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戦後社会の大転換攻撃―戦争と労働法制大改悪との闘い

月刊『労働運動』34頁(0313号02/02)(2016/04/01)


戦後社会の大転換攻撃―戦争と労働法制大改悪との闘いに職場から立ち上がろう!
― 動労千葉の2波ストライキが切り開いたもの ―

田中康宏 動労千葉委員長

3・11、3・17ストの課題

 動労千葉は3月11日と17日と2波のストライキに立ち上がり、まだ春闘の渦中です。
 動労千葉がストライキに立った理由は大きく二つです。
 一つは、JRの大量退職を逆手にとった組織破壊で外注化を強行する攻撃との闘いです。動労千葉も1~2年で60人以上の組合員が大量退職する。第2の分割・民営化攻撃に勝利するため、大量退職をめぐる攻防が組織の存亡のかかった闘いという認識の下に全組合員が団結することが、ストライキを構えた理由です。
 具体的にも繁沢副委員長が職場から排除される組織破壊攻撃がかけられたり、他の組合員も不当配転攻撃を受けたが、大量退職をめぐる外注化・組織破壊と立ち向かう構えと決意を固めることが第一の課題でした。
 第二の獲得課題は、最大の課題ですが、CTS(千葉鉄道サービス)就業規則改悪との闘いです。全労働者の雇用と権利に関わる、総非正規職化の突破口を開く労働契約法5年ルールを逆手にとった攻撃との闘いです。CTSの組合員だけでなく全組合員が「分割・民営化以来の大転換攻撃」という認識の下に立ち上がり、阻止することでした。
 第2の分割・民営化と立ち向かう組織拡大春闘と位置づけて、組織拡大するため組合員が腹を決めて前へ進む決意で立ち上がり、2波のストライキをやりぬいてよかったと思います。大量退職の中で、多くの組合員が敵の攻撃に翻弄(ほんろう)されようとしているが、闘いの試練を乗り越えてきた組合員で、簡単に団結は崩れないのですが、前に向かって進もうという気になったことが大きかったと思います。
 具体的に、CTS就業規則大改悪、雇用と賃金の全面解体攻撃の4月1日実施を阻止したことは決定的に大きかった。CTSの中で怒りが炎上する状況をつくりあげ、君津の事業所で1人、動労千葉に加入してくれる仲間が出てきた。組織拡大へ春闘継続中です。

正規労働者が非正規労働者の問題を自分の問題としてスト決起

 ストライキの新たな挑戦です。3・11もそうですが、3・17ストライキは45人の組合員がストライキに突入した。3・17ストライキの最大の焦点は、CTS就業規則改悪4月1日実施阻止です。さらに貨物の16年ベアゼロに対する怒りの闘いです。旅客関係の焦点はCTSで、立ち上がった45人の組合員は全員JR本体の組合員です。ストライキ直前でCTSが4月1日実施に白旗を上げたので、CTSの清掃部門のストライキは効果的に闘いを進めるため17日時点で外しました。
 本当に大きかったと思うのは、CTSから始まった総非正規職化攻撃、CTSの労働者に対する5年上限で雇用期限を決め月給制を時給制に変える攻撃に対して、JR本体の労働者が自分の問題として闘いに立ち上がった。これはある意味、新たな挑戦でもあったのです。組合員は当然のこととしてストライキに立ち上がってくれた。これからの労働運動をどう闘っていくのか自分も学ばされた。JR本体の現状も、大量退職で組合員がそれどころじゃないという声があがってもおかしくない。
 分割・民営化反対闘争や外注化阻止闘争、反合・運転保安闘争の中で築いてきたことがこの時代に新たな方向を示していると思いました。

闘いを通して時代認識をつかむことができる

 もし、この闘争をやらなかったら、組合員はCTSで起きている問題を口で説明しても自らの問題にならなかったと思います。ストライキに立ち上がったから自らの問題になった。ストライキを通して、動労千葉自身が決定的に変わっていく契機をつかんだと思います。闘うことを通して、今の時代に何が求められているのか、何が必要なのかを組合員全体が認識できたことが大きかったと思います。
 この問題は、2012年に改悪された労働契約法という難しい問題です。しかし、組合員には、契約法改悪以来ずっと非正規労働者が全員クビになっていく社会が始まったと、全活や大会、定期委員会で3年ぐらい訴え続けてきた。外注化は、こういう社会をつくるための攻撃だと。今年の全活でもCTS問題は明らかではなかったのですが、相当議論して確認してきました。組合員に一定の時代認識があり、定期委員会の時にCTS問題が訴えられ、たちまち理解してくれた。闘いがないところにきちんとした時代認識は生まれてこないとつくづく思った。問題が起きた時に、自らが闘いに立ち上がることを通して自らの問題になると思います。
 闘争を通して、本部が獲得したいことを、表面的な要求項目ではなくて、組合員が本当に理解してくれました。集会の発言も「自分は来年定年だけど、今、国鉄分割・民営化の時と同じで、気持ちは28歳だ」と訴えたり、「人生かけてもう一度勝負するからね」と訴えたりしました。今までとは一味違ったストライキ決起集会でした。CTSの清掃部門の仲間たちが並んで「本当に動労千葉に入ってよかった。この闘争をやるんだ」ということを口々に提起し、新たな一歩をつくれたと思います。

CTSの職場で怒りが爆発

 CTS問題は、当局はCTS労組にだけ説明し、職場は誰も知らない中でやろうとした。動労千葉が事態を掴んで翌日から「会社の就業規則改悪提案は大変なことだ」と職場に知らせた。どの職場も「まさかこんなことが」ということから始まって、職場が怒りで燃え上がる状況になった。CTS労組は会社から説明を受けていたが、口をつぐんでいた役員までが「これを飲んだら自分は職場に出てこれなくなる」と言うようになり、「今度だけは自分も反対だ」と言うようになった。職場では一般のCTS労働者たちが真剣に「ストライキを構えるしかない」と言うようになり、CTS労組の組合員が本気で「うちの組合は何日ストライキをできる財政を持っているのか」と動労千葉に聞いてきた。そういう状況にまで組織したことは僕らもびっくりした。「就業規則改悪の手続きに必要な社員過半数代表の意見書(賛成でも反対でも)を出したら重大な裏切りだぞ」とCTS労組と話し、会社がCTS労組プラスその他事業所の社員代表から出させようとしたが出すことができなくなった。これが直接には延期せざるを得ない理由になった。動労千葉の闘いが職場の怒りに火を付けたが、本当に一人ひとりの怒りの声が事態を動かした。

敵の攻撃は凶暴だが矛盾がある

 それを見て思ったのは、攻撃に無理があるだけに、敵の側に矛盾があるのです。御用組合が怒りの声に突き上げられることはあったが、完全に身動きがとれなくなり当局に協力できなくなることは前例がない。こういう力の土台は16年間の外注化反対闘争で、15人がCTSから動労千葉に加入してくれた。
 事実上延期せざるを得ない状況の中で、乗り出してきたのが東労組だった。CTS労組も東日本労連だが、東労組本体が乗り出し、一回だけ交渉をやって意見書を出した。国鉄分割・民営化に全面協力して生き延びてきた奴らで、体質化したものだ。JR本体で使い捨てられようとしているからこの問題で敏感に反応した。この問題に協力して自分たちだけが生きていく。千葉の問題を東労組の『緑の風』(本部の機関紙)で大きな問題として取り上げ始めた。
 全体の構造の中に凝縮した問題は、単に千葉、CTSという企業との攻防ではないことが、東労組が乗り出してくる中で露(あらわ)になった。国鉄分割・民営化の時と同じ構図になったのです。

CTS就業規則改悪は労働法制大改悪の先端攻撃

 CTSの提案はひどい中身で、安倍政権や支配者階級が考えていることそのものです。一つは、5年間で無期雇用契約に転換しなくてはいけない5年ルールを逆手にとり、有期雇用の労働者も2013年を起点に「あなたは後2年だ」とか、「あなたは後何年だ」と雇用の上限を通告し、試験に合格した者だけを雇用延長する。新しく採用する人は雇用上限を5年間にし、試験をして同じようにする。団交の中では「特別なことがない限り無期転換するようなことは考えていない」と公言する。
 ワンセットで、月給制を時給制に転換する。無期雇用契約になっても時給制です。無期に転換した時の名前が「限定社員」で、時給800円、900円の非正規社員です。60歳以降もこれに転換する。時給800円、900円、ボーナスも出ない。忌引も無給、手当も無給など、労働条件の全面解体を労働契約法の5年ルール問題とセットで出してきた。雇用と賃金の全面解体です。月給制を時給制に転換する理由を、手待ち時間の労働時間カット、短時間労働を導入すると言うのです。食べていけなくなるから「兼業禁止の項目をはずします」と言うのです。

総非正規職化攻撃

 2012年労働契約法改悪、昨年の派遣法改悪で労働者を突き落としていく法的枠組みがある種完成する。さらに労働時間規制解体、解雇金銭解決導入で、どういう現実を労働者にもたらすかは誰が見てもわかる。国際的に見ても最悪の無権利国に日本はなっていく。厚生労働省のパンフレットでも契約労働者は1200万人いると書いていて、2018年までに全員解雇の問題に晒(さら)される。世の中に非正規しかいなくなる。派遣労働者は300万~400万人いて、3年ルールで2018年解雇になる。1500万以上の労働者が地獄の底まで突き落とされようとしている。その急先鋒(せんぽう)をJRが担おうとしている。国鉄分割・民営化、シニア制度の時と全く同じで、雇用延長問題です。この闘いは全労働者の未来のかかった闘いです。JRや郵政だけでなく、民間企業も公共団体も全部この問題に直面し、労働者が崖から突き落とされようとしている。

労働者階級に対する階級戦争

 この現実にどんな小くても具体的闘いで立ち上がる中に絶対可能性があると思っています。そのことを示したのは「保育園」問題です。「保育園落ちた! 日本死ね」という叫び声が燃え上がる条件はあるのです。直面している問題はその比ではない条件がある。しかし、ひどさは誰しもわかっているが、具体的に声をあげて闘う者がいないから闘いに火が点かない。起きていることの階級的本質は、労働者階級に対する階級戦争だと思います。国鉄分割・民営化以来の大転換を労働者に強制する歴史的攻撃が起きている時代認識を絶対持たなくてはいけない。何をなすべきかが問われている。改めてそう認識しました。
 どう考えても国鉄分割・民営化以来の転換だ。目の前に起きている攻撃と立ち向かって、現実への怒りを組織することだと見えてきた。この闘いに、非正規はもちろん、動労千葉のJR本体の労働者が立ち上がったことの持つ意味はやはり大きい。こうやってこそ正規と非正規が団結する条件が生まれるし、展望があると思う。

世界中が労働法制改悪反対でゼネスト

 韓国民主労総の労働構造改悪攻撃とのゼネストを全力で応援しようと取り組みを進めてきましたが、問題をもう一回主体的に考え直さなくてはいけないと思いました。何をめぐってゼネストになっているのか、ハンサンギュン委員長が「この闘いなしに一切未来はない。命をかけて闘う」と言っている。労働構造改悪、つまり労働関係5大法案の問題、解雇自由化の問題、就業規則に賃金ピーク制を導入する問題。労働法制をめぐる闘いが今、歴史的焦点になっているという認識を持たなくてはいけない。
 フランスの労働者と学生の50万人がオランド政権に対して労働法の規制緩和大改悪と闘っている。雇用や解雇の規制緩和、非正規化の拡大、就労労働時間延長という問題です。イギリスも労働法制、社会保障、医療、教育の問題で重大な闘いになっている。
 一方では、ベルギーのテロ問題で戦争が現実化している。日本も改憲と戦争が最大の焦点になっている。アメリカも大統領予備選挙でトランプが言っているのは移民問題で労働問題です。サンダースが言っているのも格差や教育で労働問題です。

資本主義の崩壊過程の攻撃と闘えば展望は開ける

 資本主義、新自由主義の最期の崩壊過程で、延命のためのサブプライムローン(金融派生商品)でバブルを作り破綻したり、「マイナス金利」など金融政策、財政政策で延命を繰り返してきた。しかし万策尽きて、戦争と労働者に一切の犠牲を転嫁するしか生き延びれない。「わが亡き後に洪水よ来たれ」と、雇用、社会保障や医療や教育を破壊し生き延びようとしている。
 われわれの時代認識も単なる賃金や雇用というレベルだけでなく、労働者に対して起きようとしている全てで、本当に歴史的転換が始まろうとしていると見すえることが大事だ。しかし崩れようとしているのは敵の側だ。これに立ち向かえば勝負になる。ハンサンギュン委員長の立場に立って本当に訴えきれているかどうかが問われている。

具体的闘いを職場から始めよう

 具体的闘いを組織しなくてはいけない。その焦点は、労働法制問題です。後2年の間に1000万~2000万人の労働者が解雇される攻撃に対して、小さくてもいいから闘いを始めることだと思います。この問題は、安保・戦争法、改憲と一体で、戦後のあり方が一変する攻撃です。憲法の一部を変えるというような攻撃じゃない。中曽根は「戦後政治の総決算」と言ってやったが、戦後蓄積されたものは社会的なもので、今は戦後的あり方の全てを総決算するような攻撃が起きている。
 資本主義社会だから、本質は資本と労働者の非和解的な対立です。それが土台にあって、社会保障、医療、教育もある。「同一労働同一賃金」「一億総活躍社会」を掲げて安倍がやろうとしていることは、戦後社会的あり方を全部転換させる攻撃です。戦後労働法制の大転換攻撃に立ち向かわなくてはならないと思います。