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■時代を解く 1破滅へまっしぐら アベノミクス―株価操作に年金財源も投入

月刊『労働運動』34頁(0303号08/01)(2015/06/01)


■時代を解く 1

破滅へまっしぐら アベノミクス―株価操作に年金財源も投入


藤村 一行(動労千葉労働学校講師)

 図のように、安倍政権の再登場(2012年12月)と重なって円安と株高が始まった。「超金融緩和」の断行を掲げたことが円安のきっかけとなった。
 株価は、超金融緩和と超低金利状態をベースに投機資金をよびこみ上昇、今年4月統一地方選時には15年ぶりに日経平均2万円を超えた。だが5月に入り株価は乱調化、下落する可能性が高くなっている。
 安倍の意を受け日銀総裁になった黒田は、13年4月「異次元金融緩和」を打ち出し、2年で2%の物価上昇率(緩やかなインフレ)を達成し「デフレ脱却」を実現すると約束した。だが、その「公約」は全く実現していない。安倍政権は今年も「官製春闘」で一定の「賃上げ」を演出したが、労働者の賃金は実質的にも名目的にも低下している。

「異次元金融緩和」の本質

 非正規職と低賃金労働の拡大という関係が土台にある以上、消費の拡大と投資の拡大が一体で進む「好循環」は生まれない。マイナス成長に落ち込もうとしているのに株だけは異様に高いのである。
 安倍は日銀に再追加の金融緩和措置を要求している。
 日銀は、昨年10月の追加緩和で国債等購入額を年間80兆円に増やした。15年度の政府予算における国債発行額は約40兆円だから、新たに発行される国債の約2倍の国債を銀行から買い上げ、その分だけ日銀マネーを供給している。だがこのような「金融緩和」を続けても経済の実体面での「資本の増殖」につながらない。日銀マネーは民間銀行の日銀当座預金にとどまり、ただ国債の「爆買い」だけが進んでいる。これで国債バブルと株式バブルが生み出されている。

国債を肩代わり

 これでは実質的に国の借金を日銀がそのまま肩代わりする「財政ファイナンス」である。安倍は、財政再建など不可能と判断している。その行き着く先は、国家財政の全面破綻と悪性インフレ。日本経済ははっきりそこに向かっている。
 安倍政権は、株価維持のためなら何でもする腹を固めている。それがアベノミクスの命なのだ。安倍は、日銀資金だけでなく、手を付けてはならない年金の基礎的財源部分をも含めて莫大な公的資金を株式運用に投入している。

株式バブル崩壊の足音

 そのやり方はアメリカですらやってないリスキーなもの。株価が下落した時には年金財源が打撃を受け、給付が保証できないことになる。安倍政権は、年金受給者(労働者)のための最低限の配慮もなしに、株価バブルの維持のためにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)を強制して、昨年10月からこうした運用に踏み切らせている。それでも株価バブルと国債バブルの破裂は防げない。
 安倍政権はあらゆる意味で、破滅に向かって突進している。戦争国家化・改憲・国家改造攻撃はこうした面からも待ったなしの攻撃となっている。