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時代を解く 第18回トランプの世界、アメリカ没落、世界史転換点

月刊『労働運動』34頁(0321号04/01)(2016/12/01)


時代を解く 第18回
トランプの世界、アメリカ没落、世界史転換点

※「予測」覆したトランプ勝利

 アメリカ大統領選は、大方の予測を覆してトランプが勝利した。トランプはメディアでは泡沫扱い、クリントンの勝利は確実と言われていた。だがファシスト的暴言を繰り返すトランプが共和党候補にのし上がった時点で普通の大統領選の構図は破れ、トランプ対現在のアメリカ支配体制という構図になった。
 三大メディアや大新聞がトランプ阻止で声をからせば、からすだけ、クリントンは支配階級の代表と見なされた。クリントンへの不信感は日本では想像できないほど強かったようだ。白人労働者層と女性票はトランプに大きく食い込まれ、民主党勢力であるはずの既成労働組合もかなり浸透された。
 その土台にあるのは、新自由主義とグローバル化による凄まじい格差化、貧困化である。とくにオバマ時代における経済的現実と社会的亀裂の進行だ。その象徴が五大湖周辺の工業地帯の荒廃、ミシガン州やウィスコンシン州そしてオハイ州におけるクリントンの敗北だった。
 だが、トランプは大企業減税や金持ち減税、それに赤字前提のインフラ投資などでブルジョアジーを助けることを公言している。決して労働者の味方ではない。排外主義で労働者を分断し、もっと格差を拡大する。トランプの勝利は、本質的にイギリス国民投票やヨーロッパのネオナチ勢力台頭と同じ現象だ。

※世界の枠組みが崩れていく

 労働者階級はこの社会を本当に変革する展望、希望が現実の選択肢として示されていない中での選択を強いられている。だが資本主義の末期的破綻に対する真の変革をかけた力勝負がこういうかたちで始まったのだ。
 トランプは、〈偉大なアメリカの再建〉を主張して破滅へ突進していく。トランプの孤立主義とか保護主義というのは、要するにアメリカ第一主義だ。アメリカ帝国主義単独の利害を容赦無く世界に押しつける。世界全体の秩序の維持などはどうでもいいという立場。だからTPPも破棄、アメリカ本位の二国間協定に切り替えるとする。日米関係も見直す。中国・習近平政権は喜んだが、実際にはトランプは80年代のレーガン以上の破局的大軍拡にのりだす。
※ 東アジアは大激動に
 トランプは、イランとの核協定を破棄し、中東の戦乱を拡大しようとしている。プーチンとの関係でも核戦争ギリギリのところまで追い込んでいくだろう。何よりも東アジアが戦争情勢に叩き込まれる。
 またトランプは米軍撤退を進めるのではなく、日本と韓国のために居てやってるのだからもっと金を出せ、いやなら自前で核武装をしろと言っている。実際には、日本を使いながら朝鮮半島と東アジアを全面制圧すること、そのためにはホットな戦争も辞さないということだ。
 こういうかたちで、歴史的にはアメリカの大没落が進む。それがトランプの世界である。
 安倍政権は翻弄(ほんろう)されグラグラだ。だからこそパククネ打倒で立ち上がった韓国労働者人民に連帯する日本の労働者階級の闘いが問われている。日韓米労働者階級の連帯で安倍打倒・東アジア革命勝利に向かって前進しよう。
 藤村 一行(動労千葉労働学校講師)