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労働組合運動の基礎知識第42回 何処からどこまでが労働時間か?

月刊『労働運動』34頁(0337号11/01)(2018/04/01)


労働組合運動の基礎知識 第42回
何処からどこまでが労働時間か?


 前回に続いて労働時間の問題についてです。今回は労働時間の範囲について考えてみます。
 重要な基準として、労働時間とは使用者の管理・監督の下にある時間です。労働基準法はこの「実労働時間」がどこからどこまでかについては明確に規定していないので、労働組合があるかないか、職場慣行、労使の力関係で決まることが多く、簡単ではありません。
 動労東京の八潮支部の仮眠時間をめぐって書いたことがありますが、仮眠時間が休憩時間か実労働時間かはそういう例の一つです。
 ビル管理業務労働者の泊まり勤務での仮眠時間について、最高裁は「不活動仮眠時間において、労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱したということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮下に置かれていないものと評価することができる。したがって、不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には、労基法上の労働時間に当たるというべきである」と判示しました(大星ビル事件・最一小判平14.2.28)。具体的には、「本件仮眠時間中、労働契約に基づく義務として、仮眠室における待機と警報や電話等に対して直ちに相当の対応をすることを義務付けられている」として、仮眠していた時間も含め仮眠時間全体を労働時間と認定しています。
 八潮支部の仮眠時間も実はこれと同じです。しかし、労働組合ができるまではそうなっていなかったし、労働組合ができてからもこの労働時間をめぐる攻防は続いています。
 受診義務が課されている健康診断は、労働時間に入るのか、入らないのか。行政通達で特定の有害な業務に従事する労働者について行われる「特殊健康診断」は、所定時間内に行われるのが原則で、時間外割増賃金の支払義務が生ずるとなっています。
 では有害な業務でない場合の健康診断はどうなるのか。私の職場では以前、時間内に工場と契約している健康診断専門の会社が、レントゲン車を含めて医師や看護師も来て体育館のようなところで集団検診をしていました。この時は労働時間です。今は、近くの健康診断を行う専門の会社に行って健康診断をします。費用は会社負担で、行き帰りの移動時間を含めて実労働時間としてカウントされています。有害な業務でなくても会社が受診義務を課す健康診断は、実労働時間に入るのが一般的です。
 では移動にかかる労働時間についてはどうなのか。訪問介護の介護労働者が、ある利用者さんのところで2時間介護をして、その後2時間かけて移動して、また2時間別の人の介護をする。この場合、私が知る限りでは、この移動時間は労働時間にカウントされないケースが一般的です。しかし1984年8月の「労働基準法研究会第二部会中間報告」は「労働時間の途中にある移動時間は労働時間して取り扱う」と記しています。したがって本来はこの移動時間も実労働時間に含むべきなのです。

小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)