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時代を解く 第13回 EU揺るがす仏ゼネスト闘争

月刊『労働運動』34頁(0316号11/01)(2016/07/01)


時代を解く 第13回
労働法制改悪反対 EU揺るがす仏ゼネスト闘争

(写真 3・17高校生のバリスト)

 労働法制改悪に反対するフランス労働者のゼネストが闘われている。3月から現在までに8次にわたる大規模な統一行動が行われた。3・31には120万人が決起。5月にはフランス全土30万人のストの中で、原発労働者も決起し16の発電所で電力は「減産」、一部では停電となった。この闘いは、昨年11月ISテロ以来の非常事態体制下の弾圧をはねのけながら継続されている。オランド政権が、法案を通すため憲法に違反する強行措置を取ったことが火に油を注いだ。
 高校生・大学生のバリケード行動から始まった闘争は、全労働者の魂をつかみ、CGT(フランス労働総同盟)のストライキ指令という事態に発展した。CGT指導部はフランス経団連の要求に屈服してきた体制内指導部だが、闘争によって、今回の改悪が労働運動・労働組合の存立を揺るがすものであることを突き付けられて動き出した。階級的労働運動を復権させる闘う指導部を作り出すことが問われている。労働者・青年学生の生き生きとした決起はその展望を切り開いている。
 担当大臣の名でエルコムリ法と呼ばれるこの労働法制改悪攻撃は、日本や韓国で今仕掛けられている攻撃と全く同じである。①整理解雇の要件を緩和、「不当解雇」の金銭による解決を資本家に有利に改変、②週35時間労働制を40~46時間に延長、一日の労働時間の制限を12時間に延長、③未成年の見習工の労働時間の延長、④残業手当の削減、⑤こうした改変を労働協約によらず、会社レベルの交渉、就業規則の改変ですべて可能とする。

*労働三権否定、階級的団結解体の攻撃

 フランスの資本家は、労働者を分断し、組合的団結を否定し、雇用や賃金・労働時間・残業規定を会社レベルの就業規則でどうにでもできるようにしようとしている。労働運動が歴史的に勝ち取ってきたものを根底から破壊する攻撃であり、労働三権を否定する「原理的転換」だ。オランド(社会党)政権は、10年前に粉砕された、若者を試用期間中に一方的に解雇できる「初期雇用契約」を、形をかえて持ち出した。これに対して高校生を先頭に若者が怒りの決起を開始したのである。

*階級的労働運動に勝利の展望

 帝国主義ブルジョアジーは、全世界で戦後労働法制改悪の攻撃を仕掛けている。資本主義の延命をかけた「構造改革」の核心がここにある。これなしに「成長戦略」など成り立たないのだ。5月の伊勢志摩サミットでもそのことが確認された。戦後の労使関係・階級関係を転覆し、労働者を総非正規化=総奴隷化することに資本主義の生きる道があると言っているのだ。安倍は、その最先頭に立つことを誓約した。これと戦争・改憲攻撃がまさに表裏一体であることをもっともっと明確にしよう。
 イギリスのEU離脱情勢の下、EU圏のすべての労働者人民に、各国ブルジョアジーの利害抗争でなく自分たちこそが真の歴史の主人公であるという確信を与えるのは、帝国主義ブルジョアジーと真っ向から対決する階級的労働運動の発展である。フランス労働者階級はその先頭に立っている。
 藤村 一行(動労千葉労働学校講師)