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労働組合運動の基礎知識第20回 団交拒否・不誠実団交

月刊『労働運動』34頁(0315号11/01)(2016/06/01)

労働組合運動の基礎知識 第20回


小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

団交拒否・不誠実団交

 労働組合法第7条の2号は団体交渉拒否、不誠実団交の定めだ。小竹運輸グループ労働組合の茨城県労働委員会の4・20勝利命令の大きな柱が経営法曹・石嵜事務所との闘いだった。
 団体交渉の当事者は労働者であり、労働組合だ。しかし石嵜事務所の前嶋や安藤弁護士らはそのことを否定する。団交場所は会社が一番良いのは当たり前だ。運転手が仕事から帰ってきて、会社の中で団交を行えばよい。しかし彼らは当初から会社から車で30分もかかる守谷駅周辺を指定してきた。仕事が遅くなり三役が団交に間に合わないこともあった。場所問題でもめて団体交渉が開けないことが続いたのだ。小竹運輸との攻防では1年近く団体交渉が開けないことが2回もあったのはこの問題だった。
 第2は、団体交渉の決定権を持つ経営者が団交に出てこないことだ。課長や部長が出てきても小竹正雄以外の者は何の決定権もない。前嶋・安藤と社労士が団交の前面に出てきてまともな交渉を行わせない。「小竹運輸以外のことにはお答えできません」「団交の発言者を指定する権利はありません」と会社の部長や課長にしゃべらせないで弁護士がべらべらとしゃべり時間を費やす団交を行うのだ。全権委任を受けていると言いながら弁護士も何も決定権はない。形式的に団交を行うだけだった。茨城県労働委員会はこうした弁護士主導の団交のすべてのやり方を不誠実団交と認定したのである。

労働委員会制度そのものを否定する暴論を展開

 東部ユニオンアイ介護サービス分会の中労委(係争中)での「補充申立書」を書いたのは前嶋弁護士だ。この「補充申立書」の主張は労組法7条2号についての従来の労働委員会命令や裁判の判例を全否定した、1949年に改正された労組法そのもの、不当労働行為制度そのものを否定する暴論だった。前嶋らはこの論理を小竹運輸の労働委員会・団交にも適用してきた。
 「日本の労働法制においては、労基法や最賃法で労働条件の最低水準を定めつつ、それ以上の労働条件については、労使間の自主交渉によることを原則としている。そして労働組合としては仮に団体交渉において行き詰まり迎えたとしても、争議権(ストライキ)を行使するという強大な権利が認められているのであるから、これを行使することによって、自己の主張を貫き通す途があるのである。それにもかかわらず、労働組合が自主交渉によって解決する道を模索することをせずに、単に『不誠実』だということをもって不当労働行為救済申立を行い、行政が、使用者に対し、団体交渉を『拒否』しないという労組法の要求を超えて、団体交渉における『誠実さ』を過度に要求することは、自主交渉原則の否定を意昧する」「単に『不誠実』という一事をもって団体交渉拒否の不当労働行為を認定することは、労働組合の自主交渉力を減退させることにもなりかねない」
 これは2016年経労委報告の基本的立場でもある。小竹運輸グループ労働組合はこの経団連=経営法曹のでたらめな論理と行為を粉砕したのである。