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労働組合運動の基礎知識 第26回 最低賃金制度について

月刊『労働運動』34頁(0321号05/01)(2016/12/01)

労働組合運動の基礎知識 第26回
最低賃金制度について


 最低賃金制度とは、最低賃金法に基づき国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとする制度だ。
 最低賃金には、地域別最低賃金及び特定最低賃金の2種類がある。なお、地域別最低賃金及び特定最低賃金の両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
 地域別最低賃金は、産業や職種にかかわりなく、都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される。特定最低賃金は、特定地域内の特定の産業の基幹的労働者とその使用者に対して適用される。派遣労働者には、派遣先の最低賃金が適用される。
 最低賃金の対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金だ。実際に支払われる賃金から一部の賃金(割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)を除いたものが対象となる。
 最低賃金額以上となっているかどうかは、賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較する。
 日本において最低賃金は公益代表、労働者代表、使用者代表の各同数の委員で構成される中央最低賃金審議会の議論のうえで、具体的な賃金引き上げ額を各都道府県の労働局に提示する。その額を目安に地域の実情を踏まえた審議・答申を得たのち、異議申し立てに関する手続きを経た上で都道府県労働局長が決定する。
※安倍の「最低賃金1000円」は総非正規化
 安倍は昨年11月24日の経済財政諮問会議で、最低賃金を年3%程度引き上げて将来的に1000円を目指すと表明したが、これは正規の労働者の賃金を時給制にして、正規も非正規も一律1000円にして「同一労働同一賃金」を実現するという意味だ。そのことによって「非正規労働」という言葉をなくすというのである。全労働者が非正規雇用になればそれが「正規」であり、正規・非正規の分断はなくなるというのが安倍の「働き方改革」である。
 最低賃金は毎年改定され、現在の全国平均は時給823円であり、東京が一番高くて932円である。一番低いのは沖縄・宮崎の714円。鳥取・高知・佐賀・大分・鹿児島・熊本が715円である。青森・岩手・秋田が716円、山形が717円であり、1000円の実現には程遠い。
※韓国の最低賃金の現状
 今年の韓国における11月14日の理念交流の柱の一つが最低賃金問題であり、民主労総アルバ労組の20歳代の女性の指導部が提起をしてくれた。アルバ労組はアルバイトユニオンである。韓国では1988年に初めて最低賃金が導入された。日本の制度を取り入れて最低賃金委員会は労使と公益委員の三者構成である。1988年当時、時間当たり最低賃金は487ウォンだった。1993年になって1005ウォン、 時給2000ウォンを超えたのは2001年の後だ。2016年には6030ウォンと最賃法が導入されて以来12・38倍になっているが、元々の賃金が低すぎる。政府の統計でも313万人が最賃以下で働いているという。現在1万ウォンの要求を掲げて全人民的な闘いを実現している。闘い方には学ぶべきことがたくさんあった。
 小泉義秀(東京労働組合交流センター事務局長)