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★改憲・戦争阻止!大行進運動を 9条改憲と一体「働き方改革」法案許すな

月刊『労働運動』34頁(0340号05/01)(2018/07/01)


★改憲・戦争阻止!大行進運動をつくり出そう
9条改憲と一体の「働き方改革」法案の成立を許すな!

(写真 6・10国会闘争に動労千葉、交流センターが決起)

飯田 英貴(全国労働組合交流センター事務局長)

 今から15年ほど前、私が労働組合の専従として初めて受けた相談が、仕事中に脳動脈瘤の破裂をおこし、現場で倒れた労働者の家族からの労災申請であった。闘いの半ばで当該の労働者は亡くなり、家族が最後まで「夫を返して欲しい」と訴えていたことが、今も強く心に残っている。合同労組として全力で闘ったが労災は勝ち取れなかった。それ以来、「労働組合に何ができるのか」という思いがずっと私の中にある。そうした苦い経験もあり、安倍の「働き方改革」法案は絶対に許してはならないと強く思っている。
 6月10日、降りしきる雨の中、安倍政権の退陣を求めて2万7千人の人たちが国会正門前に集まった。過労死によって娘の命を奪われた母親は、その苦しみを「この世の地獄だ」と表現し、「同じ苦しみを背負う人が二度とあらわれないようにしたい」と訴えて高度プロフェッショナル制度の導入に絶対反対の意思を表明した。
 労働者の怒りはそれだけではない。今年4月1日から始まった労働契約法の「無期転換ルール」のスタートを前に、無期転換から逃れるために膨大な非正規労働者が雇い止めにされた。これが「非正規という言葉をなくす」と言った安倍の「働き方改革」の現実だ。雇い止めされた労働者は「これは非正規労働者に対するジェノサイド(虐殺)だ」と訴えている。しかもその多くが声すら上げられずに「殺されている」のだ。
 「働き方改革」法案との闘いは、この社会を成り立たせている根本である労働をめぐる死闘だ。
 法案は、労働者に生きていくためには死ぬまで働けと言っている。NHKで過労死した女性記者の家族は「記者は裁量労働で個人事業主のようなもの」だと何度も言われたという。「働き方改革」とは人間労働の解体であり、共同性の解体だ。労働者を過労死するまで働かせても企業はその責任を問われず、すべてが自己責任とされる高度プロフェッショナル制度。評価で労働者をバラバラに分断し、全労働者を最低賃金で働く「正社員」へと同一化する「同一労働同一賃金」。36協定の現状を逆手に月100時間残業を合法化する残業時間の上限規制。そしていま検討が始まったのが「解雇の金銭和解制度」だ。そのすべてに労働者の団結と労働組合の破壊が貫かれている。

「働き方改革」法案は改憲そのもの

 6月10日の国会前の集会で、過労死遺族が訴えたことがもうひとつある。「職場に労働組合もありましたが何も動いていません。何のための労働組合か、誰のための労働組合か、御用組合ではだめだ!」と。そもそも、高度プロフェッショナル制度の導入は、連合会長・神津が安倍と合意したことから始まった。日本郵政では「同一労働同一賃金」のもとで、「正社員」の手当削減がJP労組の提案で始まろうとしている。すべて会社と御用組合との労使合意によって「働き方改革」が職場では先行している。すべては労働組合の問題だ。
 そして、情勢はいまひとつ動き始めている。
 安倍政権は、通常国会を7月22日まで大幅延長してでも、「働き方改革」法案をはじめとした重要法案と位置付けるすべてを成立させる決断をした。すべてが安倍三選、9条改憲に向かった決断だ。
 「働き方改革」法案と並んで、安倍は改憲国民投票法「改正」を立憲民主党などと共同提案することで野党を改憲論議に引き込もうとしている。
 IR法案(カジノ法)もそれ自体反対の多い悪法だが、維新の会を改憲賛成に取り込むために成立させようとしている側面が強い。
 さらに日本政府は、沖縄・辺野古の新基地建設に向けて8月中旬にも埋め立て区域への土砂投入に踏み切ることを決断した。安倍は改憲発議を前に、労働者の抵抗をすべて無くしてしまわなければならないと必死になっている。
 安倍はどんなに絶望的でも、9条改憲と戦争、核武装も含む独自の軍事大国化に踏み切らなければ延命の道はない。
 6・12米朝会談はそのことを示した。安倍がトランプに訴えた「最大限の圧力の維持」「拉致・ミサイル問題の解決」などはことごとく無視され、さらにアメリカからは鉄鋼・自動車などで最大の「貿易戦争」を仕掛けられている。もとより、米朝会談は、南北朝鮮人民が求めてやまない朝鮮半島の「平和と統一」の思いにこたえるものでは全くない。むしろその逆に、広がる戦争反対の声を抑え込み、とりわけパククネを打倒した民主労総のゼネストを先頭とした韓国労働者民衆の闘いの圧殺を狙うものだ。アメリカは今や、世界支配と国内の階級支配の両面でアメリカ一国の利害を暴力的に貫く以外になくなっている。そのことが安倍をして日本の支配階級を改憲に向かわせている原動力である。

国鉄闘争を先頭に労働組合を甦らせよう

 安倍は「働き方改革」法案を「戦後70年に及ぶ労働基準法の歴史的な大改革」と位置付けた。言うまでもなく、労基法は9条と並んで戦後憲法の根幹をなすものだ。「働き方改革」法案は改憲そのものである。であるからこそ、その核心に労働組合の破壊が貫かれている。
 現実にはもっと激しいスピードで事態は進行している。JR東日本では東労組解体が進み、会社は御用組合さえも作らない方針だ。「労働組合のない社会」のモデルをJRが先頭になって作り出そうとしている。一方で、連合最大の産別組織であるUAゼンセン(172万)が、憲法改正を秋の組合大会で方針として正式に決定しようとしており、「現代の産業報国会化」が労働運動の再編・解体を通して進められようとしているのだ。
 すべては現場の力関係が決する。今一度原点に返って闘おう。労働組合は法律に認められたところから始まったのではない。職場の怒りが声になり、団結した闘いとなって労働組合は生まれた。いま崩壊を開始したのは御用組合だ。労働者の怒りの先頭に立てば、闘う労働組合は必ず甦る。韓国・民主労総が、政権から不法ストライキだとレッテルを貼られてもなお社会的ゼネストを呼びかけた時、「民衆の要求と民衆の力が法であり、正義である」と訴えた。怒りは充満している。労働者民衆への限りない信頼にもとづく訴えと闘いが必要だ。労組交流センターがその先頭に立とう。