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労働組合運動の基礎知識第12回 派遣法改悪を弾劾

月刊『労働運動』34頁(0307号07/01)(2015/10/01)

労働組合運動の基礎知識 第12回


小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

労働者派遣法改悪を弾劾する!

 労働者派遣法改悪案が9月11日、衆院本会議で可決成立した。参院で施行日を9月1日から30日に変更されたため、参院から衆院に送り返され11日の衆院本会議にかけられたのだ。 なぜ9月30日にこだわったのか。10月1日から2012年改正案の「労働契約申し込みみなし制度」が施行されることになっていたからだ。この制度は2012年に成立したものの3年間施行を猶予されて10月1日が施行日になるはずだった。「みなし制度」とは違法派遣があった場合、労働者が望めば、企業は派遣をやめて労働者を社員などで雇い入れなければならない。制度の対象は主に受け入れ期間の超過である。現行法では秘書や通訳などの26業種の専門業務は無期限の派遣が可能で、それ以外の業務は最長3年である。超えると違反になる。両方の業務が混在していて、一般業務の量が多い場合は一般業務とみなされ、派遣は3年までだ。「制度の開始は〝違法〟状態の派遣労働者にとっては念願だった。」「勤続15年以上の宇山さんは『みなし制度で正規採用されるのを期待し、10月1日が来るのをずっと待っていた。でも権利は潰された』と憤った」(東京新聞9月9日夕刊1面)
 改悪法は専門業務26業種と一般派遣の区別をなくし、26業種の派遣労働者も最長3年までしか働けない。しかし企業は3年ごとに人を入れ替えれば、ずっと派遣労働者を使い続けることができる。
 参院の議論で改悪案のでたらめさがより浮き彫りになったのは以下の点だ。「現行法で労働契約を結ぶ派遣労働者には、改正案施行後も混乱を避けるため現行法を適用するとの経過措置が盛り込まれた。野党は、改正案施行後も現行法を適用するなら『みなし制度』による救済も適用されると主張した。労働問題に詳しい鷲見賢一郎弁護士は『現行法で契約して働く人は10月が来れば、みなし制度も適用されると思い、契約している。現行法がすべて適用されるはずだ』と話す。塩崎恭久厚労相は参院厚生委員会で『改正法施行時に試行されていない制度は適用にならない』と答弁。野党や派遣労働者からは企業寄りの解釈だと批判が出た。議論は平行線のまま打ちきられた」(東京新聞9月10日朝刊3面)。あまりにもでたらめなやり方だ。
 派遣法改悪と一体で自民、公明、維新の3党が提出した同一労働同一賃金推進法案も9日の参院本会議で可決成立した。同法は、雇用形態による格差を是正するための法制上の措置などを3年以内に講じることとし、事業主にも協力を求めるが、基本的に努力義務を求めるもので、強制力はない。正規と非正規労働者の賃金格差がこんな法律で是正されることはありえない。
 派遣法が改悪され、これから3年単位で派遣労働者が雇い止めや転籍攻撃がかけられる。企業は人を入れ替えれば永続的に派遣労働者を派遣することが可能となる。こういうでたらめな派遣法改悪に、派遣労働者を先頭に怒りが爆発している。3年での雇い止め解雇や、転籍攻撃に怒りをもって立ち上がる派遣労働者は必ずいる。派遣法のでたらめを暴露し、派遣法そのものを粉砕しよう!