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2018年の年頭アピール 連合崩壊情勢下、職場から労働組合を作り直そう!

月刊『労働運動』34頁(0334号02/01)(2018/01/01)


2018年の年頭アピール
田中 康宏(全国労組交流センター代表・動労千葉委員長)
連合崩壊情勢下、職場から労働組合を作り直そう!


※職場闘争、改憲・戦争阻止、労働法制改悪阻止に向けて闘おう!

【1】取り巻く情勢と課題

 昨年末から今年にかけても戦争の危機が現実になっています。日本が空対地ミサイルで敵基地を叩くための巡航ミサイルを配備するまでになり、それも合憲だと言っています。
 さらに朝鮮戦争の危機に対して話し合いで収めようとすることに対して、日帝は反対するなど恐るべき現実が始まっています。それが改憲という現実を生み出しています。自民党は戦後自主憲法制定を掲げていましたが、今、政治日程にのせようとしています。戦後七十数年間の最大の歴史の分岐点です。本質的には資本主義が発展の限界に達して戦争を生み出している、もっと大きな意味での転換点でもあると思います。しかも改憲をクーデター手段でやろうとして、それが昨年の総選挙でした。国難を掲げて戦争の危機を煽って国会を解散してしまう。衆院選過程で、民進党は崩壊し、連合も崩壊過程に入りました。すべてが労働者階級の闘いが問われている歴史の巨大な分岐点だと感じます。さらに、天皇の代替わりで天皇制を前面に立てすべてを押しつぶして、改憲国民投票を強行していこうとしています。一切合切が大きな歴史の分岐点だと思います。
 戦後の労働法制が最後的に解体されようとしていることも、重大な歴史の分岐点です。戦後の日本支配のあり方は、労使対立の中から憲法より先に労働法が確立されているわけです。それが土台になって憲法という形をとり、戦後革命と敵の攻撃の中で戦後支配体制がつくられた。その根幹である労働法制がその後切り崩されてきた。安倍政権は、最後の一撃を打ち下ろそうとしている。
 戦争の危機、改憲攻撃、戦後労働法制の解体などが僕らに突きつけている歴史的課題は本当に大きい。2018年冒頭から、こうした問題をめぐる全ての戦線にわたる攻防が始まっている。そのことを強く自覚しなくてはいけないと思います。
 一番重要なことは、国鉄分割・民営化以来の新自由主義攻撃の中で、日本の労働運動が後退させられ、今もその力を取り戻せていない状況があることです。各職場で闘う労働運動をつくろうと毎日奮闘している人は身にしみて感じていると思いますが、連合幹部の屈服と崩壊状況がひどいだけではなく、労働組合運動が労働者の権利や誇りを守ることが全くできないまでに後退していることです。絶対に戦争を止めると考えると、闘う労働組合をもう一度石にかじりついても作り直すことが必要です。全国労組交流センターは
結成以来、総評解散・連合結成から30年間闘ってきましたが、その蓄積に甘んじてはいけない。もう一度、結成の原点に返って、闘う労働組合をたとえ小さな芽からでも甦らせるために、全力を尽くさなくてはいけない時が来たと思います。
 この時代を見た時、闘いの方針は第一に、大変さに負けずに労働組合を作り直すことです。
 第二に、改憲問題が敵の側から刃を突きつけられている中で、労働者の改憲反対の政治闘争をあらゆる人たちと連携して作り出すことです。とめよう戦争への道!百万人署名運動、婦人解放運動、部落解放運動など諸団体の運動の蓄積を引き出して、労働者の責任で戦争政策と闘うことです。労働運動の歴史は、反戦政治闘争と職場闘争を一体で闘ってきました。昨年の11月集会もその出発点をつくろうと思ってやりました。この成果を発展させていきたい。
 第三に、安倍政権の「働き方改革」の労働法制解体に反対する闘いも、改憲阻止の闘いと一体ですが、独自領域です。連合、全労連、全労協も闘いを放棄している中で、我々が闘いを組織することが求められています。自己満足ではなく、社会的影響力を作り出すことだと思います。様々な課題、被曝労働拒否闘争、星野闘争も取り組みが必要です。
 現場からの労働運動再生の闘い、2020年改憲阻止の闘い、労働法制解体反対の運動をつくりあげることに、全力を尽くして直ちに始めないと手遅れになってしまうと思います。
 その全体の中心に国鉄闘争がすわらなければいけない。すべては国鉄分割・民営化から始まったからです。国鉄戦線で誰も出来なかった地平を切り開いてきたからです。改憲も労働法制解体も30年間手が着かなかった。新自由主義・資本主義の崩壊の中で、敵の側も後がなくなって一挙に反動が噴き出してきています。本気になってこれまの継続ではなく、本格的発展に踏み出す時が来ています。

(写真 CTS本社抗議行動に正規・非正規一体で決起)

【2】動労千葉の闘い

 動労千葉もこれまでの闘いからの飛躍をかけて、新しい闘いに立ち上がらなくてはならないと思います。国鉄闘争が重大な決戦に入っているからです。第3の国鉄分割・民営化攻撃です。これは比喩(ひゆ)ではなく、文字通り第3の分割・民営化攻撃です。第1は1987年の国鉄分割・民営化、第2は1999年のシニア協定による業務外注化・強制出向・非正規職化攻撃、そして第3は、民営化・外注化を今までのレベルではない、何百という会社に分社化して強制出向・転籍する攻撃で総非正規職化、持ち株会社化する攻撃です。
 ここ3~4年に国鉄分割・民営化のひずみが明らかになっています。IR東日本では60歳で定年になる人が1万8000人いて大量退職になります。5年の雇用延長はグループ企業で雇用するので、下請け会社には人があふれ返ります。労働者同士で雇用先の椅子をめぐって争うことになる。すると外注化を拡大しろという声が出てきます。資本は労働者をそこに追い込もうとしているのです。賃下げ、転籍など選択肢のない文字通り第3の分割・民営化攻撃です。
 動労千葉は、全支部大会、全分科会で、この第3の分割・民営化問題を執行部が訴えました。大量退職問題は、自分たちの行き場の問題ではなく、全労働者の未来の問題だと訴えたのです。国鉄分割・民営化で労働運動全体がつぶれた時と同じ攻撃です。動労千葉が闘うしかない。全支部、全分科会は「頑張ろう! 全力で闘おう!」と言ってくれました。
 2017年10月10日に東京地裁で出向無効確認訴訟の判決が出ました。今、JRがやろうとしていることは、安倍政権がやろうとしていることだと、判決で鮮明になりました。この判決をぶち破って、外注化阻止闘争、分社化・転籍阻止闘争をやりぬこうと決意を新たにしたところです。強制出向は、第3の分割・民営化攻撃です。動労千葉、動労総連合は、出向協定を結んでいません。労使合意も個別合意もしていません。しかし「前例はないが、就業規則があるから合法だ」という判決です。労働組合の存在そのものを全面否定する判決です。偽装請負についても、「違法性の程度は看過できないほどのものではない」「不利益も看過できないほどのものではない」「出向が原則3年というのも関係ない。10年間くらいの出向予定だ」「出向したまま退職しても看過できないものではない」という判決です。これでは労働者の権利はあってなきものになってしまいます。
 判決と一体で、JRは、「水平分業」という分社化に進むことを前提としたエルダー制度の新提案をしてきました。シニア制度以来の闘いは、18年間闘って、NTTのような分社化を阻止してきました。3月17日ダイヤ改定を焦点にして組織の総力をあげて闘うつもりです。
 もう一つの柱は、「選択と集中」との闘いです。北海道をはじめ廃線化攻撃が激化しています。外注化と表裏一体の攻撃です。年末にダイヤ改変が行われましたが、地方の全面切り捨てが行われています。千葉では、内房線をめぐって、動労千葉のストライキと地域ぐるみの闘いが成功しています。「内房線と地域を守る会」(松苗禮子代表)が11月29日、JR東日本と国土交通相に、「JR東日本内房線の利便性及び安全性向上を求める署名」5467筆の地域沿線などの住民からの署名を提出しました。JRの地方切り捨てに対して全国で初めて国会質問が行われました。今年3月ダイヤ改定では内房線が1本、外房線が5本の列車削減が行われようとしています。外房でも闘いを組織していくつもりです。3月ダイ改にむけて第3の分割・民営化反対闘争を年末から準備してきました。
 職場では、次々と乗務下ろし、職場規律改悪攻撃が出されています。昨年10月にJRは水戸支社をモデルに車掌の一人乗務などの提案を検討していました。これとの闘いをJR本体における組織拡大闘争として展開していきたい。東労組の裏切りに対して、職場からの怒りの声が噴出しています。さすがに東労組も合理化をのめず、当局から無視されても自己保身のために必死です。当局は提案できず、3月のダイヤ改定で提案しようとしています。運転士は今まで、早朝、車両基地から列車を運転して出区し、昼に入区、夕方また出区して、夜に入区する作業をしていました。この出区、入区を外注化する提案をしようとしています。運転士は本線運転だけをやれという攻撃です。しかし、これでは休みはとれない。若い運転士しかできなくなります。特急も車掌一人乗務にしたが、破綻しました。ダイヤ改定をめぐる攻防を重大な焦点にして闘っていくつもりです。
 CTS(JR千葉支社のグループ会社である千葉鉄道サービス)の闘いの地平は大きいと思います。1999年以来、12年間33人の首をかけて外注化を阻止してきました。今、CTSに動労千葉の組合員は、エルダーで行ったJR本体の組合員が二十数人、CTSの組合員が15人加入しました。これは大きな地平です。2018年4月1日の無期転換を前に、昨年4月1日に「契約5年目で試験を受け、新規採用になる」という就業規則改悪を行おうとしました。これは労働者の首切り、労組破壊の攻撃です。これに対して、CTSの労働者が立ち上がりました。怒りが乾いた木に火がついたように炎上したのです。CTSの執行部も「この提案をのんだら会社には来られない」というほどの現場の怒りでした。今年4月1日で5年以上働いている人は260人います。全員の無期転換をかちとれる展望が出てきました。これは大きな地平です。しかし、問題は何一つ解決していません。賃金は、最低賃金ぎりぎりです。無期雇用転換闘争の前進、非正規職撤廃闘争、賃金についても深夜手当など7倍も格差があるので、具体的に闘う。裁判闘争も辞さず闘って、具体的展望を切り開いていきたい。
 反合理化・運転保安闘争も執念をもって闘っていきます。不利益変更なども職場に火をつけて闘うつもりです。無期転換闘争の継続・発展をしていきます。CTSでは、清掃作業をしながら死亡した労働者がいます。怒りの炎が燃え上がっているので、当局を追及しています。全ての条件が整っているのです。 全面外注化攻撃に対して、JR本体(正規)とCTS(非正規)が一体となって闘うことです。労働運動の再生をかけて闘います。今、CTSには800人の労働者が働いています。1割の80人がいればCTSの半数はとれます。すでに260人の無期転換はかちとっているのです。後の労働者もほぼ無期転換をかちとれるまで来ています。これを達成したらリーフレットを作って、2018年4月1日の無期転換をめぐる大量解雇攻撃に反撃する闘いとして全国の労働組合に持ち込みたい。
 無期転換攻撃との闘いは、安倍の「働き方改革」攻撃との攻防でもあります。「無期転換雇用問題連絡会」(仮称)を立ち上げて、全国的な連絡をとることもやりたい。この背景には、昨年秋から年末に出された、自動車大手が雇用している契約社員に6か月の無契約期間を設けて5年働いても無期転換しなくて済む攻撃をすでに行っていたことや、東北大での3200人の契約職員の解雇問題(うち669人のみ雇用)、東大での契約職員の解雇(就業規則改悪は撤回させた)などを見ていて、全国全産別全職場のテーマだと実感したからです。しかも2018年4月1日をめぐる過程で、450万人もの労働者が解雇攻撃を受けます。これは戦後最大の雇用破壊攻撃であり、国鉄分割・民営化以来の攻撃です。雇用全体にもたらす破壊攻撃と闘うと宣言し、闘いを始めると決意したが、これは勝ち抜ける闘いだと感じています。
 10・10判決は、ぎりぎりの線で出しているが、労働局も偽装請負の可能性があると明らかにしています。18年間胸を張って外注化攻撃とJR本体で必死になって闘って、正規と非正規の団結を作り出してきました。CTSの無期転換攻撃の時に正規の組合員がストライキに決起したのです。必ず団結が生まれます。この闘いに立ちあがりたい。
 国鉄1047名解雇撤回闘争については、全ての労働者の闘いに押し上げていくことが必要です。全国の力で国鉄分割・民営化と闘う。不当な労働者の解雇を不当労働行為でやった。JRが指示した事実も暴いた。井手文書を踏まえて、JRに責任があること、JRに解雇を撤回させることをやっていく。JRは「当事者ではない」と主張し、団交も拒否して、労働委員会での斡旋も拒否した。不当労働行為で新たな労働委員会闘争を起こすつもりです。団交に応じ、解雇を撤回させ採用させる新たな闘いを開始する。元国労闘争団だった北海道、九州、秋田の労働者が動労総連合に結集し、動労総連合1047協議会を結成しました。動労千葉争議団と一体となって組織体制を整備し、運動していける体制を整えて、国鉄分割・民営化を弾劾し、解雇撤回を推し進めたい。
 さらに、常磐線全線開通攻撃との闘いは、福島原発事故への怒りを組織し、日帝支配を揺るがす闘いです。国鉄闘争が労働運動全体の闘いの先頭に立つ、改憲阻止闘争の展望を切り開く闘いだと思っています。

【3】職場から労働組合を作り上げる

 11月集会をやって強く感じたことは、本当に職場から労働組合をつくりあげていかなければ勝負にならないということです。外に向かって呼びかけただけではなく、自分たち自身が国鉄分割・民営化の当事者、戦後労働運動解体の最大の当事者である僕たち自身が、職場の困難な状況の中で、組織的にも大量退職で再雇用の組合員が正規よりも多くなる。「ここまでやって頑張ったから、もう少しおとなしくしていいかな」と組合員全体が思ってもおかしくはない状況ではあるのですが、僕たち自身がこの情勢全体にどう立ち向かうのかをぬきに言うことは無責任だと思い、何か月もかけて職場の仲間たちと議論し、組合員の顔つきが明るくなったり、やる気になったり、議論を重ねて、組合員全員の力でつくりあげてきたので、各支部大会でもいつになく強固な団結がつくれてうれしかった。
 あらゆる職場・産別で、様々な条件に合わせてでいいと思うのですが、そういう努力をすることが、遠回りだけれど、この時代に立ち向かう一番の力になるのかなと思います。どんな立派な方針でもそれに力を与えるのは、現場の労働者の力しかありえない。それ以外の力などどこにもないんです。だから1人、2人の職場でも、やることは一律ではないが、そこで頑張ってほしい。
 今の職場の状況は困難で、多くの労働者が労働組合や資本と闘うことに無関心でいると思う。それは、現状の大変さの中で、無関心でないと職場で生きていけない状況がある。ある意味では、労働組合と言っても「無関心だ」とマスコミで宣伝されることも現実だ。しかしそれは、労働者が、団結がどれほど力になり、誇りを取り戻したり、力を感じたり、大切なものかを実感したことがないからだ。
 しかし、僕らの経験からするとJRやCTSの仲間を見ていても、本質的には現実に闘いや団結があれば、無関心な労働者は一人もいない。そういう運動を、言葉だけではない闘いや運動を自分自身が作り出すことが必要だ。そこで立ちすくむ連続かもしれないが、どんなに困難でも、ごまかしたり、あきらめないで、労働者の力を信頼し、必死の努力で労働者にかみ合っていける現実の運動をつくっていく努力が必要だ。そういう土台の上にしか、戦争や改憲に反対する力は作れない。
 もちろん逆もあっていいんです。「私は戦争・改憲に反対だ」という労働者もいるはずです。だからどういうところから入っていくかは、本当に多様であっていいと思いますが、労働組合をつくりあげることで、戦争反対ということには絶対に一歩も譲らない闘争を自分自身で組織することです。職場で戦争反対の運動を作り出して、街頭にあふれるような労働者階級の戦争反対の隊列を作りたいじゃないですか。そういうところでは、1ミリも労働者階級との関係ではごまかしてはいけないと思います。
 この時代はすべてが矛盾のルツボで、いくら賃金とか労働条件の改善を繰り返しても労働者の解放につながらない。だから社会の根本的変革、革命が本当に問われる時代に来ていると思っています。安倍ですら生産性革命本部をつくっていて、そこまで支配階級の危機が深まっていると考えた時に、僕らの側が「この社会に革命が必要だ」と真正面から言わなくはいけないと思います。
 この課題は、曇らずに革命を訴えると同時に、そうであるが故に、もっと大事なことは、革命という言葉や戦闘的言葉だけで、本当に立ち向かわなくてはいけない労働者を組織するための困難、そのためには一人ひとりの歩んできた人生があり、家族があり、経験してきたことがあり、たった一人の労働者でもどんな小さな運動を組織すると言っても独りよがりは通用しない。百人いたら百人の労働者に通用することは違うはずなんです。本当に相手と向き合えばわからないことはない。そういうことの上にしか、労働組合の団結は形成されない。そういう大変な課題から「革命的言辞」でごまかしてしまうことは、革命を遠ざけることになると思います。そういうことが本当に問われていると思います。

【4】連合崩壊情勢下の闘い

 だから総選挙の過程での連合の崩壊ということをどう見るのかということも、客観的に「連合が崩壊しようとしている。今こそチャンスだ」などということも絶対に通用しないと僕は思うんです。もちろんその通りで、僕が一番先に言い出したことです。国鉄分割・民営化で総評解散で連合が作られた。30年経てその連合も支配階級の道具としてもこのままでは通用しなくなって、現代の産業報国会になるように自民党などから手を突っ込まれ、小池からも手を突っ込まれて、ガタガタになって崩壊しようとしている。崩壊しようとしている現状の中からこそ、現代の産業報国会になっていくような反動が生まれてくるということだと思うのです。
 だけど、支配の根幹にあった連合が崩壊しようとしていることは事実で、だからこの情勢こそ30年を経て労働運動再生のチャンスがいよいよめぐってきたということではあるんです。 だけどこの認識を現実と結びつけることができなかったら百回それを言っても意味がないわけで、労働者が置かれた現実と連合が崩壊しようとしていることを結びつけて、今何をなすべきかを明確にしていくことが僕らの任務だと思います。
 そうしたことを考えた時に、今の6000万労働者には、連合をめぐって起きていることについて、重大なことが起きているんだと思っている労働者は少ないと思います。ほとんどが、もう自分たちとは関係ない、関わりないことだと見ている。それはある意味では当たり前だと思います。連合傘下の労働組合の組合員でも、連合幹部や連合傘下の組合幹部が組合員のために何らかのことをしてくれた経験は一つもない。それ以上に、尊重されたことすらない。だからもう自分たちに関わりがないと思っている。せいぜい自分たちの目の前にいる幹部たちに怒りは持っているかもしれない。
 こういう現状があるということと、労働組合の再編、連合をめぐって起きていることを見なくてはならない。例えばUAゼンセンの逢見事務局長が残業代ゼロ法を官邸で秘密合意し、憲法改悪の推進役になることも合意し、連合の中から連合をそこに引きずり込んでいく役割として育成され、連合の中には「そこまでは」という幹部たちがいて、そういう連中は小池に飛びつこうとして、それも希望の党の崩壊と一緒になって崩壊していくという事態になった。それは本当の意味で労働者一人ひとり、その子どもたちが戦争に持っていかれるのか、労働者の権利や生活のすべてが打ち砕かれるわけで、それほど深刻な、労働者にとってこれからの未来に最も大きな影響を与えることが起きています。
 しかし、その意味はつながっていない。理屈で説明するだけではダメだと思う。連合のようなものではない、労働者自身の運動としての労働組合、あるいはその芽のようなもの、それを作ることを通して、今起きていることは大変なことだ、でも現場から支配機構に取り込もうとしている労働者の腐り果てた幹部たちを打ち倒して、本当の力を取り戻すチャンスだと現実に自分たちが運動を作り出すことを通して示していけば、みんなこのことの本質はたちまちわかるのですよ。だからすべてを自らの問題として主体的に考えないといけない。今の戦争情勢、改憲情勢、連合情勢を解説したり、客観的に語ったりしてもだめだなと思っています。だからそうなった時に、僕らが訴えることはたちまち力を持ってくると思います。同じ言葉で同じことを言っていても、聞く現場労働者にとっては全然違うものとして響くと思います。
 この間、動労千葉として反合・運転保安闘争、三里塚ジェット燃料貨車輸送阻止闘争、分離・独立闘争、分割・民営化反対闘争、外注化阻止闘争を職場で闘うと同時に、労働運動の復権・再生といって、一進一退だけれど陣地を守ってきたことの意味が大きいと思います。その中で思うことは、多くの労働者と深いところまで結びついていく力、獲得力、僕ら自身の運動のリアリティと言ってもいいと思いますが、こうした力、労働運動の力というのは、いろんな面があると思いますが、正しい運動の路線も力ですが、それもその下に労働者が結びついた時に初めて力になるということだから、労働者を獲得する力です。獲得力ということは、どうやって持つのかは常に考え続ることですが、やはり今言ったことだと思います。
 現実の労働者の政治意識と、めざしている階級労働運動、これを分断しようという攻撃が常にあって、この攻撃を打ち破ってこれを結合し力を与えていくものは、本当に具体的運動だと思います。宣伝・扇動は運動を組織するための宣伝・扇動だよね。だから言葉だけで、獲得力を持つということではないと思います。そういうことを本気になって追求する時が来たと思います。その時に、必要なことはそうしたすべての力の源は、どこかほかにあるわけではなくて、われわれ自身の力の中にしかない。われわれ自身が潜在的に持っている力を引っ張り出していくような運動の力を作り出していかなくてはいけないと思います。職場闘争もそうですし、改憲阻止闘争もそうです。

(写真 11・5改憲阻止!1万人大行進)

【5】改憲阻止闘争

 われわれの改憲阻止闘争をつくりあげていく時に、例えば「総がかり行動」というものが一方にあり、いったんは「戦争だけは許してはいけない」という多くの思いを集めるわけですが、立憲主義だとか、野党共闘などという魅力のないものにすべてをずらされていきました。
 こういう現実を悔しい思いで見ていて、じゃあ我々はどうすればいいのか。そう間単に回答が出るわけではない中で、11月集会で一つの挑戦としてやってみようと思ったのは、われわれ自身の力を引き出すこと以外に新しい闘いの展望は生まれないということです。それで、多くの共に闘ってきた様々な団体に訴えて、主催者になって一緒に闘おうと、みんなの運動が蓄積してきた経験と力を貸して欲しいと訴えて1万人大行進をやってみて、やっぱりそうだと感じました。特に若い人たちが本当に見る見る表情が変わって、自分たち自身の闘いとしてやってみようとなってくれたことが本当に大きな希望で、すべての力は自分たちの中にしかないのだから百家争鳴の議論になったりとか、ぶつかったりとか、いろんなことをしながら、その過程を大事にして、それぞれの運動体なり、一人ひとりの仲間たちが自らの力を出してくれる運動の作り方をすればいいのかなと感じた。改憲と戦争に反対する運動をどうすればいいのかで感じたことです。

【6】労働法制改悪反対闘争

 それは、労働法制改悪反対の運動なども同じだと思います。この闘いは、合同・一般労組全国協の仲間たちと話していますが、そもそも合同・一般労組全国協結成の過程を考えてみると、2010年国鉄闘争の政治決着の時に訴えて作ったのです。国鉄1047名闘争が決着して闘いの旗を降ろすことはどういうことか。非正規という現実の中で、全国で無数に闘いに立ち上がっている。連合傘下や全労連傘下や全労協傘下であっても、資本の集中砲火はすべて非正規労働者に襲いかかってきます。1047名闘争が最後の砦の意味をもったわけではないですか。だからここで僕らが本気にならなかったらいけないと、各地にあった合同労組を合同・一般労組全国協にしようと自分が言い出したことです。
 そういう経緯を考えると、今の安倍政権の攻撃の最大のターゲットになっているのは、合同・一般労組全国協に結集している非正規で、本当に苦しい状態の中で闘いに立ち上がっている労働者で、なんとか希望の光をつかみとろうとして、毎日毎日闘っている仲間たちです。一番この攻撃によって最底辺まで突き落とされるのも彼らだし、だから無期転換問題の対象になっているのも彼らだし、彼らが自分自身の闘いとしてぶつかった時に、一番力を持つかなと思って呼びかけた。
 しかも今、全国各地で悪戦苦闘して、涙ぐましい努力の中で、労働組合を結成すればクビを切られる、立ち上がれば仕事をはずされという現実の中で、歯を食いしばって闘っている無数のすばらしい火花のような闘いが全国協にはあって、これを本当に○○○名の組合員がいる組織と地方組織を通して、徹底的に職場討議をして、組合員一人ひとりがその気になってもらって、それを一つの力に束ねて、労働法制改悪反対の政治的な力にしていく。これは命令的に行政的にやってはいけないと思います。一人ひとりの組合員と本当に徹底的に討議してやったら絶対力になると思います。
 しかもこれは、国鉄闘争全国運動などでも、国鉄闘争の継続を労働法制改悪反対闘争という形でつくらなくてはいけないという議論をずっとやっていて、そうすると、国鉄闘争全国運動と合同・一般全国協が合流して、安倍政権に対する労働法制解体反対闘争を社会的影響のあるものとしてつくりあげていく可能性があると思うんだよね。だからこれを広く呼びかけていきたいと思います。
 戦争反対のことも11月集会でやったことを、その成果を引き継いで発展させるという形で改憲・戦争阻止大行進を立ち上げようという論議も始めている。本当にそれぞれの主体的力を引き出す形で立ち上げたいと思っています。改憲・戦争阻止大行進を立ち上げるのは、形だけではなく、地方にもみんながその気になって作って、本当に一つの力をもった運動にしていくことが必要だと思います。11月の1万人大行進を発展させる形でやりたいと思っています。協賛団体から出された意見の中にこそ可能性があると思います。
 今年を全力で闘いましょう!
 (インタビュー)