月刊労働運動-Home> 民間/合同一般 > | 記事 >

産別・戦線の闘い第14回 交通運輸労働者の闘い 闘いで団結が強化・拡大 タクシー労働者

月刊『労働運動』34頁(0340号12/01)(2018/07/01)


産別・戦線の闘い 第14回
交通運輸労働者の闘い
闘うことで団結が強化・拡大されたタクシー労働者

(写真 24時間ストライキに突入し社前集会)

闘うことで団結が強化・拡大されたタクシー労働者

河野 晃興(自交総連SKさくら交通労組執行委員長)

 北海道札幌市東区のタクシー運転手の労働組合である、自交総連SKさくら交通労働組合は、6月5日午後5時から本採用(正社員)3人の24時間ストライキに立ち上がりました。組合としては、昨年12月20日ストライキに続く2度目のストライキでしたが、前回を上回る団結を作りだす闘いとなりました。

嘱託社員の賃下げ反対スト!

 4月末、会社は「嘱託社員(1年雇用の非正規社員)の夏季(6月)賞与のランクを変更する」と突然言い出しました。会社全体としても、私たちの組合としても、正社員は少数派で、嘱託社員が多数派(7割)を形成しています。昨年のストライキは少数派の正社員の課題(有休補償問題)のストでしたが、その後、組合の会議で「多数派の嘱託社員の課題を組合としてどう取り組むか」が、嘱託社員から問題提起されていました。そこで、組合はこの問題を総力で取り組むことにしました。
 嘱託社員の賞与は、本人の半年間(夏季賞与の場合は11月21日~5月20日)の売上総額に対して1%から7%までの7段階のランクを設定して支給されます。このランクのハードルをそれぞれ10%引き上げると会社は言ってきたのです。7年に渡って固定されてきたランクを、1か月前に突然変更すると言われたことに対して、誰もが怒りと疑問に包まれました。
 4月27日に会社と組合の話し合いが行われましたが、会社は、「これは団交ではない。嘱託の賞与は会社が一方的に決めることができる。あくまで紳士的なお知らせである」と言い、ランクの変更(実質的な賃下げ)についても「個々の売上は伸びているので、ランクを変更しても前年対比でほぼ賃下げにはなっていません。ジャパンタクシー導入など経費が掛かっている」と言いました。組合は「支給直前に会社が一方的に決めて、交渉もしないなど到底納得できない」と抗議しましたが会社は姿勢を変えませんでした。
 組合は全体会議を開催し、執行部からは事前の執行委員会を踏まえて、「本採用も嘱託もストライキで闘う」という方針を提起しました。しかし、執行委員会では出なかった嘱託社員からの「雇い止めに対する恐怖がある」「別の理由をつけて契約しないのではないか」「会社は必ず嫌がらせをする」などの不安が出されました。他方で「こんなことに納得出来ないことは示したい」「数を集めるために署名をやったらどうか」「有休をとってスト参加者を支援してはどうか」などの意見が出されました。その結果、以下の方針を決定しました。
①本採用3人が24時間ストライキを構えて次回団交を行う。
②ストの場合、スト参加者を支援するため嘱託社員は有休を取れる人は取って、極力全員がスト突入集会に参加する。
③全社員に呼び掛けて「会社決定の撤回」を求めて署名を集める。
④労働委員会に申し立てる。

全社員の7割の署名が集まった

 職場全体にビラまきを行い、今回初めての試みとなる、署名活動に取り組みました。署名活動は私たちも驚く程の大きな共感が寄せられ、2日間で全社員175人の7割を超える125人から署名が集まりました。職場全体の怒りを背景に、組合は5月31日の団交に臨みました。
 団交では、会社は「嘱託の賞与は会社が一方的に決定できる。皆さんは数字のための争い、1円玉、百円玉の世界なんでしょう」という態度でした。会社のあまりにも労働者を軽視する回答に思わず嘱託社員が嘲笑を浮かべたことに対し、会社は「何を笑っているんだ」と恫喝しましたが、本人は毅然(きぜん)として「会社は7割以上の嘱託によって会社が成り立っていることをどう考えているのか」と反論する白熱した展開となりました。
 続いて、組合が125人の署名を提出すると、会社の態度が変わりました。組合が「7割以上が撤回を求めている。125人がストライキをやってもいいのか」と言うと、会社は「125人の署名は大きなこと、真摯(しんし)に受け止めます」と言わざるを得ませんでした。「せめて説明会をやらないのか」という追及に対しては「やったほうがいいとは思う。文書での説明ではだめか」と言い出しました。組合は「説明会をやるのならスト解除も検討する。紙切れ一枚では伝わらない」と答えました。

1人の仲間が組合に加入!

 後日、会社から「文書で説明したい」と回答がありましたが、組合は大きな勝利感の中でストライキ突入を宣言し、ビラで全社員に知らせました。そのビラまきの過程で、「嘱託のために本採用がストライキをやってくれるのか」と驚きの声が上がり、ビラをまいている最中に、「組合に入るよ」と1人の組織拡大が実現されました。
 当日のスト突入集会には、本採用3人に加え、嘱託労働者7人が参加し、内5人が有給休暇を取って集会に参加しました。集会では、当該の嘱託労働者が司会を担い、嘱託社員全員が発言しました。まさに正規と非正規が一体となりストとスト集会を勝ち取りました。感動的で歴史的な闘いとなりました。
 会社は、「部外者立ち入り禁止」の立て看板を急きょ設置し、スト集会の終盤には、北海道警の私服刑事3人が弾圧を狙って現れ、「道交法77条に定められた道路使用許可を取っていない」などと言ってきました。
 さらに、「スト集会に参加した者には有休を認めない」「これは動労千葉の津田沼事件の最高裁判決でも出されている」などと言ってきました。なんとしてもこの団結を破壊したいのでしょう。
 組合では「①どのような理由で有休をとろうが労働者の自由だ。②スト参加者を支援するた
めの有休取得は正義である。③今回のストライキに対するあらゆる会社の敵対行為は絶対に許さない」という3点の立場を確認しました。会社は、正式に「争議に参加した者に対しては有休の取扱はしない」と回答してきました。それで組合員が動揺するとでも考えているとしたら、あまりにも浅はかです。嘱託の当該は「自分は権利の行使として有休の届けをした。有休として扱わないと言うなら、労働者の権利の行使としてストライキで扱うべきだ。欠勤扱いというのは違う」と言っています。「ストの恐怖」を語っていた労働者が、闘いを経験して飛躍しています。敵の攻撃は労働者を覚醒しその決意を固めさせ、団結を強化するだけです。私達は、今後も動労千葉の闘いに学び、団結を総括軸に闘っていきます。