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闘う合同一般労組 第一交通武蔵野分会の闘い 職場の仲間が組合に加入!

月刊『労働運動』34頁(0342号12/01)(2018/09/01)


闘う合同一般労組
タクシー労働者の闘いが社会を変える―第一交通武蔵野分会の闘い
小倉分会長の不当解雇撤回の闘いで、職場の仲間が組合に加入!

※第一交通はブラック企業

 「テレビCMで『人に優しい』と宣伝している第一交通。ところがこの第一交通が労働組合つぶしのために、暴力団関係者を雇っていることを皆さんはご存じでしょうか!」
 都庁前に、多摩連帯ユニオン第一交通武蔵野分会の小倉裕分会長の声が轟きます。派手にパフォーマンスを繰り広げる小倉分会長は、都労委闘争の昼休みやふくしま署名解雇の都庁前座り込み行動に参加して街宣を行っています。
 2001年の「小泉改革」で、タクシー産業で規制緩和が行われ、開業条件が「営業所や車庫もリースでいい」とされ、タクシー会社が乱立するようになりました。競争が激化した結果として、タクシー労働者に襲いかかったのは、異常なまでの長時間労働と低賃金です。一乗務あたりの労働時間は18~21時間の隔日勤務で、平均年収が300万円台。食事はコンビニ弁当やカップラーメン。みんな命を削って仕事をしています。
 第一交通産業(本社・北九州市)は、M&A(企業の合併、買収)方式で、関連会社約150社、9242台のタクシーと、公称1万2千人の乗務員数を誇る「日本一のタクシー会社」に成長しました。そのやり方は、就業規則を変えて労働条件を低下させる、労働組合ができれば暴力団を使ってつぶすというものです。愛知県の鯱第一交通の労働組合委員長が私有車のホイールナットをゆるめられて、運転中の事故で大怪我を負い、別の組合執行委員はたび重なるパワハラでうつ病になるまで追いつめられました。

※就業規則改悪反対で決起

 小倉分会長は、在籍していた「ユアーズ」というタクシー会社が2015年に第一交通産業に買収され、第一交通武蔵野になった過程で、賃金の引き下げと労働三権の否定を示す就業規則の改変に反対して、職場闘争を開始しました。
 その瞬間から、会社は「暴力団関係者」を自称する乗務員を、他の第一交通関連のタクシー会社から移籍させ、小倉分会長に対する嫌がらせ(出庫前や帰庫後に待ち構えて、「労働組合活動をやめろ」などの因縁をつける)を開始しました。さらに、少し擦っただけの「自損事故」を、「未報告事故」とし、さも大事故を起こしたかのようにキャンペーンする。また、営業終了間際の遠距離客に対しては「代車要請しろ」(事実上の乗車拒否)という業務命令を小倉分会長にのみ行い、小倉分会長を病気休職に追い込みました。そして、彼にのみ一か月間の「休職命令」を発令し、就業規則の退職規定を盾にして「休職期間の満了(=解雇)」を小倉分会長に対して適用したのです。
 会社側は、小倉分会長への解雇をなぜ行ったのか。それは、「ユアーズ」から「第一交通武蔵野」に変わる過程で、賃下げを含む労働条件の不利益変更があったからであり、暴力的な労務支配の実態を小倉分会長の闘いによって暴露されるのを怖れたからです。病気休職した労働者がたった一か月間の「休職期間満了」時に、まだ病が癒えていないという理由で「退職(=会社側による一方的な契約破棄)」という就業規則上の規定は、社会通念上許されません。しかもこれは小倉分会長にしか適用されていませんでした。就業規則の恣意(しい)的運用そのものです。

※安倍政権と一体の資本

 小倉分会長の闘いは、安倍政権、新自由主義攻撃をうち砕く闘いそのものです。第一交通産業は、直接的に安倍や麻生と関係を持っています。2013年に第一交通産業会長の黒土始は、勲四等瑞宝章を授与されていますが、その叙勲祝賀パーティに麻生が出席して祝詞を述べ、安倍がビデオメッセージを送っているのです。
 こうした安倍と麻生の「お墨付き」で、第一交通産業は、全国各地のグループ関連会社で数々の悪事を働いています。前述のような暴力団関係者を使った労組活動家への襲撃をはじめとして、ある自交総連傘下の労働組合のあるグループ会社に対しては、偽装倒産攻撃をしかけ、労働組合員を全員解雇し、非組合員だけを再雇用することをやっています。労基署が数々の是正勧告を出しても、ウソとペテンで塗り固めた報告書を出して終わりにする。第一交通産業は、安倍政権と一体です。
 十数回に及ぶ団体交渉の結果、明らかになった第一交通武蔵野の無法ぶりは、およそ乗務員を金儲けの道具としか考えていないことにつきます。乗務員に、借用書もなしに釣り銭などの事業用資金を個人間の借金として貸し付ける。借金を完済するまで、いかにその乗務員が転職を希望しようとも、乗務員証のタクシーセンターへの返納を遅らせて再就職を妨害する。暴力社員だけが無線業務を独占する。本来資格の必要な運行管理業務を無資格の乗務員にやらせる。「明日から来なくていい」と突然解雇を言い渡す。
 こうした「命よりカネ」の職場に労働組合をつくって立ち上がったのが小倉分会長です。
 小倉分会長は、常々こう言っています。「第一交通産業本体が相手であり、打倒するまでやる」。ここには自交総連のような行政へのお願い路線はありません。

※新たに組合員が加入

 重要なのは、小倉分会長の本気さを見た新たな労働者が組合に結集したことです。彼は持病があって小倉分会長よりも長期に渡って休職していました。その過程で「休職命令」は一回も出ていなかったのが、小倉分会長への「休職期間満了=解雇」を合理化するために、「退職日」を遡(さかのぼ)るかたちで会社に退職届を書かされたのです。そこに資本の悪辣さを見た彼は、小倉分会長と共に闘う決意を固めたのです。
 私たちは、小倉分会長が不当解雇される直前の17年1月5日に、都の労働委員会に不当労働行為の救済申立てを行いました。この秋から、審問に入ります。
 団交の場で、私たちは「解雇の狙いが労働組合つぶしと労働条件の不利益変更への居直りにある」と追及してきました。審問は、第一交通武蔵野と第一交通産業を行政の場で直接やり玉に挙げるチャンスです。もちろん私たちは行政にお願いするのではなく、この闘いを職場や地域に返していき、すべてのタクシー労働者に団結を呼びかけていきます。