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理論なくして闘いなし 闘いなくして理論なし 第1回

月刊『労働運動』34頁(0314号07/01)(2016/05/01)

理論なくして闘いなし 闘いなくして理論なし 第1回

今号からマルクス主義講座として、「理論なくして闘いなし、闘いなくして理論なし」を掲載します。動労千葉労働学校の講義から抜粋した内容です。

国鉄労働者として労働に誇りをもって闘ってきた

 動労千葉がなかったら動労水戸はなかった。動労水戸から動労千葉を見てきたので、僕の考える動労千葉を話してみます。
 動労千葉は2波のストライキで40人の解雇者がいて、解雇者を抱えて団結を作り直してJR体制と闘いぬくという前人未踏の闘いをやり抜いた。クビをかけた闘いというのはすごいが、解雇者の生活を維持しながら解雇撤回まで闘いぬく、これが動労千葉の画期的なところです。
 動労水戸が動労から独立したのは分割・民営化直前だったので、解雇者はいなかった。若い40人くらいで分割・民営化反対の組合をつくった。運転士や検修もはずされ、そば屋や植木屋など全然関係ない所にバラバラに配属された。強制配転との闘いで、鉄道の仕事に戻せと裁判をやった。地方労働委員会から最高裁までいって不当労働行為を認めさせて勝った。ところが、運転士ならどこに行くかわからない、未払い賃金も個人口座に振り込む。「裁判にどっちが勝ったかわからない」と組合員が言って大変でした。団体交渉に組合員全員が出て、自分たちが30年間歯を食いしばって闘ってきたことに1ミリも会社が謝っていないとわかって、ものすごい闘いになった。
 昨日、動労水戸の裁判がありました。「残業代や超勤代も払え、最高裁の判決を守れ」という新たな裁判を起こして、総額5億~6億円の損害賠償請求を出したのです。しかし5年経っても何も進んでいない。会社側が一切反論しない、証拠も出さない。裁判長が「勤務評価はどういう基準ですか。それを出してください」と言うが、会社は出せない。全部恣意的にやっているからです。労働組合つぶしのための不当労働行為です。
 国鉄分割・民営化で奪われた鉄道の仕事を奪い返す闘いをやってきて、「労働の奪還」論はそこから根本的には言ったのです。22年間も売店とか全然違う所にいて、なぜ頑張れるのか。50歳過ぎて本線のハンドルを奪還し、「ついに戻った!」「勝った!」と言っている。裁判前の進行協議で、裁判長が「会社が出さないのだったら組合が出している証拠で損害賠償とかやるしかない」と言う。裁判長は歴史的裁判だと空気が入り「5年、証人尋問だけで3年かかる」と言う。原告全員に証言してもらうということです。
 動労千葉が解雇撤回で30年闘い、ついに不当労働行為を最高裁で確定させ、JRに法的責任ありを認めさせた。資本が労働することを侮辱し低めていることに対して、激震を生み出している。これと一体で、動労水戸が分割・民営化でやられた本質を暴き、奪われた労働を取り戻す闘いは、全社会に通用する、裁判でも通用する時代になっていると思います。
 動労千葉の2波のストライキは、分割・民営化絶対反対で闘ったことは決定的だけれど、それ以上に、鉄路を武器にして労働者の誇りにおいて自分たち自身の労働を止めて攻撃と対決をした。なぜ動労千葉の組合員が、自分たちのクビをかけてやったのか。自分たちの仕事への限りなき誇りです。それを奪われたら死ぬくらいの怒りなのです。
 千葉の30年前のストライキを今なぜ声高らかに言っているのか。全ての労働者には労働の誇りがあります。労働力というのは資本のものではなく、自分自身のものであり労働者階級のもの、社会のものです。社会というのは人間の共同性そのもので、自分が拠って立つ基盤です。資本はその社会を人間から奪っている。根本的にインチキなのです。動労千葉や動労水戸の闘いは、われわれが伝えられる最も核心的問題として、仕事や労働に対する誇りを、何があっても貫いていくことが大事だと提起していると思っています。
 安倍政権は、福島をめぐって2020年オリンピックまでに常磐線を全線開通させると言っている。原発事故はなにも終わっていないにも関わらず常磐線の小高から浪江まで開通させると言う。動労水戸には内緒にして東労組には「工事に入る」と提案していた。東労組が線量を測りに行ったところ「会社の説明と違う。大変な線量だ」とわかって、東労組の掲示板で問題にし始めた。動労水戸の竜田延伸反対にはものすごい支持があった。しかし、東労組はすでに組合員を竜田まで行かせている。その先の浪江まで行かせようとしている。なぜ線量を測りに行ったのか。間違いなく職場で東労組に対する反乱が起きているからです。

僕にとってのマルクス主義は動労千葉、動労水戸組合員です

 今年、動労水戸、動労総連合30年です。30年史をつくらないといけない。 
 朝鮮半島をめぐって激しく戦争の危機が迫り、株が大変な乱高下し、労働者派遣法を改悪し、残業代ゼロ法、8時間労働制解体などの大変な時代に入っている。30年間頑張って積み上げた上に、今の時代に何が求められているのか。今まで考えてきた常識を全面的に変えなくてはいけないと思っている。
 今日は動労千葉とマルクス主義をテーマにしたのですが、僕たちが自分で動かされている、自分に対する認識とか、周りの労働者に対する考え方を根本から変えなくてはいけない。マルクス主義はむずかしい感じがしますが、僕にとってのマルクス主義は、動労千葉、動労水戸の組合員です。労働者の現実の存在がマルクス主義です。人間というのはなぜ人間なのか、要するに考えるということです。学ぶことは人間的行為です。

非正規労働者の階級的指導部をつくりだした時に勝てる!

 貧困問題は深刻ですが、派遣労働というのは、非正規雇用労働と言うだけじゃなくすべてを奪う超弩級の攻撃です。派遣労働の全面化、非正規雇用化に対して、僕らに何が求められているのか。非正規労働者の中に、どんなことがあっても打ち倒されない指導部を生み出すことだ。食うことも次の世代もつくれない、生きる希望を奪いすべての人間関係を奪う社会をぶっ飛ばすリーダーを生み出した時に、われわれは勝てる。
 ところで、今の非正規労働者は、自分に対する評価も低いけれど、可哀想な存在で助けてやらなくてはいけない存在なのか。派遣労働者、非正規雇用労働者を、僕達が可哀想な存在だなんて思ったら絶対に間違っている。哀れな存在、救済の対象だと思わせていることが大切な人たちがいるということ、それはなによりも資本家なんですよ。これは弱い存在でなければ困るんです。だけど本質的なことを言うと、マルクス主義の核心問題なんだけれど、フランス革命とかブルジョアジーが封建社会を打倒していく過程というのは、労働者階級の存在と闘いなしにできなかった。フランスにおける労働者階級の闘いという時に、労働者階級は可哀想な存在だということは一ミリも出てこない。
 労働者を可哀想な存在として描くのと、実際の労働者は違う。 『女工哀史』という本を書いた細谷和喜蔵の連れ合いだった高井としをという女性がいます。彼女は7人の子どもを抱えて、戦後も日雇い労働で育てる。市から仕事をもらっていたが、自由労働組合をつくり委員長になって闘う。彼女が書いた『わたしの女工哀史』という本がある。ものすごい誇りです。
 僕のおやじは炭鉱労働者で鉱山に入っていて全国を渡るんです。今でも酒を呑むと、何回も落盤で危険な目に遭い、怪我もしているのだけれど、「俺はどんなに発破をかけるのがうまかったか」と発破の名人だったって言うんです。
 水戸鉄道サービス(MTS)の清掃労働者も、動労水戸の平支部事務所にあるいわきユニオンの非正規の青年労働者や女性労働者も本当に誇り高い労働者です。清掃であれ、どんな労働であれ、労働を通した自分たちの労働に対する誇りというのは、自分に対する誇りなんです。
 僕達が派遣労働者とか非正規労働者を見る時に、可哀想な存在とか、助ける存在だとか思った途端に僕らは通用しなくなる。彼らこそが本当の自由を求めてこの社会を根底から打倒する存在になる。それ以外に自分が人間としてこの世で生きる道はない。僕らがやる労働組合運動は、今までの延長ではない。 今までの動労千葉の組合員が血と汗と涙で切り開いたことの上に、僕達が労働者に対する見方、労働組合に対する見方、これを根本から変える。非正規労働者、派遣労働者の中に、断固としてこの世の中を叩きつぶす人間宣言、すべての非正規労働者、派遣労働者を率いて、自分は革命をやる、労働者階級の社会をつくるという人を生み出せるかどうかが勝負なんです。だからさし当って数の問題ではないと思っている。

「労働の奪還」―労働者が社会を動かしている

 なぜマルクスは労働者階級はすべての人間の解放を実現する階級なんだと言っているか。
 フランス革命は、自由、平等、博愛をスローガンにして、ブルジョアジーは革命をやって、古い体制から人間を一旦解放して、その解放した人間を労働者階級として賃金奴隷にする。建前は、自由、平等、博愛だ。しかし実際上は賃金奴隷の世界だ。これがブルジョア社会の本質です。ブルジョア階級のインチキな共同性、実は人間を物にして搾り取るだけ搾って、あげくの果てには過剰資本・過剰生産力状態を生みだして、その状態を解決できなくて戦争に訴える。この社会に対して、労働者階級は、インチキな自由な社会、インチキな愛の社会、インチキな平等の社会を根本からぶっ飛ばして、本当に人間の自由を実現する階級であり、人間の歴史、労働者階級が実現すべき歴史の本質的な問題なんだと言っているのです。
 だから僕達が労働組合をつくるのは、労働者を救済する、困っている人を助ける、弱い人が集まって資本に反逆する、そんなレベルのことじゃない。労働組合というのは、労働者が一人だったら弱いから労働組合を作って集団になって闘うことが常識にされてきました。しかし、労働組合をつくって「労働を奪還する」というのは、この社会を動かしているのは労働者であり、自分なのだということです。労働者こそがインチキな資本主義をぶっ飛ばして、人間の共同性と自由に基づく社会を実現する唯一の階級、世界史的階級なのだ。これがマルクスが言っていることです。
 今までの僕達の労働組合運動の常識というのは、全部共産党とか、体制内の社会党含めた向坂派とか、革マルもそうだ、みんなマルクスを言う。でも労働者階級がそういう歴史的根底的、人類の解放を実現する階級だと言っている党派はいないです。それは、僕たちが動労千葉の闘いを水路にしてつかみとったことなんです。「労働の奪還」という動労水戸の闘いでつかみとったことは、もう一回マルクスの原点に立ったということです。そういう労働組合運動をわれわれは実現する。

労働者階級に根ざした本物の労働者の党を作り出そう

 最後に、韓国、中国はものすごい情勢ですね。韓国もゼネラルストライキを何本も打つ中で、民主労総の中心の指導部は20人くらいですが獄中に囚われている。その中で、自分たち自身も党を作り始めた。ハンサンギュン委員長も獄中からメッセージを送っている。韓国の中で、労働者階級が自分たち自身の党をつくった時に勝てるのです。自分たち自身の階級的意志、階級的な結集軸、絶対に打倒されることのない党をつくることなしに、労働者階級は勝つことはできない。
 彼らが韓国労働者階級の党を作り始めたことは、われわれはこのままでいいのか。労働者階級の党たらんとしている革共同というのはある。しかし、それがイコール労働者階級の党になっていく過程は、これから自分たち自身の手で労働者階級の党を建設していく過程なんです。今ある党を評価する立場ではない、自分たち自身が自分たちの党を作らないと勝てない。 韓国労働者階級に連帯して、もう一回僕たちは、すべての労働者、正規も非正規も、女性も年寄りも含めて、自分たち自身の党をつくる。冷ややかな目ではなく、動労千葉が中心になった党をつくる。
 動労総連合をつくるということは労働者の党をつくることと同じなのです。本当の労働者階級に立脚した政党をつくるところに来たと思います。これが韓国の戦争情勢、韓国革命情勢、朝鮮に対する戦争情勢に対するわれわれの最も核心的回答だと思っています。

2016年はJRをめぐる決戦

 動労千葉がエルダー制度で20人の退職者が出ることをめぐって2016年の最大の死闘に入っています。動労千葉を最後的にぶっ潰す攻撃として、エルダー制度を使った強制配転、CTSに対する攻撃、青年に対する攻撃は一体だと思う。動労水戸も、来年からエルダー制度との闘いになる。国労とか東労組は、「俺たちは60歳を超えたから静かに生きていく」とか言うんだよね。われわれは60歳になろうが70歳になろうが、労働者階級として労働者として何も曲がったことをしていないし、団結して次のステップを押し渡る。正規労働者が団結して闘うことが派遣労働者、非正規労働者含めて信頼を作りだし、合流する土台だと思います。動労水戸は動労千葉の闘いと本質的に一体です。常磐線の全線開通にむけた攻撃に対して、被曝労働拒否で闘い抜いていきます。
(2月20日動労千葉労働学校での講演の抜粋)