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労働組合運動の基礎知識第40回 36協定ー時間外労働の上限規制

月刊『労働運動』34頁(0335号10/01)(2018/02/01)


労働組合運動の基礎知識 第40回
36協定ー時間外労働の上限規制


 日赤医療センター(東京都渋谷区)が医師の残業時間を「過労死ライン」の2倍に当たる月200時間まで容認する労使協定(36協定)を結んでいることが1月13日に分かったと東京新聞朝刊(14日)が報じた。
 安倍は1月22日からはじまった通常国会に、残業時間を罰則付きで規制する法案を提出する方針だ。それは100時間未満という過労死基準(80時間)を優に上回るものである。更に医師への適用は5年間猶予される。自動車運転の業務も同様だ。5年前にも医師や自動車運転業務の時間外労働規制が問題になったが、その時も5年の先送りが為され、再び5年猶予である。5年後また先送りされる可能性がある。運輸労連・産業政策部副部長の浅井邦茂は『労働調査』(2017年5月号)で「東京オリンピック・パラリンピック開催への対応も考慮して、トラックの運転の業務の施行時期が一般則の施行の5年後となることは理解する」(37頁)と述べている。
 こういう連合幹部の姿勢が現場労働者を過労死に追い込んでいるのだ。
 36協定の締結にあたっては、原則として1か月45時間(1年変形は42時間)、1年360時間(同320時間)以内としなければならないことが、「限度基準告示」で定められている。しかし、特別な事情がある場合は「特別条項」の協定をすることにより、1年に6回までその範囲内での時間外労働が可能としている。現行では労使間合意があれば残業時間の上限に制限はない。
 自動車運転の業務については、同告示の適用除外となり、「改善基準告示」の範囲内での協定となる。
 「改善基準告示」というのは1989年に拘束時間等が告示化されたものだ。正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」である。以降、労働基準法の改正にあわせて数回改正され現在に至る。
 改善基準告知の概要は①拘束時間(始業から終業までの時間)は1日原則13時間以内(最大16時間)、1カ月293時間以内、②休息時間(勤務と勤務の間の自由な時間)継続8時間以上。③運転時間。2日平均で1日9時間以内。④連続運転時間。4時間以内(連続運転時間は1回が連続10分以上かつ合計が30分以上の運転の中断をすることなく連続して運転する時間)である。
 1日16時間労働を容認している点でとんでもない基準告知であるが、これさえ守られていない職場が多い。
 あるバス会社の労使は月70時間の36協定を結んでいる。しかし現実の時間外労働は140時間を超える。1カ月単位で36協定を結んでいるので労働組合の側が36協定を締結しない態度で臨み、団体交渉を行うことは可能である。しかし最低賃金ギリギリのために残業しないと食っていけいない現実がある。労基法違反を是正すれば良いという問題だけでなく、賃上げ、1年の有期労働契約粉砕などのトータルな闘いが必要なのだ。

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)