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労働組合運動の基礎知識 第21回 改憲攻撃=労働法制改悪

月刊『労働運動』34頁(0316号12/01)(2016/07/01)

労働組合運動の基礎知識 第21回
いまひとつの改憲攻撃ー労働法制改悪

 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)

 国鉄闘争全国運動の6・5集会は安倍政権によって戦後労働法制が根底から解体されようとしていることに全面対決する宣言を発した。
 攻撃の核心は「正社員ゼロ・解雇自由」の社会を生み出すための雇用と労働政策の歴史的転換であり、国鉄分割・民営化攻撃の全社会化である。その攻防の基軸にCTS(千葉鉄道サービス)の就業規則10・1改悪をめぐる闘いがある。
 このコーナーは毎回具体的・実践的課題のポイントをリアルタイムでとらえる形で書いてきた。今回は、『日本の雇用が危ない 安倍政権の「労働規制緩和」批判』 (旬報社 2014 年3月10 日初版第1刷)の紹介を通して「いまひとつの改憲攻撃―労働法制改悪」の全体像をとらえたい。個別具体的課題の掘り下げも重要だが、そこに貫かれている攻撃の核心をとらえることで、それぞれの個別のテーマの連関と闘い方が鮮明に見えてくる。
 本書は2年前に出版されたものだが、古くない。今日の安倍の労働法制攻撃の核心を先見的にとらえている。
 「解雇特区の創設、有期労働契約の規制緩和、ジョブ型正社員の制度化、派遣労働の恒久化...... 『世界で企業が一番活動しやすい国にする』ことをめざす安倍政権が強行する規制緩和は、働く人びとに何をもたらすのか? 『規制改革関連資料』収録」
 「労働法はまさに危機的な状況にある。予定されている規制緩和がそのまま進められると、『格差社会』は一層深刻化し、正社員も非正規労働者も、またその中間に位置づけられる限定正社員も、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)からはほど遠い労働と生活を強いられることになる。......ともかく本書を読んでほしい。そして、『アベノミクス』、『競争力強化』、『経済成長』の名のもとにどのような事態が進行しているのか知ってほしい」(はしがきより)
 帯の裏と表に書かれたコピーであり、本書の内容を的確に表現している。
 「国の労働法制は全国一律でなければならないという原則、労働権保障のために解雇は適切に制限されるべきであるという原則、労働力を必要とする企業は直接雇用すべきであるという原則、8時間労働制の原則」(はしがき)が解体されようとしている。国の一部に規制緩和がなされる国家戦略特区は、労働条件の基準を一律に法律で定めるとする憲法27 条2項に違反する。法の下の平等を定めた14 条にも違反する。一旦否定された「雇用特区」の復活が竹中平蔵らによって目論まれているのだ。
 安倍が進めてきた限定正社員制度は正規の非正規化攻撃であり、「多様で柔軟な働き方」というのは全労働者の非正規化である。「多様な働き方を同一労働同一賃金の原則に則り公正に処遇する」というのは、様々な非正規化の雇用形態を同一価値労働同一賃金で誤魔化そうというのである。本書の3分の1は「規制改革政策の決定過程と関連資料」であり、労働法制の全体像を鳥瞰(ちょうかん)するために不可欠の資料だ。