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時代を解く 4 爆発した中国経済危機

月刊『労働運動』34頁(0306号12/01)(2015/09/01)


時代を解く 4

(ニューズウィーク日本語版より)


藤村一行(動労千葉労働学校講師)

爆発した中国経済危機は何をもたらすか

*株価急落 連鎖的打撃広がる

 7月8日、中国の上海と深圳市場で株式が急落した。中国株Aと言われる中国の内部だけで売られている株式の急落である。最高値は6月12日。一か月足らずの間に約30兆円(日本円換算)が消えた。8800万人ぐらいの個人投資家が大損し、自殺者も出た。上海株価総合指数は2014年中頃から1年で約2・5倍上昇した。不動産への投機を抑えたため資金が株取引に流れ込んだ結果だ。
 景気は低調なのに株価だけが異様に上昇したので、当局がその行き過ぎ抑制に動いた。
 それを転機に株価急落の歯車が動き始めた。中国当局は、買い支えだけでなく、公安警察まで動員し、大企業や金融証券機関に株の取引停止命令を出した。その結果4割ぐらいの下落率で収まった。だが取引が全面解禁になればさらに下がることは確実。消費や実体経済に連鎖的打撃を与えることになる。

*株価下落に続く元の切り下げ

 8月11日から4日間連続で、通貨・元が計4・5%切り下げられた。中国の通貨切り下げは、資本主義国とは違う。中国人民銀行が毎日午前9時15分に通貨取引の基準値を一方的に決定し、発表する。中国当局は、今回ドル価値との乖離を縮めるため「市場化」の方向で切り下げたと説明したが、市場取引の結果ではなく非市場的な強引な政治的決定がなされたのである。
 株価急落より元の切り下げの方が世界経済への直接的影響は大きかった。世界中で中国への輸出に頼っている国が多いからだ。対抗的通貨切り下げに動く国が出ている。これに早ければ9月と言われるアメリカの金利引き上げが重なって、アジアと新興諸国経済全体が危機に追い込まれる。日本もアメリカもEU・ドイツ経済も相当な影響を受ける。
 だから世界同時株安となった。これがきっかけで一気に世界経済が崩れる様相だ。中国経済の不可逆的な悪化が世界大恐慌のさらなる深化を生むシナリオが現実化しはじめた。

*中国の体制的破綻が本格化

 中国当局がスターリン主義丸出しの強引な株価対策や元の切り下げに走った直接的理由は、国内景気の急激な悪化である。中国政府は、今年度4~6月期も年率7・0%の成長を維持したと発表したが、現実はそれより大幅に低いと言われている。習近平政権は、「新常態(ニューノーマル)」を掲げて中国経済の軟着陸を図る政策をとっている。消費と内需重視に転換すると同時に、中国の「過剰資本・過剰生産力」を対外的に処理するためアジアインフラ銀行(AIIB)政策も展開していく。その全体が破綻状態に入った。
 中国労働者人民はすでに巨大な反乱に立ち上がっているが、今後は中国共産党支配体制との正面からの激突に向かうだろう。中国スターリン主義は、この危機を対外的には南沙諸島問題×朝鮮半島問題に転化する動きを強める。だからこそ日本と韓国の労働者の階級的に団結した自国政府に対する闘い、とりわけ日帝・安倍政権打倒闘争が決定的に重要となる。それを通して中国労働者人民との連帯・結合も切り開かれる。