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労働組合の決起こそ住民と結合する!―高浜原発再稼働反対舞鶴大行動

月刊『労働運動』34頁(0325号04/01)(2017/04/01)


絶対反対で展望を語る! 労働組合の決起こそ住民と結合する!
―高浜原発再稼働絶対反対2・26舞鶴大行動をたたかって―

長岡達也(京都府職員労働組合舞鶴支部 支部長)

 原発反対の集会でよく「福島を忘れない」という言葉が使われています。福島を「過去のこと」ととらえるような言い方で、少し違和感があります。
 原発事故の収束作業は、実際のところまだ何も始まっていないに等しく、汚染水をはじめとした放射能汚染は広がり続けています。健康被害は恐らくこれからじわじわと増え続け、帰りたくても帰れない現実は決して終わりません。政府が、復興キャンペーンと帰還強制、避難者切り捨てを進める中で、福島の怒りは6年を経て収まるどころか逆に爆発していく情勢だというのが本質だと思います。
 今、高浜も大飯も、原発の稼働へ向けた膨大な工事で特需状況になっています。舞鶴市の一般会計予算総額が年間350億円程度なのに対して、現在行われている高浜原発や大飯原発の安全対策等の工事は何千億円という額です。そこまでして原発を動かそうとすることにあきれてしまいますが、これこそが資本の姿だと妙に実感できる状況です。そして、その地元への経済的影響は決して小さくありません。
 一方で、高浜原発の老朽化した1、2号機の運転延長に反対する意見書が、直近の地元である音海地区から出され、看板も立てられるなど、電力資本が「制圧」していた地元からの反乱がついに始まりました。確かにその意見書は40年を超えた老朽原発の運転延長反対ですが、「原発で地域は何もよくならなかった、逆に地域を衰退させるばかりでもういらない」というのが結論です。再稼働の焦点となっている3、4号機ももう30年を超えています。
 この間、原発立地地域の住民は、避難計画や避難訓練などがアリバイ的内容でしかないことを見抜き、福島の現状を知る中で、政府や資本は地元を切り捨てる、地元を守る気はないと、はっきりと分かったのです。自治体労働組合が先頭にたって、この地元の怒りと結びつくたたかいを爆発させれば、必ず原発の再稼働を阻止することが出来る。そのたたかいを絶対にやろう。「2・26舞鶴大行動」はそうした思いで取り組みを出発しました。
 昨年11月のソウルの100万民衆総決起に参加して圧倒され、「ソウルの人口1千万人で100万人やから、舞鶴なら人口比で1万人の総決起で原発止める集会しよう」と私が言ったことが、1万人集会の始まりです。これは決して無謀な思い付きではなく、いまどんな調査をしても原発再稼働反対が賛成を圧倒的に上回る結果となります。政府・電力資本の方が、圧倒的反対の中で、展望なく再稼働を強行しようとあがいているのです。舞鶴大行動は、その力関係を表に出して突き付ける地元のたたかいとなるものです。
 しかし、どうやって1万人。「舞鶴で1万人集まるのは花火大会ぐらい。花火上げるには2月は寒い。坂本龍一呼んでも1万は無理。大雪降ったら誰も来ない」などと「議論」をしながらも、「絶対反対」でしか人は集まらない、展望を語れない内容に人は来ない、労働組合の決起こそが住民と結合する、ということが核心です。
 今回は、実行委員会でこれまでにない規模で宣伝活動を展開しました。大胆に地域と労働組合に飛び込み、現場の怒りと結びつく。体制内労組の幹部がどう難癖をつけてこようとも、現場の労働者に呼びかける。その中で、集会参加に至らなくとも多くの賛同を得ることも出来、当日の大行動参加者500人の背後に間違いなく「1万人」がいることを肌で感じました。
 同時に、数少ない組合役員で運営しているレベルの京都府職労舞鶴支部であっても、「自治体の労働組合」が原発に絶対反対でたたかっていることの決定的位置に確信を持つことが出来ました。世の中にとって自治体はやはり権力機構であり、個々の職員の思いがどうあれ、自治体は「原発を動かす」ための業務をしているとしか思われていません。その自治体の職員が原発に反対する集会を主催することが、こちらの想像以上に住民に驚かれたり共感されたりする。「被曝労働は拒否する」と避難計画に対決する方針も、決して我が身を守るためのエゴでないと分かってもらえる。
 当日は、地元の参加者から、「3・11直後から原発反対の運動をしてきたが続かなくなっていた。でももう一度やれる力をこの大行動で得られた」と感想が出る充実した内容となりました。
 前夜の「祝福の海」映画上映会に始まり、当日は朝から、舞鶴支部組合員のフルート演奏、希望の牧場ふくしま吉澤正巳さんの講演、原発反対のバンド演奏、1月末の大飯高浜原発ツアー報告。
 午後のメイン集会では、福島診療所建設委員会から佐藤幸子さん、動労水戸の曾澤憲一さん、照沼靖功さん、池田学さん、愛媛県職労、京都府職労舞鶴支部、婦人民主クラブ、敦賀の斎藤征二さんが登壇し、アピール。
 JR東舞鶴駅までの大行進から、会場に戻って大交流会と1日中のプログラム。そして甲状腺エコー検査をはじめ、星野絵画展や各団体による展示・販売・飲食のブースから、子どもの広場、パパ・ママしゃべり場、労働相談まで、多彩な企画も同時開催。
 元々は「とにかく人を集める手段」として考えはじめたことながら、参加各団体がこの大行動を運営する主体になって、準備宣伝段階からともに活動し、みんなで成功させる大行動となったことで、格別の高揚感と新たな団結が生み出されました。
 3月末に出される高浜再稼働差止仮処分の高裁判断によっては、4、5月に大きく情勢が動きます。労働組合が責任をとる立場でたたかうことでしか、労働組合と地域が一体となった民衆総決起を生み出すことは出来ないと思います。現場のたたかいで、原発再稼働絶対反対、被曝労働拒否のストライキに立ち上がる団結をつくり、社会を変える力を自らのものにする。その展望がはっきりと見える情勢です。