようとしている。我々の訴えを多くの人が注目している。労働運動が解体されたことに対して、このままではいけないという思いが強まってきている。10万筆署名運動で切り開いた地平で訴え、共に議論し、地域や職場に闘う労働運動をつくっていく新たな挑戦に打ってでなくてはいけない。
 やれば絶対間違いなくできるものがある。それを総結集させる場として、11月集会を開きたい。勝負をかけたいと思っている。
 そのためにも集団的自衛権・改憲を撃つ8・17集会(別掲)に総結集し、秋には地域に分け入る。そうしたあらゆる力が11月集会に結集していくことを目指したい。
 もう一つ秋にむかって勝負をかけたいと思っているのは国際連帯闘争です。6・8集会に、韓国鉄道労組の元委員長、ソウル地方本部の委員長が来てくれて連帯闘争が始まった。日本でも改めて国鉄分割・民営化反対闘争が勝負だと言ってきた。今まさに民営化と激しい闘争の渦中にある韓国鉄道労組と連帯闘争が実現した。これは本当に大きい。
 日本での国鉄分割・民営化は27年前のことですが、韓国の鉄道民営化反対闘争と結びつくことを通して、日本における民営化反対闘争が現在の最先端の課題として甦った。ここで勝負しなくてはいけない。日本と韓国の鉄道労働者が連帯し、新自由主義を打ち砕く展望をつくりあげていくことができる。そういう新たな訴えを発する集会にしたい。韓国鉄道労組と連帯したということは、日本で民営化反対の大闘争をつくりあげる責任をもったという意味がある。そうしなければ連帯と言えない。
 したがって、11月労働者集会は民営化と戦争に反対する労働者の新たな出陣式にしたい。3労組の中でも議論して一致できると思う。時代が変わったのだから今までの延長線上で考えるわけにはいかない。
 さらに、3労組と国鉄闘争全国運動の4者の呼びかけのもつ意味は、大きく動く時代の中で決定的に大きいと改めて自分は思う。ここから闘う労働運動を甦らせていきたい。安倍政権を打倒する集会にしたい。労働運動が力を取り戻した時に、あらゆる労働者の怒りを一つにする可能性が生まれてくる。

8・17集会は戦争への怒りの総結集だ

聞き手 8・17集会の成功、そして秋にむけて、具体的取り組みの課題を話して下さい。

田中 8・17集会は、労働運動を再生させようという敷居の高い困難な課題に比べて、もっと広範な戦争に反対する怒りの声を結集させることができる、原発への怒りを結集させることができると思います。
 そういうことを本当に力あるものとして団結させられるのは、労働運動が力を取り戻さないといかない。労働者が団結して職場から立ち上がることが持つ求心力、全体を包摂する力はやはり大きい。
 逆に言うと、総評労働運動がダメになった過程は、労働者がそういう力を持っているのに、自ら放棄して賃金とか労働条件のことでしか闘わなくなった。全体を大きく包摂していく力をもっていながら、労働運動が魅力を失い、総評は解散に追い込まれていった。そうじゃない闘いをつくらなくてはいけない。
 反原発闘争で明らかなのは、原発の裏に控えているのは原発村とか原発マフィアと言われている支配階級の資本の連中です。世論も操作して進めてきたことです。これを打ち砕かなくてはいけないことは誰でもわかっている。しかし、敵はカネも物質力も投入し、現実の困難さ、危険だと思いたくないという心情につけ込んで分断している。これに対して、闘う側が迫力で敵に勝ちきらなくてはいけない。ストライキを通してそういうものがつくられたから、仮設住宅の労働者も含めて動労水戸の闘いに注目することが起きた。生半可では通用しない現実が福島にはある。
 8・17集会は、集団的自衛権が出てきたので情勢が鮮明にしてくれた。今までも営々とした努力で、8・15集会が何年も継続されてきた。今年は日曜日に変更して会場も日比谷公会堂でやると決断した。その背景には安倍政権の反動的突進で、今まで息を潜めていた反動が一斉に噴き出してきた中で、決断した。決断は正しかった。公明党の屈服もあって集団的自衛権の行使容認の閣議決定まで行われた。本当にまなじりを決して闘う時が来た。大きく構えておいて正解だった。
 8・17集会には、参加すればいいのではなく、自分の周りにいる危機感をもった膨大な仲間の怒りと人間を組織することだ。特に、青年、学生は自ら戦争に反対する闘いをつくって集会に乗り込む位の気概をもって取り組まなくてはいけない。あらゆる層、年代を包摂できる。戦争が何をもたらすのかを思い知らされている年代の人もまだいる。戦争に反対するあらゆる人々の組織化だ。生産の現場にいる労働者を先頭に青年、学生を総結集させることが必要だ。さらに女性たちこそ組織することだ。常に戦争反対の闘いの先頭に立つ力を持ったのは女性の闘いだ。我々の運動がすべてを獲得していく力、組織する力を持つ、そう考えて成功させることだと思う。
 8・17集会の組織化と国鉄闘争で地域や職場に分け入った組織化、この2つが全力で推し進められた時に、11月集会は成功するのではないかと思います。
 秋の闘いの課題は、10・1外注化阻止の郡山工場決戦を焦点に押し上げて闘う。そのためにも全国各地で国鉄集会を開催して総決起することです。郡工の闘いは当該だけの闘いではない。国鉄闘争全国運動の地平で、あらゆる職場、地域から今までのあり方を全部変革する決意で総決起することです。
 反原発闘争もいよいよこれからです。
 集団的自衛権をめぐって、職場、学校、地域のすべてで攻撃は始まる。闘いを開始することです。秋の臨時国会も始まる。集団的自衛権行使に関わる関連法や、労働法制の改悪(残業代ゼロ法)、労働者派遣法の改悪などすべてが動き出す。ここで総決起しないでいつ闘うのかということだと思います。政治的状況も職場の状況もすべてが動き出す。
 戦争と民営化反対の11月集会へ、今こそ前に出る、前に向かって共に闘いましょう。