月刊『労働運動』34頁(0295号08/01)(2014/10/01)
労働組合運動の基礎知識 第1回

小泉義秀(東京労組交流センター事務局長)
固定残業代というごまかし
労働基準法第37条は、時間外労働に対する割増賃金の支払いを規定しています。しかし小竹運輸グループにおいてはその割増賃金が、時給600円しか支払われていません。通常残業も深夜割増も一律600円です。「固定残業代・見なし残業代が別途支払われている」という理由でごまかされてきたのです(9月号中村委員長原稿参照)。固定残業代、見なし残業代というのは「あなたにはあらかじめ50時間分の固定残業代を支払います。時間外労働が月に40時間でも50時間分払います。もし50時間を超えたらその分は別途割増残業代を支払います」という労働契約を結んだ場合です。これなら労基法違反にはなりません。
労働者の側も時間外労働をしなくても残業代を受け取れるのですからそういう契約には応じるのが一般的です。しかし現実にこういうケースはほとんどなく、時間外残業をごまかすために固定残業代、見なし残業代というのがあるのです。逆に関西生コンなどの労働組合の強いところでは残業をしなくても何時間かの残業代を労働者全員に支払わせているケースもあります。
その上で重要なのが、割増賃金を計算するための基礎賃金です。割増賃金の基礎となる賃金には、労基法第37条5項で「家族手当、通勤手当、その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない」との定めがあります。しかし、家族手当でも通勤費でも一律に1万円などの形で支払われている手当ならば割増計算基礎額に算入しなければなりません。普通の手当はすべて割増計算の基礎額に算入しなければならないのです。
60時間超の時間外労働は5割増し規定
―中小は除外さらに、労基法37条1項に時間外労働が60時間を超える場合は60時間を超えた分の時間については割増賃金を5割にしなければならないと定められ、2010年から施行されています。しかし中小企業は除外されています。小竹運輸のような企業を救うための除外規定です。